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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界でマイホーム
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フラグ回収乙



少し困ったことになった。

昨日の門での一件で周りのソラを見る目が少し変わったのだ。

巨大化できることを知った一部の人がソラを恐れだしたのだ。

もちろん、ソラが街の人を襲ったことは一度もない。

しかし、キラータイガーというランクCのモンスターを倒せる実力、さらには3メートル近くにまで巨大化できると、ソラには不利な情報が拡散してしまっているのだ。

今はまだ大丈夫だが、いつ「宿屋使用禁止」などと言われてしまうかもしれない。

何か対策を考えないといけない。

まあ、そうならないようにソラのイメージアップもしないといけないのだろうが、なんだかもう手遅れそうな気もする・・・。

そうそう、エルルさんたちへのお礼の食事会は7日後ということで決定した。

タニアさんに話を持ち掛けたところ、話がどんどん大きくなっていった。

『銀狼の寝床』の女将さんであるエレンさんも便宜を図り、また、従業員も僕の看病をしていてくれていたことが判明し、参加してもらうこととなった。

更には僕は一回もあったことがないのだが、調剤ギルドのお偉いさんの一人が僕のために無料で特別調剤をしてくれていたことまで判明した。

そして、タニアさんだけでなく、タニアの酒場の従業員にも迷惑を掛けていたということになり、参加となった。

もちろん、美味しい料理を作ってくれていたタニアさんの旦那のドランさんも参加だ。

この時点で参加者は10名を超えていた。どう考えても食材が足りなかった。

そのため、いくつかの食材の調達を追加することになった。

その時の僕は知らなかったが、いくつか高級食材が紛れ込んでいたらしい。

すると、隣で食事をしていたリブロスとセブンが我慢できなくなった様だ。

自分たちも参加させてほしいと懇願してきた。

必死の懇願に負けた僕は追加食材のいくつかを二人に依頼することで参加を許可した。

その後、紆余曲折があり、参加人数は20人近くにまで膨れ上がっていた。

ギルド長のリカルドさんや領主のモーガン様、さらにはアルベルトなんて全く関係ないのだが、次の日の朝にはなぜか参加となっていた。


タニアさんには前日までに食材を渡してくれと言われた。

すでにオークジェネラルの肉、オクトパスキングの足、デビルフィッシュは渡してある。

タニアさんにオクトパスキングの足を渡した時、エルルさんとは違い拒否感を示さなかった。

話を聞くと夫のドランさんが以前、オクトパスキングの料理を作ってくれたことがあったそうだ。

どうやらこの世界にもタコ料理は存在したようだ。


追加食材に関しては、当初から予定していた南西の沼地のワイルドダックと沼エビと、南の山でいくつかの香草とイモ類、更にはいくつかの果物を頼まれた。

リブロスとセブンは街近辺に出没するモンスターの肉が割り当てられた。

ランクEのモンスターばかりだったので二人だけでも問題ないだろう。





僕とソラは再び南西の沼地に来ていた。

二度目ということもありワイルドダックの捕獲はすぐに終わった。

ソラがスキル探知(極)でワイルドダックを発見すると猛ダッシュ。

一撃でワイルドダックの頸動脈を食い破る。

ワイルドダックを持って帰ってくる頃には血抜きもある程度終わっているという離れ業をやっていた。

問題は沼エビだった。

前回は他の冒険者から貰ったのが今回は自分で探さないといけない。

残念ながら、ソラの探知(極)には引っかからなかったのだ。

エルルさんに「沼の土の中に隠れているらしい」という情報は貰っていたため、掘り起こすスコップと捕まえるための網を準備している。

沼エビを交換した冒険者たちは沼の奥まで行っていた。

そのため、少し奥に入っては沼地を掘ってエビを探し、を繰り返すことになった。

その結果、僕は沼の奥地の方に足を運ぶことになる。そう、エルルさんに注意されていた奥地に・・・。




