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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
17/67

計算できないと騙されるようです

昨日は投稿ミスで2話投稿していたみたいです。

ストックがなくなるまでは基本1日1話を予定しています。

ストックはあと数話でなくなります



先日、急遽初心者講習の講師を頼まれたとき、リーンがいることは聞いていた。

講師とは別にもう一つの仕事も依頼されたからだ。

リーン、いやソラの脅威はギルド長も十分に認識しているため、その主人であるリーンの人物評価を依頼されたのである。

俺としてはそれほど問題のある性格には見えない。

機会があり、何度か話してみたイメージとしては悪人とは到底思えなかった。

悪人というよりも、どちらかというと天然か世間知らずといった印象を受けていた。

ギルド長もおそらく同じ意見だろう。

つまり、この講習でリーンを正しい道に誘導するのが俺の仕事になるわけだ。

問題は、残りの3人である。

初心者講習受講者である以上、それなりに問題のあるものが受けるのもわかるが、なんでこんな癖のあるのが3人いっしょに受講していやがるんだ?


まずはアルベルト。

言わずと知れた領主の息子だ。

冒険者としての能力は不明だ。

まあ、それなりの教育や訓練を受けてきてはいるだろう。

なにしろ、あの筋肉領主の息子だ。

問題はこいつが貴族ということだ。

講習中に指導でこいつを殴ったりしたら、俺は捕まるのだろうか?

非常に扱いに困る人物である。


次にリブロス。

リーンが来るまでは一番の問題児と言われていたガキだ。

いや、リーンは問題児ではないので、こいつが今でも一番か。

こいつは英雄志向が強すぎる。

気がついたら高レベルのモンスターを倒しに行こうとする。

そして、他人を巻き込む。

自分だけがやられて死ぬのならっ問題ないが、他の冒険者を巻き込むのは止めてもらいたいものだ。

悪意がないとはいえ、すでに3度、冒険者にモンスターのなすりつけを行っている。

なすりつけられた冒険者のなかにはこいつの資格取り消しを訴えている者もいる。

確かギルド長からイエローカードがすでに出されているはずだ。

冒険者からは「なすりつけ男(トレインマン)」と呼ばれ、危険視されている。


最後にセブン。

無口なドワーフの少女だ。

能力面から言うと全く問題ない。卒なくEランクの依頼をこなしている。

問題はコミュニケーション能力の欠如だ。

受付でもほとんどしゃべらない。

野良で組んだパーティーともほとんど喋らない。

いままでどうやって生きてきたのかというほど、喋らない。

ついたあだ名が「黙する少女(サイレントガール)

っていうか、なぜ初心者講習を受けてるんだ?



こいつらに講習って無理がないか?





「いいか、お前ら。午前中は冒険者に必要な一般知識の勉強だ。お前ら、字の読み書きは当然できるよな。」

「当たり前だろ。」

「もちろん」

「・・・はい」

「できます」


僕もスキルのおかげでなぜか読み書きもできるようになっていた。

スキル異世界言語翻訳は会話だけでなく読み書きにも適応されるらしく、今のところ不自由していなかった。


「よし、それじゃあ、次は計算だな。これは自己申告でなくてテストを行う」


計算のテスト!?

つまり、数学のテストだろうか。

やばい、僕は数学が苦手だった。

どんな問題が出てくる?

バラックさんが用紙を配っていく。

まさか異世界に来てまで数学のテストをすることになるとは思わなかった。

そして俺は内容を確認して唖然とした。

内容が小学校レベルなんですけど・・・。


「ちなみに、この問題は領主の執事セバスさんに作ってもらっている。・・・そうだ、アルベルト。セバスさんから伝言だ。1問は許すが2問不正解なら、後で特別補講だそうだ。時間は30分。それでは始め。」


特別補講と聞いたアルベルトの顔色が変わる。

明らかに動揺している。

顔が真っ青になり「いやだー」とか小声で叫んでいる。

それに気づいて、バラックさんがクスクスと笑っている。


ちなみに、試験の内容はこんな感じだった。


問1 350ゴールドの宿に3泊しました。いくらでしょうか。


問2 1500ゴールドの剣と1300ゴールドの盾を買ったら1割引にしてくれました。いくら払えばいいでしょうか。



問6 馬は一時間で60Km走ります。150Km離れた町まで何分でいけるでしょうか?



