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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界でマイホーム
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カエル退治は二人の修行だったはずだが?



大失態だった。リブロスが依頼を受けてきたのでエルルさんに確認をしていなかった。

いつもなら依頼を受けた時に周辺の情報はきちんと聞いておくのだが、今回は怠ってしまった。

僕が真っ青になっているとセブンが肩を叩いてくる。


「リーン、大丈夫。私が全部聞いてきた。この平原にいるモンスターはエレメントフロッグ以外に3種類で、デザートイーグル、ビックリマウス、土トカゲ。」

「流石だねセブン。」


褒められて嬉しかったのか、セブンの頬が少し赤くなる。

リブロスは聞きたくない情報を聞かされるため、ちょっとムッとしている。

もちろん、セブンはそんなのお構いなしにどんどん話を進める。


「ビックリマウスと土トカゲは小型のモンスターでランクはF。エレメントフロッグに捕食される立場らしい。気をつけないといけないのはデザートイーグル。大型のワシのモンスターでこの平原の生態系の頂点に立つそう。ランクDのモンスターで上空から一気に降下してきて攻撃してくる。」

「湖にデビルフィッシュってモンスターがいるんじゃなかったけ?」

「湖のモンスターは別らしい。今回の依頼には関係ないからって、エルルさんは教えてくれなかった。ただ、手を出すなって言われた。」

「手を出すな?」

「うん。手を出さない限り、向こうから攻撃してくることはないらしい」


何やら意味深な情報だった。

・・・でも、これってデビルフィッシュを捕獲しようとしていいのかな?





昼飯を食べ終えた僕たちは、エレメントフロッグを狩りつつ、ジャイアントレッドフロッグを探し始めた。

とは言っても、ジャイアントレッドフロッグの居場所はすぐに判明した。

ソラのスキル「探知(極)」のおかげだ。

ソラに大きなカエルを探してもらったら、一発だった。

もちろん、リブロスとセブンには非常識と批難されたのは言うまでもない。


ジャイアントレッドフロッグは平原の奥地にいるようだったので、エレメントフロッグを討伐しつつ、奥地に向かうことになった。

はっきり言って、エレメントフロッグはソラの敵ではなかった。

なにしろ出会って数秒で倒したのだ。

近づくと1メートル近いカエルは不気味だった。

世の中にはカエルなどを大好きな人種もいるが、僕は嫌いだ。

ヌメヌメした表皮、ニョロニョロと動く細長い舌、どれもが生理的に受け付けなかった。

僕が「ウワッ」と声を上げた瞬間、ソラが飛びかかり、巨大化して大きくなった前足で一撃を加えたのだ。

たった一撃だった。

ソラが「褒めてー」と擦り寄ってきて、僕がソラの頭を撫でるいつもの光景をリブロスとセブンは呆然と眺めていた。





「おい、リーン。危なくならない限り、ソラの戦闘は禁止な!」


我に返ったリブロスが強い口調で言ってきた。

隣でセブンもコクリと頷く。

自分が批難されていることを感じたソラは不思議そうにこちらを見つめている。


「なんで?ソラなら大丈夫そうだよ。」

「お前な。ここに来た理由の一つは俺たちの経験を積むためでもあるんだぞ。ソラがエレメントフロッグを瞬殺して回ったら意味ないだろ。」


そうだった。すっかり忘れてた。

二人は修行のためにこの平原に来たのだった。

しばらくすると、青いカエル1匹と遭遇した。

ブルーフロッグだ。

1匹ということもあり、リブロスが一人で戦うと言い張った。

セブンも一緒に戦うと言ったがリブロスは意見を曲げず、結局セブンが折れて少しでも危ないと感じたら手助けする、と言うことで落ち着いた。

セブンはため息交じりで了承していたので、このようなことが以前にもあったのだろう。大変そうだな。


リブロスはいつも通り正面から突っ込んでいった。

ブルーフロッグは真横にピョーンと飛ぶと、舌を伸ばして攻撃してくる。

なるほど、エルルさんの言う通りだ。

ウルフなどは直線的な動きだったので予想しやすかったが、今の横跳びなどは知っていないと予測できないかもしれない。

その後も、ブルーフロッグのトリッキーな動きに翻弄されるリブロスではあったが、何とか一人で倒すことができた。

擦り傷などはあるが、大きな怪我は負っていない。大勝利だ。

所詮ランクEのモンスターといったところなのだろう。





「次は私がする」


リブロスの戦いをつぶさに見ていたセブンが宣言した。

表情を見る限り、自信満々だ。

先ほどリブロスが一人で戦うといった時は反対していたが、何でだ?

