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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
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起きたら英雄になっていた



目が覚めると見知らぬ天井が見えた。

ここはどこだろう?

僕は知らない部屋のベッドで寝かされていた。

僕は記憶の糸を手繰り寄せていく。

確か、オークの軍団と戦って、・・・オークキングに驚いて・・・、オークジェネラルに襲われて・・・、倒したけどそこで、気を失った!?

戦いはどうなったのだろう?

僕が生きているということは最終的には勝ったのだろうが、あれからどうなったのだろうか。

僕は起き上がろうとしたが、体が動かなかった。

体が重い。





「ソラ。僕の上から降りて」


僕のお腹の上で丸まって寝ていたソラが欠伸をしながら降りると、僕の顔の横まで来て、僕の顔を舐める。


「ソラ、くすぐったいよ。どうしたの。やめてよ。」


僕がお願いすると舐めるのは止めたが、心配そうに僕の顔を覗きこんでベッドから降りようとしない。

どうしたんだろう。

いつもなら、そそくさとベッドから降りて、部屋の隅で丸まって寝るのに。

今日はいつにも増してスキンシップが多いな。

突然、扉をノックする音が聞こえる

誰かが来たのだろうか?


「リーン。起きたのか?」


この声はバラックさんだ。

僕が返事をすると、バラックさんが入ってくる。

鎧を着たフル装備ではなく、ラフな服を着ている。

どうやら戦闘は終わっているようだが、顔がかなり疲れている。


「リーン、体調はどうだ?」

「僕は大丈夫です。」

「そうか、良かった。お前、7日も寝込んでたんだぞ。」

「7日ですか!?」


どうりでソラが離れないわけだ。

ずっと心配していたのだ。

僕はソラを力いっぱい抱きしめる。

ソラが顔をぺろぺろ舐めてくる。

ソラの尻尾が嬉しさで扇風機のように回転している。

3分程すると、ソラは満足したのかベッドから降りると部屋の隅に行って丸まって寝る。

うん、いつも通りのソラだ。


「どうやら、満足したようだな。」


バラックさんが苦笑いをしながら話しかけてくる。

待ってくれていたようだ。


「すみません。それで、戦いはどうなったんですか?」

「ああ、オークキングはマスターとモーガン様の二人があっさり倒した。さすが、元S級ってとこだったぞ。ところでお前の方は何があったんだ?」

「えっと、・・・」


僕はバラックさんと別れた後の話をする。

最初は驚いた顔をしていたバラックさんだったが、ある意味納得した様な表情になっていく。


「なるほどな。それであの状況だったのか。」

「あの状況?」

「リーン。お前はオークジェネラルを単独で撃破して英雄と祭り上げられていたぞ。俺が駆けつけた時にはお前は兵士と市民に拝まれてたぞ。」

「・・・・・僕が英雄!?。何かの間違いでしょう。しかも拝まれてたって何ですか?」

「いや、どう聞いても間違いじゃないだろう。自分でオークジェネラルを倒したって言ってたじゃないか。」

「それはそうなんですけど、言っててなんですけど、自分でも信じられないんですよ。」

「オークジェネラルを倒したことか?」

「そうです。どう考えてもおかしいです。一人では倒せない自信があります。」


僕が胸を張って言うとバラックさんが苦笑する。


「お前な、『倒せない自信がある』って、倒したやつが言うセリフじゃないぞ。」

「そりゃそうなんですけど・・・。ところで、僕、どうやって倒したんですかね?」

「そりゃあ、ソラのスキルかなんかじゃないのか?」


僕は鑑定さんに聞いてみる。


--------------------

ソラ

種族 スコティッシュテリア

年齢2歳

職業 従魔


スキル

身体強化(神)

探知(極)

幸運

胃袋(大食い)

巨大化Lv1

ご主人様の剣


称号・その他

転生犬

リーンの従魔

犬神の眷属

忠犬


変わってないよ~

--------------------


うん、来る前と変わらないな。

たぶん、極端に攻撃力が上がったのはソラのスキル、『ご主人様の剣』のお陰だろう。

だが、僕がゴブリンジェネラルの攻撃を受け流したりできたのは説明がつかない。

僕の技術では絶対に無理だ。

どういうことだ?





