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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界でマイホーム
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釣りとは忍耐力を鍛えるための修行だったのだろうか?



ソラが僕の顔をペロペロ舐めてくる。

うーん、どうしたんだろう?

・・・眠い。

今度は頬をペチペチ叩いてくる。

ちょっと痛い。

僕は頬を叩いてくるソラの手を払いのける。

今度は突然、腹部に強い衝撃が走り・・・、僕は目を覚ました。

お腹の方を見ると、ソラが尻尾を振りながら僕の方を向いて座っている。


「ソラ、何でこんないたずらするの?とりあえず、降りて」


僕が怒ったため、ソラは驚いた表情で慌てて僕の上から降りる。

「がんばったのに何で怒るの?」といった表情で僕を見つめてくる。


「リーン。ソラは俺のお願いでお前を起こしただけだぞ」


突然、横から声が聞こえて振り向くと、そこにはリブロスが腕を組んだ状態で立っていた。

・・・・・・あっ!

僕は眠気眼を擦りながら、現在の状況を理解した。


夜光虫が光るのは夜中の1時から3時の間だけらしい。

そのため、僕らは仮眠を取ることにしたのだ。

ジャイアントレッドフロッグとの戦闘後、リブロスとセブンは休憩を取っていたため、僕とソラが深夜まで仮眠をし、採取後、リブロスとセブンが仮眠を取る、ということになったのだった。

そしてリブロスがここに来ているということは起きる時間が来たということだ。


「ソラ、起こしてくれたのに怒ってごめんね」


僕が謝ると、「ソラを気にしないで」といった感じですり寄ってくる。


「おい、リーン。そろそろ時間だ。すぐに準備をしろよ」


リブロスはそういうとテントを出て行った。





「お待たせ。」


準備を終えた僕はテントを出て、リブロスとセブンと合流する。

空を見上げると星々が煌めいていた。

そして、ひと際大きく光り輝いていたのがこの世界の月だった。

元の世界より二回りほどの大きさだ。

その月が強く光り輝いているのだ。

お陰で周囲は薄暗いものの活動できない、というほどではなかった。

僕は魔法鞄(マジックバック)から魔法のランプを取り出すと火を灯した。

この魔法道具(マジックアイテム)は周囲10メートルを照らしてくれる便利なアイテムだ。


「それじゃあ、探そうか。」


僕はそういうと夜光虫を探し始めるのだが、二人は呆れ顔で僕を見たまま動こうとしなかった。


「二人とも、どうしたの?」

「・・・リーン。お前、どうやって探すつもりだ?」

「どうって、光っている虫を探すん・・・」


そこで僕は致命的なミスに気がついた。

この魔法のランプは周囲10メートルを問答無用で明るくするのだ。

ランプから光が出ているのではなく、周囲を強制的に明るくするのだ。

試したことはないが、おそらく近くに密室があったとしても、その中も光で満たされているだろう。

つまり、このランプを灯していると、夜光虫を探すのは不可能なのだ。

僕は慌ててランプの灯を消す。

今まで明るかった周囲が一瞬のうちの薄暗くなる。


「二人ともゴメン。それじゃあ、探そうか」


こうして、僕たちの夜光虫探しが始まったのだった。





結論から言うと、夜光虫はすぐに見つかった。

探し始めて数分後、一斉に光りだしたからだ。

ハッキリ言って、感動する光景だった。

湖面が金色に光輝いたのだ。

すごい数の夜光虫が湖面の上を飛んでいた。

陸上にも少しはいるのだが、ほとんどは湖面の上を飛んでいた。

月明かりが差し込むその湖面は一面黄金になっており、さながら黄金の草原とかしていた。

僕はその景色に感動し、涙する流していた。

どうやら、リブロスとセブンも同じようで二人とも身動き一つせず、この光景を漠然と見ていた。


前世で、祖父といっしょに蛍鑑賞というツアーに参加した記憶がある。

祖父のたっての希望で同伴していったのだが、駐車場から真っ暗な道を列をなして歩き、湖まで言った記憶がある。

ホタルの群れが湖面や周囲の草むらに大量にいて感動してもていると、祖父が「こんなものか」と寂しそうにポツリと言っていた。

後で話を聞くと、昔はこの湖一面を覆いつくすような数のホタルが飛んでいたのだそうだ。

ところが、乱獲と周囲の開発によりホタルの数が激減したらしかった。

その後、地域住民の懸命な努力により数が回復してきて、今に至るとのことだった。

もしかしたら、祖父はこのような昔、見たのかもしれない。

それなら、祖父のあの一言も頷ける。


僕は夜光虫を鑑定する。


--------------------

夜光虫


深夜にお尻の部分を光らせる虫。

いろいろな薬の素材として使われる。

生け捕り推奨。

そーだね。地球のホタルに近い虫だね。

--------------------


「で、リブロス。どうやって捕まえるの?」

「ああ、エルルさんに専用の保管用の瓶を預かってるから、それに2匹ずつ入れてくれってさ。」


リブロスはそういうと、5つの瓶を取りだし、僕とセブンに1つずつ渡す。

ん?虫取り網みたいのはないのかな?