問10 25000ゴールドの依頼を5人でこなすのと24000ゴールドの依頼を4人でこなすのでは、一人当たりの儲けで考えた場合、どちらの方が儲かるでしょうか。理由を含めて答えよ。



うん。どの問題も簡単だった。

あっという間にすべての問題が解けてしまう。

僕が暇そうにしているとバラックさんが不審がってやってきた。


「どうしたんだ?何かあったのか?」

「いえ、終わって暇なだけです。」

「終わった!?」


バラックさんは驚いて僕の答案用紙を取り上げる。


「・・・・・・!?全問正解だ。まさか、・・・。いや、しかし・・・」


バラックさんが「信じられない」といった顔をしている。

もしかして、この世界の学力は低いのか?

日本では小学生レベルの頭脳でもこちらの世界ではチート能力なのだろうか?


「おい、リーン。お前、もしかして、初等学校に通ってたのか?」

「初等学校?」

「都会の裕福な子供が行く学校だよ」

「いいえ」

「誰かに習ったのか?」

「えっと、昔、ちょっと知り合いに・・・」

「そ、そうか。それでここまで計算ができるのか・・・。」

「あの、もしかして僕ってすごいんですか?」

「なあ、リーン。・・・自分でそれを言うか?この程度なら、商人志望の子供の半分以上はできるよ。ただ、冒険者でここまで計算ができる奴は少ないだけだ」


バラックさんはそういうと、他の受講生の方に歩いていく。

どうやら、チートじゃなかったようだ。

だよね。この程度の計算でチートなわけないよね。





結局、満点は僕一人だけだった。

アルベルトは、ケアレスミスで2問間違えていたが、合格ラインは突破していた。

ただ、特別補講が決定したためか、顔は真っ青になっていた。

セブンは4問間違えていたが、合格ラインは突破していたようだ。

問題はリブロスだった。

前問不正解。

なぜ、このような結果になったのか、誰も理解できなかった。


「リブロス。お前、宿屋に泊まっているよな?」

「当たり前じゃないですか。」

「宿代はどうやって払ってたんだ?」

「どうって、宿の人に財布ごと渡していました。」

「・・・・・・買い物もか」

「はい、面倒な計算をしなくても大丈夫ですので」


リブロスは胸を張って答える。

いやいやいやいや、どう考えてもおかしいでしょう?


「ちなみに、その腰に差してある剣はいくらだった?」

「さあ?剣と鎧のセットで200000ゴールドぐらいだったと思いますけど?」

「「高すぎだー」」


それを聞いたバラックさんとアルベルトが同時に叫んでいた。

どうやら、リブロスは騙されていたようだ。

こうして、バラックさんによると、予定になかった計算の授業が始まることになった。

冒険者にとって計算できることはそれほど重要ではないが、宿屋や武器屋、防具屋で商人たちに騙されて喰いものにされないように指導しているとのことだ。

ただ、流石にここまで計算のできない受講生は居らず、計算の授業が行われたのは5年ぶりのことらしい。


始めはバラックさんが一人で教えていたのだが、早々に匙を投げた。

その後、僕たちも教えることになったのだが、しばらくすると、アルベルトはちょっと用事ができたと、部屋を退出していた。

セブンは黙する少女(サイレントガール)と呼ばれるだけあって、人に物を教えるのは向いていなかった。

結局、僕一人でリブロスに計算を教える羽目になった。

結局、リブロスが足し算を理解するのに初日の午前中をいっぱいを必要とした。

おそらくこれで、最低限の買い物は自力でできるようになったはずだ。

・・・・・・大丈夫だよね。






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