リブロスも特に反対する様子はない。


「大丈夫なの?」

「問題ない。今ので相手の動きはある程度把握できた」


どうやらエレメントフロッグの動きを覚えたようだ。

すごいな。僕はまだまだ無理だ。


しばらくすると、3匹のエレメントフロッグの群れと遭遇したが、宣言通り、セブンは一人で倒してのけた。

レッド2匹とグリーン1匹の群れだったがセブンの敵ではなかった。


セブンの戦い方はまるで暗殺者だった。

ターゲットを視認すると「言ってくる」と一言いうと、フラッと姿を消してエレメントフロッグに近づいていった。

文字通り姿が消えているわけではなく、気配を消して、相手の死角に回り込み近づいていくだけなのだが、この遮蔽物が何もない平原でなぜそのようなことが出来るのかは不明だ。

一匹目のカエルの背後に辿り着くと、相手の死角から喉元にダガーを一気に突き刺し、一撃で倒した。

そして、一匹目が力尽き倒れる前に隣のカエルの背後をとって、一撃を加える。

瞬く間に2匹を瞬殺したのだ。

そして、最後の一匹とタイマン勝負になったのだが、先ほどのリブロスの戦いを見ていたセブンにとって、エレメントフロッグとのタイマンは物の数ではなかった。

僕のイメージで言えば「ドワーフはパワーはあるが、素早さは低い」といった感じだが、セブンはかなりの素早さだ。そして、それと同時に気配を消す能力もずば抜けていた。


「次はリーンの番」


満足げに戻ってきたセブンは当然のようにそう宣言した。





「えっ!?僕はいいよ。」

「何言ってるんだ。お前もこれ位のモンスターなら一人で戦えるようになった方がいいって。」


セブンだけでなくリブロスも僕に一人で戦えと言う。

確かに少しは僕も戦闘経験を積んでいたほうがいいのだろう。

でもランクFのウルフに苦戦する僕にランクEのエレメントフロッグの相手が務まるのだろうか?

無謀と挑戦はちがう。

僕は反対意見をいくつか述べてみたが、二人の意見を変えるには至らなかった。


「はあ、わかったよ。次にエレメントフロッグと遭遇したら1匹だけ戦ってみるよ。」


僕はため息を付きながらそう答えた。


しばらくすると、白いエレメントフロッグと茶色のエレメントフロッグ2匹の合計3匹に遭遇した。


「今度は白色と、茶色か。・・・ソラ、悪いけど2匹お願いね。僕は残った1匹と戦ってみるよ。危なくなったら助けてね。」


僕がそういうと、ソラは「わん」と一声するとブラウンフロッグを瞬殺する。

そのため、残った白いエレメントフロッグが僕の獲物となった。

僕は黒牙を抜くと恐る恐る白いエレメントフロッグとの距離を縮めていく。


「あっ、そうだ。黒牙、とりあえずスキルはなしで戦ってみるから使わないでね。ただ、僕が危ないと思ったら迷わず使ってね。」


僕の問いかけに黒牙は「わかった」とばかりに刀身を小さく一度震わせた。

たぶん、後一歩前に出たらエレメントフロッグの間合いに入るはずである。

ただ、僕の間合いはまだまだ先だ。

したがって、僕が勝つためにはここから一気に間合いを詰めるか、相手の攻撃を捌きつつ間合いを詰めていくしかない。

・・・どっちも無理じゃない?

中々決心がつかないでいると、相手から攻めてきた。


「えっ。ここって間合いの外じゃないの?」


どうやら僕が思っているよりも相手の間合いは長かったようだ。

間一髪だが、僕は相手の攻撃を回避する。相手の舌が僕の後ろの地面を貫く。

ここはもしかしたら、攻撃のチャンスなのかもしれないが、僕も相手の攻撃をかわした時に大きく仰け反ってしまったため、尻もちをついている。

僕が起き上がった時にはカエルも舌を地面から抜き終わっていた。

ちらりとセブンたちの方を見ると二人は僕たちの白熱(?)した戦いを見入っていた。

とつぜん、目の前が白いもので覆われた。

僕が目を離した隙にエレメントフロッグが体当たりをかましてきたのだ。


(あっ、これは避けれない)


そう思った瞬間、僕の意思を無視して黒牙が勝手に動いた。それと同時に刀身が光り輝く。

黒牙のスキル、自動防御とソラのスキル、ご主人様の剣のコンボが発動したのだった。

結果として、僕はエレメントフロッグの体当たりを刀身で受け止めて、そのまま真っ二つにしていたのだった。






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