そんなことを考えていると、セブンがスーッと移動し、夜光虫を手掴みで捕まえようとした。

夜光虫はあのセブンの動きをヒラリと躱すと悠々と飛び回っていた

・・・ないんだ、虫取り網。

これは大変だ。





僕たちと夜光虫の戦いはタイムリミットいっぱいの3時近くまで続いた。

そして、ついに僕たちは勝利した。

最後の1匹をセブンが捕まえると、僕たちは疲れのあまり座り込んでいた。

戦果はリブロス2匹、僕3匹、そしてセブンが5匹だった。

流石のソラも夜光虫の捕獲は無理だったため、周囲の警戒をしていてもらった。


「終わった。これで休める。」

「ああ、ほんと疲れた」

「リーン、後はよろしく。」


そういうと、二人はテントに入っていく。

そうだった。これから朝までの見張りは僕とソラだった。

僕はソラを呼ぶと焚火の近くに座る。


「ソラ、モンスターが近づいてきたら教えてね。」


「ソラは「わん」と鳴くと僕の膝の上に座り込んだ。

こうして、本日最も苦しい時間が始まった。



ハッキリ言って暇だった。

何もすることがない。

始めの内は初めての見張りということもあり、興奮していたのだが、1時間も経つ頃には飽きていた。

風景は全く変わらず、草が風でサラサラと動いているだけだ。

湖の方はそれすらもなく、不気味に湖面が月の光を反射しているだけだった。

先ほどは幻想的とまでに思えた湖面の風景も今は単なる不気味な風景に成り下がっていた。


僕は湖面に近づいて水中の生き物を探そうとしていた。

今日の予定は朝食を食べた後、デビルフィッシュを捕獲してテムジンに帰る予定だ。

その前に湖の生物が見えないか探すことにしたのだった。

この時、僕は自分のこの行動が大惨事を巻き起こすとは夢にも思っていなかった。

湖は静かで、モンスターがいるとは思えないほど静まり返っていた。

デビルフィッシュ、それは魚なのだろうか?それともタコなのだろうか?

そんなことを考えながら湖の底を覗いていた。


「うーん。何も見えないな」


月明かりがあるとはいえ、薄暗い真夜中である。

当然、湖を覗き込んでも何も見えなかった。

そうだ。釣り竿があれば、何か魚を釣ることが出来るだろうか?

そう考えた僕は、釣り竿造りを始めた。

僕の魔法鞄(マジックバック)は容量があるため、結構がらくたが入っている。

その中から、使えそうなものを取り出し簡易の釣り竿を作ってみた。

前世で僕は決して釣り大好き少年だったわけではない。

なのにわざわざ釣り竿まで作った理由は一つだ。


暇だからだ。


「あとは餌か」


周囲を見渡すと、夜光虫が見える。

もちろん、光っているわけではない。

ただ単に草の裏側に潜んでいるのが見えるだけだ。

先ほどは飛び回っていたため、捕まえるのは大変だったが、今は休んでいるのだろうか、全く動かない。

僕は一匹を捕まえると簡易釣り竿に取り付け、湖に放った。


「ソラ、何か釣れるかな?」


僕はソラを横に呼び寄せると釣りを楽しんだ。

周囲の警戒はもちろん引き続きソラにしてもらっている。

ソラのスキル、探知(極)なら見落とすことはきっとないはずだ。



暇だ。

とっても暇だ。

釣りとは忍耐力を鍛えるための修行だったのだろうか?

1時間ほどたったが、釣り竿に反応は全くなかった。

これが釣り竿のせいなのか、僕の腕のせいか、はたまた場所のせいなのかは分からない。

今ハッキリしていることは、全く釣りなかったという事実だけである。

僕が諦めて釣り竿をしまおうとした時に異変が起こった。水面が波打ったのだ。

ソラがいきなり警戒態勢をとると唸りだした。

水面の下に何か得体のしれない物いるのが見てとれる。


「ソラ、急にどうしたの?もしかしてモンスター」


僕の質問にソラは何も答えず、警戒態勢を解こうとしない。

ソラのこのような行動は初めてだ。

これは、危険なモンスターで間違いないだろう。


「ソラ、僕はリブロスとセブンを起こしてくるから、ここをよろしく。」


僕はそういうとテントの方に走っていく。すぐにでも二人を起こさないと。


「リブロス、セブン、すぐに起きて。」


僕が叫ぶと二人はすぐに起きた。

僕と違ってぐずったりもしなかった。


「どうしたんだ?もう時間か?」

「いや、湖の中から何か来ているんだ。ソラがすごく警戒態勢をとっているんだ」


僕の言葉に二人の顔色が変わる。

主人が白いエレメントフロッグと戦っている時にすら警戒態勢をとらなかったソラが現在、警戒態勢をとっている。

それはすなわち、白いエレメントフロッグとは比べ物にならないほどの脅威が迫っている可能性があるからだ。

その時、湖の方から轟音が鳴り響いた。






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