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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
5/67

チート能力は最強だった

ブックマーク登録、評価ありがとうございます。



冒険者登録をした僕はさっそく依頼を受けることにした。


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討伐依頼 ランクF(常設)

ウルフ討伐 1匹

報酬 300ゴールド

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討伐依頼 ランクF(常設)

ホーンラビット 1匹

報酬 100ゴールド

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納品依頼 ランクF(常設)

ヒール草 1本

報酬 150ゴールド

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討伐依頼2つと採取依頼1つだ。

まあ、どれも常設依頼だが。

常設依頼は常時依頼があり依頼を受ける必要がないが、その分、報酬が低く設定されているそうだ。

なぜ依頼を受けたかと言うと、お金がないからだ。

今晩の宿代がなかったのだ。

先ほど換金した代金は登録料ですべて消えてしまった。

もちろん、ギルドの外で売っていいた串肉を買うお金もなく、泣く泣く横を素通りする羽目になってしまった。

ソラは食べれるものと思っていたみたいで、涎を垂らしながら何度も振り返りながら通り過ぎて行った。


「ソラ、ゴメンネ。」





エルルさんによるとヒール草は東の平原にポツポツと生えているそうだ。

もうお昼になっているので、急いで探さないといけない。


「ソラ。近くにモンスターはいる?」


ソラは首を横に振る。

辺りを見渡すが、ヒール草らしきものも生えていない。


これは、ちょっと不味いかもしれない。


そう、思った瞬間、ソラが元気よく走りだした。

すごいスピードだ。

僕が必死に追いかけると、遥か彼方にソラがホーンラビットと戦っているのが見えた。

急がないと。


「ぜーはー、ぜーはー」


僕が着いた時には戦闘は終わっていた。

ホーンラビット7匹の死体が一列に並べられていた。

ソラは「褒めて褒めて」とばかりに僕にすり寄ってくる。


「凄いや。ソラは」


僕がそういってソラの頭を撫でると、ソラは嬉しそうに尻尾を360度回転させて喜んでいた。


「さて、解体か」


ホーンラビットは全身すべて素材という駆け出し冒険者にとって宝箱のようなモンスターだ。

魔石以外にも肉は食用、毛皮は洋服の材料として買い取ってもらえる。

たぶん1匹で1000ゴールドぐらいにはなるはずだ。



「つ、疲れた。」


まだ慣れていないため、解体には思った以上に時間が掛かった。

チート能力を貰ったソラだが、解体に関しての能力は持っていない。

当然、解体は僕一人でしないといけない。

僕が解体している間、ソラは木陰でぐっすり眠っていた。


「ソラ、そろそろ次に行こうか。」


ソラは欠伸をしながら僕の元に駆け寄ってきた。

その表情は「やっと終わったの」と言っているようだ。

ソラがまた次の獲物を探す。

探知(極)、とっても便利なスキルだ。

しばらくして、ソラがまたモンスターを見つけたようだ。

だけど、ちょっと様子が変だ。


「どうしたの?」


必死に何かを訴えている。


「見つけたモンスターが強そうなの?」


ソラは首を縦に振る。

どうしたんだろう、と思っていると、向こうに土埃が舞っているのが見えた。

よく見ると馬車が猛スピードで街に向かって走っている。

あれ、進路をこちらに変えたのかな?

こちらにむかって走ってくる。

周りには護衛と思われる騎士が数名いる。

この辺は何もない平原で舗装されている道もない。

そこを猛スピードの馬車がやってきている。

何かあったのだろうか?

馬車は猛スピードのまま僕の横を通り過ぎて行った。

すれ違いざま、護衛の騎士と思われる一人が何か言っていた気がする。

訳も分からず立ち尽くしていると、馬車が来た方角から大型のモンスターが1匹走って来た。

大きなトラのモンスターだ。


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キラータイガー


地獄の殺し屋と呼ばれるモンスター。

高い俊敏力と攻撃力を持つ。

ランクCのモンスター

リーン君、ピーンチ

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鑑定さんは相変わらずだ。

ん?ランクCのモンスター!?

どういうこと?


どうやら、馬車の一行はこのモンスターから逃げてきたのだろう。

ということは、僕はあの馬車の一行にこのモンスターを擦り付けられたんじゃないか?



