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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
31/67

地下通路を抜けた先には



僕たち5人は地下通路に降りてきていた。

今回はソラの散歩(ストレス発散)が目的であったため、役割は僕が決めさせてもらった。

ソラが遊撃をして無双する。

討ち漏らしたモンスターをリブロスとセブンが対処する。

フローラさんが弓、ソフィアさんが魔法で援護ということになった。

セブンが罠発見・解除のスキルを持っているらしいので斥候はセブンということになった。

後、必要ならフローラさんがマッピングをするということになった。

えっ?僕の役割。

もちろん、ソラを褒めてやることだ。

・・・・・・今回の報酬があまりにも少なかったため、僕はなるべく戦闘に参加しないことを条件で報酬をゼロにした。

僕の報酬はレアモンスターの素材をゲットした際に一部だけ貰うことになった。

僕はお金には困っていないので、これで全く問題なかった。

リブロスとセブンが困惑していたが、今回は僕のわがままで出来た依頼なのでと言って、無理やり納得させた。






地下通路はジメジメとしていて真っ暗だった。

そのため、以前、モーガン様からもらった魔法のランプが大活躍をした。

魔法のランプは使用すると周囲を10メートルほどを問答無用で明るくする機能がある。

壁の向こうであろうと、箱の中であろうと関係なくだ。

そのため、知能がある相手ならこちらの場所がばれるので問題もあるが、今回のようなモンスター討伐にはとても便利な魔法の道具(マジックアイテム)だ。




「前方に敵が2匹・・・」


ソフィアさんは狩人のため、敵探索スキルを持っていたのだが、もちろんソラのスキル『探知(極)』にかなう訳もなく、発見した時にはソラが攻撃に行った後であることがほとんどだった。

またしても、軍配はソラに上がったようだ。蝙蝠の死骸を2つ咥えたソラが機嫌よさそうに戻ってくるのが見える。


「また負けた。・・・どうして、こんなに差があるの?」


ソフィアさんはとても悔しそうだ。

ソラのスキルと加護を考えると、勝てないのは当たり前なのだが、ソラのスキルを他人に知られるのは不味そうなので言うことはできない。

なぜか、ソフィアさんはソラではなく僕を睨んでくるので、僕は苦笑いをして誤魔化すしかなかった。


地下通路には、コウモリとネズミのモンスターがほとんどだった。

ケイブバッドとケイブマウスというモンスターでランクEに分類されるそうだ。

アンデッド系のモンスターのレイスが出てきたときはパニックになった。

何しろ、ソラの攻撃もリブロスの攻撃も通じないのだ。

なんでも実体のないモンスターのため、物理攻撃が無効なのだそうだ。

ただ、レイスが僕に近づいてくると、ホーリーカウの鎧が光りだした。

光がレイスをたじろがせた隙に僕が刀を振るうと、レイスは音も無く四散した。


「リーン君。お姉さんに教えてほしいんだけど、今の聖魔法、リーン君がやったの?」

「聖魔法?」

「レイスを実体化させた魔法のことよ」

「・・・!?ああ、たぶん鎧の能力です。この鎧ホーリーカウの皮で出来ていて、聖属性付与の能力がついているんです。」

「・・・いい鎧だとは思っていたけど、そんな高価な鎧だったのね。」

「ええ、掘り出し物があって、ちょうどキラータイガーで懐があったかかったんで・・・」

「すっごいわね。リーン君って運がいいのね。普通、お金があっても優秀な武器や防具ってなかなか手に入らないのよ。」

「そうなんですか。」


こうして危なげなく地下通路探索は順調に進んでいくのだった。





僕たちの目の前には薄汚い梯子がある。

梯子は5メートルほど上に向かって伸びており、そこからは光が漏れている。

どうやら地下通路の終着点に着いたようだ。


「えっと、ここで終わりみたいですね。」

「そうだな。結局強い敵はいなかったな。」

「・・・・・・」

「お姉さんも楽だったわ」

「お疲れ様です。後はここ出て、出口の場所を確認したら依頼完了です。」



道中は一本道でそれほどの距離はなかったのだが、モンスターのほぼすべてをソラが仕留めており、何度も往復していたため、ソラは十分満足しているようだった。


僕はソラを担ぐと梯子に手を掛ける。

犬なので当然、梯子は登れない。

・・・今度、ソラ用のリュックか何かを作っておこう。

ソラは慣れたもので安心して僕に担がれている。

僕は必死の思いで上まで上がるとあたりを見渡す。

どうやら近くの森の小屋の横にある井戸につながっていたようだ。


「ここ、どこだろう?」

「うーん、お姉さんには分からないわね。フローラさんならわかるんじゃない?」


全員がフローラさんに注目する。

フローラさんは少し緊張した面持ちで周囲を見渡す。


「そうですね。この森は見たことがないですね。プッサンの周辺には森は二つしかありません。一つが西にあるテムジンとの間にある森で、もう一つが街の北にある領主専用の小さな森です。ここはおそらく北の森でしょう。」