段々、周囲の雰囲気が変わってきだした。

明らかに禍々しい雰囲気を醸し出してきている。


「ソラ、前にエルルさんに注意されらヒュドラってボスモンスターに遭遇したら嫌だから戻るよ」


僕は盛大にフラグを打ち立てていた。

ソラは「ワン」と吠えると走り出した。

ん?ソラ、方向が逆だよ。

慌てて追いかけると、ソラは何もないところで止まっていた。

沼地に向かって吠えている。

何があるのだろう?と必死で見ていると小さな空気の泡が湧き上がっている。

もしかして・・・。

僕は恐る恐る沼の土の中を掘り起こす。すると中には沼エビが数匹隠れるように埋まっていた。

僕は持ってきた網で慌ててすくう。

網の中には沼エビが5匹ほど入っていた。

僕は沼エビを生きたまま袋にしまうと次のポイントを探す。

いや、探すのはソラがやってくれた。

僕がするのは沼地を掘って、網ですくい、袋に入れる、だ。

なんだか久しぶりにソラより働いている気がする。



30分後、袋の中には50匹近くのエビが入っていた。大量だ。

そして、僕たちの目の前には8つ首の巨大な蛇がとぐろを巻いていた。





もの凄く強そうなモンスターだ。

シュー、シューと声を発しながら、ソラを威嚇している。

8つある頭の内7つがソラの方を警戒している。

そして、まだ生えたてなのか少し小さい頭が一応僕の方を見ていた。

か、鑑定さん。こちらのモンスターはどちら様でしょうか?


--------------------

ヒュドラ


沼地のボス、と称される毒蛇。

高い再生能力と骨をも溶かす猛毒を持つ

ランクBのモンスター


フラグ回収乙

あ、そうそう、わかってると思うけど、ヒュドラは毒があるから食べれないからね。

--------------------


鑑定さんに皮肉られてしまう。

うーん、食べれないのか。戦っても無意味だな。


「ソラ、逃げるよ」


僕が叫ぶとソラはヒュドラに向かってけたたましく吠える。

ソラの咆哮に怯んだのかヒュドラが少し後ずさる。

その隙をついて、ソラは僕を拾うとまっしぐらにヒュドラから遠ざかる。

ヒュドラは遥か後ろの方で怒り狂っているようだが、追ってくる気配はない。

それにしても、ランクBのモンスターを前にして「食べれないから逃げる」って考えるとは、リブロス達に知れたら「非常識」って言われそうだ。

うん、黙っておこう。





沼地の入り口辺りに戻ってくると、以前沼エビと獲っていた3人組の冒険者たちと遭遇した。


「おう、坊主。久しぶりだな。っていうか、そいつ随分大きくなったな。」


全力疾走するために3メートル近くまで巨大化しているソラを見てびっくりしていた。


「ええ、大きくなるスキルがあるんです。」


僕がソラから降りるとソラはいつものサイズに戻る。


「ほお、便利な従魔だな。戦闘に移動にとっても役に立つな。」

「はい、自慢の愛犬です。」

「ははは、愛犬か。それで今日はもワイルドダックの捕獲か?」

「はい、後は沼エビも少しだけ獲ってきました。」


僕がそう言って冒険者に見せると冒険者が首を傾げる。


「なあ、お前。このエビどこで獲った?」


えらく真剣な表情だ。

もしかして、沼エビって獲るのに許可制だったりするのだろうか?

僕は正直に冒険者に獲った場所を教える。


「・・・あのエリアで獲ったのか。それでこんなに大きいのか。あの辺りはヒュドラの縄張りに引っかかるから誰も獲りにいかないエリアなんだ。ヒュドラに遭遇しなくてよかったな。」


そういうことだったのか。

冒険者たちは僕がヒュドラと遭遇したとは思ってないようだ。

確かにランクBのモンスターから僕が逃げられるとは思わないよね。


「・・・いや、実は・・・」


僕はヒュドラに遭遇し、逃げ出し、その時ヒュドラが怒り狂っていたことを伝える。

このまま、奥地に行って、怒り狂うヒュドラに遭遇したら危険だからだ。


「・・・マジか。今日は沼の奥地にはいかない方がいいな。」


彼らはひどく落胆していた。






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