ソラが僕とキラータイガーの間に入り、威嚇している。

キラータイガーの大きさは3メートルを超えている気がする。

おそらく重さも500キロは超えている気がする。

一方、ソラは全長70センチぐらいで体重も9キロぐらいだ。

普通に考えたら、勝負にならない。

でも、ソラは余裕綽々でキラータイガーの前に立っている。

その姿がキラータイガーを怒らせたようだ。

キラータイガーは凄まじい咆哮を発した。

僕は見事に吹き飛ばされてしまう。

体の芯から震えがきている。

どうやら完全に呑まれてしまったようだ。

ソラは吹き飛ばされてはいないが、全く身動きをしていない。

恐怖で動けなくなっていると、()()()()()()()は思ったのだろう。

警戒を解いたキラータイガーがこちらに近づこうとした瞬間、ソラは飛びかかったようだ。

僕には全く見えなかったが、おそらく腹部にタックルをかましたのだろう。

キラータイガーは10メートル近く吹っ飛ぶとピクリとも動かなくなった。




えー。もしかして、一撃!?

どんだけチートなんだ?


ソラは「褒めて褒めて」僕の所にすり寄ってくる。

僕はソラの頭を思いっきり撫でると、嬉しそうに尻尾を振っている。

帰ったらご馳走を食べさせてあげないと。





現在、僕には二つ困ったことがあった。

一つはソラが倒したキラータイガーがあまりに大きくて、持って帰るのが不可能そうなことだ。

たしか、地球ではシベリアトラが毛皮のために絶滅寸前だったはずだ。おそらく売ればかなりの金額になるはずだ。

もう一つがキラータイガーの咆哮により、僕の腰が抜けて動けないということだ。

だんだん日が落ちてきている。

このままではここに野宿とかなりそうだ。

お腹も空いたよー。





だいぶ時間が経った。

僕の腰はまだよくならない。

僕は地べたに座ったままだ。

ソラは気持ちよさそうに僕の膝の上に頭を乗せて眠っている。


「おい、この辺だぞ。注意しろ。」


街の方から声が聞こえた。

誰かがこちらに近づいてきているようだ。


「相手はキラータイガーだ。周囲に気を配って気を抜くな!」

「馬鹿貴族の話によると少年を一人巻き込んだようだ。何か遺品がないか注意しろ」


どうやら、討伐隊のようだ。

先頭の人物には見覚えがある。

筋骨隆々で大剣を背負ったマッチョ剣士。

まちがいない、ギルドマスターのリカルドさんだ。


「リカルドさん」


僕が声を掛けると、リカルドさんは慌てて駆け寄ってきた。


「お前はさっきの坊主か。あまり騒ぐな。この近くに危険なモンスターがいるんだ。」


リカルドさんは小声で僕に語り掛けてきた。


「あの、そのモンスターってキラータイガーのことですよね。」

「ん?お前見たのか。よく無事だったな。で、どっちの方に行った?」

「あの・・・。あそこです。」


僕がキラータイガーの死体を指さすとリカルドさんの目が点になる。

完全に逝っているな。

リカルドさん、帰ってきてください。




「どうやって倒したんだ。」

我に返ったリカルドさんが僕に聞いてきた。

僕は寝ているソラを指さす。

ソラは欠伸をしながら頭を上げると、「呼んだ?」と僕の方を見る。

僕が頭を撫でるとまた気持ちよさそうに眠ってしまう。


「そいつがやったのか。見た感じランクAぐらいの実力はあると思ってはいたが、この体格差であれに勝ったのか。」


リカルドさんはキラータイガーとソラを交互に見ながら呟いた。

その表情は驚きというより、恐怖と言ったほうがよいかもしれない。


「マスター、どうするんですか。」


一緒にやってきた冒険者の一人がリカルドさんに指示を仰ぐ。

どうやら、キラータイガー討伐のために急遽編成されたチームだった。


「そうだな。悪いがキラータイガーはこの坊主とその従魔が倒しちまったみたいだからギルドに戻るぞ。」

「えっ!マジっすか。それじゃあ、報奨金はどうなるんですか?」

「あー。出る訳ねえだろ。戦ってもないのに。」

「そりゃないっすよ。ほんとなら酒場で一杯やってる時間っすよ。」


冒険者から次々に文句が出る。

彼らからすると、このまま帰ったら無償労働になってしまうのだ。


「なら、そこの坊主と交渉しろ。俺はこれ以上は知らん」


リカルドさんはそういって、押し黙った。






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