あっ、黒牙のスキル!?

僕は慌てて黒牙のスキルを調べてみる。


--------------------

妖刀 黒牙


名ものなき刀匠に打たれた小太刀。

倒したモンスターを糧に成長する。

Lv10 

ATK 120

スキル 自己修復

    自動防御

良いスキルを覚えたよね。

リーン君よかったね。

--------------------


自動防御!?

新しいスキルが増えていた。

僕がオークジェネラルの攻撃を受け流せたのは、間違いなくこのスキルのお陰だ。


--------------------

自動防御


所有者の危機に自動で発動する。

剣の攻撃力以下の物理攻撃を防ぐ。

--------------------


うん、このスキルで間違いないな。


「どうやら、理由が分かったみたいだな。」

「はい、剣のスキルでした。」

「剣のスキル?」


僕が黒牙のことを説明するとバラックさんは口をあんぐりさせる。


成長する武器(グロウアップアーム)か。リーン、それはあまり人にしゃべるな。下手をすると、狙われるぞ。」

「狙われる?」

「ああ、明らかに価値の高いものを持ってると盗賊に狙われやすくなるからな。あまり他人には知られない方がいいぞ。」

「わかりました。気をつけます」

「それはそうと、腹が減っただろう。そろそろ昼飯の時間だから、一緒に行こうか。」

「はい、そういえばお腹ぺこぺこです。」


返事を聞いたバラックさんは部屋を出ようと扉まで行ったところで、何かを思い出したかのように立ち止まり、振り返って僕の顔を見る。


「・・・そうだ、英雄殿。気をつけろよ。外に出たらもみくちゃにされるぞ」


バラックさんが笑いながら注意をしてきた。

もみくちゃにされるってどういうことだろう?





結論から言うと、外に出ると大勢の市民に取り囲まれた。

僕の顔を見た人々が歓声を上げて集まってきたのだ。


「あなたのお陰で命が助かりました」

「オークジェネラルとの戦い、横で見てました。感動しました」

「従魔といっしょに大量のオークを倒していただき、ありがとうございます。

「是非、娘とけっこんしてください。」

「街を救っていただきありがとうございます。」


一つ違うのがあったが、皆、次々に感謝の意を伝えてくる。

そのため、僕は一歩も進めない状況にいた。


「おいおい、英雄殿は1週間寝込んでいて餓死寸前だ。悪いが道を開けてもらえないか?」


バラックさんが面白おかしくそう言うと、群衆が割れて道ができた。

僕はそのままバラックさんに連れられて、食堂に向かうことになった。


「バラックさん、やめてくださいよ。あれだと僕が本当に英雄になっちゃうじゃないですか。」

「お前な、いい加減に諦めろ。お前はもう街の英雄で確定なんだ。」

「どうにかならないんですか?」

「無理だな。少なくとも、この街でお前の評価がひっくり返ることはまずないぞ。もっとも、お前が重犯罪を犯せば別だがな。」

「・・・それは無理です。わかりました。諦めます。」

「ほお、英雄になる道を決心したか。」

「いいえ、この街に来ないようがんばります。」

「そっちか。・・・まあ、無難かもな。お前の実力はムラがあり過ぎる。評価に地力がどう考えても追いついていない。このままだと、碌なことにならなそうだもんな。」


などと話していると、バラックさんが足を止めた。

どうやら食堂に着いたようだ。

・・・・・・とっても立派な食堂だ。

二階建ての石造りの館で広大な手入れされた庭。

周りを囲む石垣と鉄の門。

そして、その門の前には二人の衛兵が・・・。


って、どう見ても食堂じゃないよね。

ここ、領主の館だよね。

バラックさんの方を見ると、クスクスと笑っている。


「あのな。今のお前がその辺の食堂で食事をしてみろ。さっきの二の舞になるぞ。それにお前にはいろいろと報告もしてもらわないといけないんだ。付き合ってもらうぞ。」


そういうと、僕たちは領主の館に入っていった。






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