「領主専用の森?」

「はい、領主の一族の訓練用のためと言われていたんですけど・・・、おそらくこのためだったんでしょうね。」


フローラさんはそういうと、出てきた地下通路への入り口を見る。

僕たちは確認のため、地上を通って街に帰ることにした。





森を抜けるとすぐに大きな街道にでた。

プッサンから北の王都に向かうが街道に間違いなく、先ほどの森が北の森であることが判明した。


「これで街に戻って、バラックさんに報告したら依頼完了ですね。」

「そうですね。街に戻りましょうか」


街への途に就こうとした時、突然、ソラが「ワン」と一声吠えると駆けだした。

僕が慌てて追いかける。

それを追って他の4人が追いかけてくる。


「ソラ、どうしたの?ちょっと待って。」


僕が必死に呼びかけるが、ソラは止まる気配がない。

真っすぐに北に向かって走っていく。

北で何かを察知したのだろう。


「リ、リーン。ソラは一体どうしたんだ?」


息を切らしながらリブロスが僕に聞いてくる。

他の3人も息も絶え絶えだ。

かく言う僕も体力の限界だった。


「はあー、はあー。たぶん、何かスキルで発見したんだと思う。」

「ス、スキルってそんなに遠くまでわかるのか?」

「結構、広範囲が分かると思うよ。前に森で迷子になった時は40分以上離れた場所を探知してたよ。」

「ま、まじか」


全員の顔色が一気に曇る。

このスピードで40分は確かに無理だ。


「僕一人で追いかけるよ。」

「馬鹿言うな。俺たちは仲間だろ。一緒に行ってやるよ。」


リブロスはそう言うと、再び走り始めた。




10分後、前方に馬車を発見した。

馬はおらず、周囲には戦いの痕が見える。

馬車の周りには剣を抜いた騎士が5名ほど何かと戦っている。

全員傷だらけだ。

戦っている相手は・・・ソラ!?

周りに大型のモンスターの死骸がいくつも転がっているが、現在戦っているのは間違いなくソラだ。

・・・戦っているというよりは騎士たちが懸命にソラを威嚇しているが、ソラはそれを無視して座って僕たちを待っているといった感じだろうか。


「ソラ」


僕が慌てて大声を上げると、ソラは僕の僕の方に駆けてきて体を摺り寄せてくる。

どうやら、ソラはこの馬車の一団を助けたので褒めて、と言っているようだ。


「ソラ、助けたのは偉いけど、一人で勝手に行ったらダメだよ。」


ひとしきり頭を撫でた後、そう説教をすると、ソラは頭を下げて、申し訳なさそうな表情になる。

どうやら判ってくれたようだ。



「おい、お前たちは一体何者だ?それに、その・・・犬は、君の従魔か?」


馬車を守っていた騎士の一人が警戒しながら僕たちに話しかけてきた。

完全に警戒をしている。

剣は抜いたままだ。

いつでも僕を切り伏せることができるだろう。

これは、不味くないか?




「私たちはプッサンとテムジンの冒険者です。この犬はそこの冒険者、リーンの従魔です。」


慌てて僕たちと騎士の間に割って入ったフローラさんがそう説明する。


「リーン!?もしかして、お前が報告に会った冒険者か。な、なるほど、凄まじい従魔だ」


騎士が怯えたような目でソラを見ながら呟く。

それにしても、報告に会ったとは何のことだろう。


「あの、どういう・・・」

「う、うう・・・」


僕がどういうことか聞こうとした時、騎士がうめき声を上げて、跪いた。

よく見ると、鎧の下から血が流れ出ている。


「ソフィアさん。回復魔法を」


僕が頼むまでもなく、ソフィアさんは駆けつけると回復魔法を掛けていた。


「動かないでねー。すぐに傷は塞がるわよー。」


相変わらずソフィアさんのしゃべり方は緊張感がない。

傷はすぐに塞がり、血が止まる。

その後、ソフィアさんはテキパキと他の騎士の治療を開始する。

他の騎士の傷はそれほど大きなものではなく、数分後、ソフィアさんは汗をかくこともなく治療を終えた。


「終わりましたよー」

「あ、ありがとうございます」


騎士たちは全員、敬礼をする。

ソフィアさんは頭をポリポリ掻きながら困ったような顔をする。

騎士のリーダーと思われる人が、馬車の中に人と何か話している。

誰だろう、と思っていると、リブロスが震えた声で呟いた。


「あ、あの馬車についている紋章・・・、王家の紋章じゃないか?」






ついに、ストックがなくなりました。次話は2~3日後の予定です。

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