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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
20/67

食材を求めて



解体にかなりの時間が掛かったため、日が落ちてきている。

もう数刻で辺りは暗くなるだろう。


「それじゃあ、今日最後の講習だ。」

「今からか!?」

「ああ、そうだ。今からする講習は野営講習だ。」


こうして野営の準備が始まった。

すぐ後ろには街があるのに野営を行う。

なんとも言えない気持ちになるが、いきなり森の中とかで野営をするよりはましか。

テント、食料などはギルドが用意してくれていた。

もちろん、最低限のものだったが・・・。


まずは、話し合いが始まる。

仕切るのはやっぱりアルベルトだった。


「おい、役割分担だ。テント組立と薪、食材班採取の別れよう。」

「薪、食料ってこの辺りだと、向こうの森までいかないといけないぞ。」

「だが、薪がないと夜間が厳しい。薪集めはリーンとセブンに頼みたい。」

「僕たち!?」

「ああ、セブンは斥候系のスキルがあるみたいだから適任だ。」


セブンに斥候系のスキル?

僕がセブンの方を向くとセブンは頷く。


「で、もう一人が僕の理由は?森はここより危険なんでしょう。一番弱い僕が行くの?」

「一番弱いって、この中で最強は間違いなくお前だ。正確に言うと、お前の従魔のソラが最強なんだが。それに魔法鞄(マジックバック)を持ってるから荷物持ちとしても最適だろう」


ぐうの音もでなかった。

ソラは任せて、とばかりにこちらを見ている。


「わかったよ。薪と食料はどれくらいいるの?」

「薪も食料も一応、ギルドで用意してくれているが、量が少ない。まあ、食料はないならないでどうにかなるから薪をメインで頼む。とりあえず、1時間で集めれるだけ集めといてくれ。それくらいなら、入るだろう?」

「うん。問題ないよ」


なにしろ、僕には領主様からもらった魔法鞄(マジックバック)だけでなく、ソラの収納系チートスキルもある。


「それじゃあ、行こうか。」


僕はセブンに声を掛ける。

セブンは黙って頷くと、森に向かって駆けだした。

僕は慌てて彼女を追いかけることになった。





森の中は思った以上に食料がいっぱいあった。

キノコ、木の実、ヤマイモなどとても食材の豊富な山だった。

もちろん、食べれないものも一杯紛れていたが、僕は鑑定さんのおかげで難なく区別することができた。

僕がガンガン食べ物を採取するため、セブンは薪をどんどん集めていた。

しばらくすると、セブンが不思議そうに僕の魔法鞄(マジックバック)を眺めていた。


「どうしたの?」

「その鞄、まだ入るの?」

「そうだね。あとちょっと入るかな。領主様が1×1×1メートルぐらいの大きさって言ってたから」

「す、すごい。高級品」


自分の能力ではないのだが、セブンに褒められるとちょっと嬉しくなった。

そういえば、こういう状況だけど、今、セブンとふたりきりなんだよね。

急に心臓がドクドク言い出した。


(雑念、消えろ)


僕は必死に心の中で念じるが一度生まれた雑念はすぐにはすぐに無くなることはなかった。

顔が赤くなっていくのがわかる。

セブンに見られたくない。

彼女は今、向こうの方で薪を拾っている。

今のうちに雑念を取り除かないと・・・。





無理だ。

ソラ、助けて。





あれ、ソラ?

周囲を見渡すと、ソラがいなかった。

先刻まではいたはずだ。


「ソラ」


僕は大声でソラを呼ぶ。

セブンも慌てて僕のところにやってくる。


「どうしたの?」

「ソラがいないんだ。いつもは勝手に居なくなることなんてないのに。」


僕の顔はすでに真っ青になっていた。

頭の中はすでにソラのことでいっぱいだった。

ソラの身に何かあったのだろうか?

もしかして誘拐!?

次から次に嫌な想像が浮かんでくる。

不意にセブンが僕の肩を叩いた。


「あっち」


セブンが指さした方を向くとソラが何事もなかったかのようにこっちに向かってトコトコと歩いてきている。


「ソラ」


僕は大慌てでソラに駆け寄って抱きしめる。

ソラは迷惑そうに僕の腕から抜け出ると、尻尾を振って僕を見ている。


「ソラ、何をしていたの?」


僕が尋ねると、ソラは胃袋からモンスターを吐き出した。

横で見ていたセブンが腰を抜かす。

あっ、セブンはソラのスキルを知らなかったよな。


「セブン、安心して。ソラは収納系のスキルを持ってるんだ。」


安心させようとソラのスキルを教えたのだが、セブンの顔は驚いたままだ。

セブンはモンスターを指さし、必死の思いで一言呟く。


「オークソルジャー」


そこで僕はソラが狩ってきたモンスターを見る。

豚の獣人のようなモンスターで、手には巨大な剣を持っている。

試しに鑑定さんに聞いてみた。


--------------------

オークソルジャー


オークの上位種

武器の扱いに長けたオーク

ランクCのモンスター

食材として高値で取引される

通常のオークよりもおいしいと評判。

--------------------


「へー。オークより美味しいんだ。ソラ、お手柄だね」


僕が褒めると、ソラは「褒めて」とばかりに擦り寄ってくる。

頭をなでてあげると、嬉しそうに尻尾をブンブン振る。


「そうだ。勝手にいなくなると不安になるから、ちゃんと教えてから行ってね」


僕が叱ると、ソラは申し訳なさそうに頭を下げた。

セブンは僕とソラのやりとりをただただ黙って見ていた。


そろそろ、アルベルトが言っていた約束の1時間になる。

僕は呆気に取られているセブンを引っ張って野営地に戻ることにした。





野営地に戻ると、テントが二つ張り終わっており、料理の準備もあらかた終わっていた。


「おい、お前ら。急がないと暗くなるぞ。」


バラックさんは一人で美味しそうなサンドイッチを食べながら、僕たちを叱責する。

僕が眺めていると、バラックさんが意地悪そうに言う。


「これは、俺の夕食だからあげないぞ。食料調達と調理も講習の一部だからな。」


そういうと、見せびらかすようにサンドイッチを食べる。


「おい、リーン。食べれるものは何かあったか?」

「アルベルト。何かあったの?」

「ああ。用意されてた食糧は碌なものがなかった。」


そういうと、バラックさんはを睨みつける。

バラックさんは悪びれる様子もなくサンドイッチを食べている。


「アルベルト、大丈夫だよ。森にはいっぱい食材があったから。」


僕はそういうと、魔法鞄(マジックバック)から食材を取り出す。

キノコ、木の実、ヤマイモと取り出していくとアルベルトがリブロスが茫然と見ていた。


「す、すごいな。このキノコなんて高級食材だぞ。」

「なあ、リーン。ウサギとかは仕留めてこなかったのか?」

「肉!?それなら・・・」


僕はソラに頼んでオークソルジャーを出して貰う。

リブロスは自分で言っておいて、出てきた肉にビックリしている。


「リーン、これは何?」

「何って、リブロスご要望の肉だろ」


僕は何を言ってるんだ、と言う顔でリブロスを見る。

アルベルトが慌ててバラックさんを呼ぶ。

何を慌ててるんだろう?

やって来たバラックさんも固まる。

一体何を驚いているんだろう?






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