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僕、チート能力がないんですが  作者: 佐神大地
異世界に転生しました
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初心者講習始まる



ついに初心者講習の日が来た。

僕はソラを連れて冒険者ギルドに急ぐ。

僕の他にも参加者が何人かいると言っていた。

この何日か、ギルドに顔を出していたのだが、同年代の冒険者にあったことがなかった。

そのため、今日こそは会えるのではないかと楽しみにしていたのだ。





「おはようございます」


僕が元気よく挨拶をして、ギルドに入るとエルルさんが近寄ってくる。


「リーン君、ソラ君おはよう。今日は初心者講習だけど、準備は大丈夫?」

「はい」


用意するのは武器防具だけでいいと言われていたが、僕は昨日のうちに、必要そうなものをいくつか購入しておいた。


「それで、他の参加者は何人集まりそうなんですか?」

「えっとね。今のところリーン君の他に2人参加しているわ。後、もう一人参加予定なんだけど、まだきていないわね。2人はそこの部屋の中で待機してもらっているから挨拶してきたら?」


エルルさんが指さした先は先日使用した訓練室だった。

僕はエルルさんにお礼を言うと訓練室の扉をくぐった。


「おっ!お前も初心者講習を受けるのか。俺はリブロスだ。よろしくな。」


部屋に入った瞬間、一人の少年が声を掛けてきた。

身長は僕より少し、いや、だいぶ高く、体は鍛えられて引き締まっている。

かなり年上と思えなくもなかったが、顔には幼さが少し残っている。

おそらく同年代だろう。


「僕はリーン。よろしくね。」


僕が握手を求めて手を差し出すと、リブロスは嫌がるそぶりもなく僕の手を握り返してくれた。

良かった。この世界にも握手の文化はあったみたいだ。

あれ?リブロスが首を傾げている。


「なあ、リーン。お前、本当に冒険者か?」

「なんで?」

「掌に訓練の後がないから」


確かに、リブロスの掌はごつごつしていた。

それに比べて僕の掌はツルツルだ。


「うん。なったばかりだから、あまり武器を使ったことがないんだ。」

「そんなんで大丈夫なのか?」

「うん。この子が戦闘では活躍してくれるんだ。」


僕がそういってソラを紹介すると、リブロスは驚いていた。


「すげーな。テイマーだったのか。どうりで掌に武器を扱った後がないはずだよな。」

「いや、僕はテイマーじゃなくて犬使いだよ。」


僕が訂正すると、リブロスは不思議そうな顔をしていた。

やっぱり、犬使いはエルルさんが作った職業だったようだ。


「犬使い?初めてきいた職業だな。俺は戦士だ。」


リブロスはそういうと腰につけていた古びた剣を僕に自慢げに見せた。




もう一人の受講者は女の子だった。

小柄でとても華奢な体格だった。

腰にはダガーを差している。

美しい装飾のされたダガーは彼女をより一層引き立てていた。

銀色のショートヘアで青い瞳の少女はどこか遠くを見ているようで、その神秘的な表情に僕は惹きつけられた。


「僕はリーン。それと、この子はソラっていうんだ。よろしくね。」

「・・・・・・セブン」


無表情のまま、ぽつりと名前(?)だけが帰ってきた。

名前・・・だよね。


「えっと、もしかして、ドワーフかな」

「・・・そう」


・・・会話が続かない。

なんと切り出したら良いのかわからない。

何を質問しても一言で返されて終わりのような気がする。


「こいつ、ほんと無口なんだよな。俺もさっき話しかけられたけど一言二言帰ってきただけだったぜ。」


リブロスが不機嫌そうに教えてくれる。

当の本人はすました顔をしてあさっての方向を向いている。

僕はなぜかその横顔をじっと見つめ続けていた。





突然扉が開き、最後の参加者が入ってきた。

見るからに上等な服を纏い、一見冒険者には全く見えない青年。

・・・アルベルト様だよね。

そこにいたのは先日あった領主の息子、アルベルトであった。


「アルベルトだ。今日から、冒険者となることになった。みんな、よろしく頼む。」


急な領主の息子の登場にリブロスが固まっている。

セブンは・・・先ほどと同じく無表情のままだ。

ふと、彼女が僕の方を振り向き、僕と目が合う。

僕は慌てて目を逸らすと、心を落ち着けようと深呼吸をする。

たぶん顔は真っ赤になっているはずだ。


・・・僕、変な風に見られてないよね。




「おう、リーン、ソラ。よろしくな。」


アルベルト様は僕に気づき、僕の方に近寄ってくる。

隣でリブロスが更に固まっていくのが分かる。


「アルベルト様、こんにちは。」

「おいおい、これからは同じ冒険者だ。様なんかいらないぜ。」

「・・・わかりました。アルベルトさん」

「さんもいらないって。後、敬語もいらないって。これから一緒に冒険者としてやっていくんだ。よろしく頼むよ。」

「・・・・・・わかった。アルベルト、よろしく」


僕がそういうと、アルベルトは満面の笑みで手を差し出してきた。握手かな?

僕は恐る恐る手を差し出すとアルベルトは僕の手をしっかり握ってくる。

その後、アルベルトはリブロスとも似たような会話をしていたが、リブロスは恐縮しきっていた。

結局、呼び捨てで呼ぶことはなく、最終的には「アルベルトさんでお願いします」と泣いて懇願していた。

アルベルトはセブンにも話し掛けていったが、セブンはやはり名前しか言わなかった。

こうして一通り自己紹介が終わった時、初心者講習会の講師がやってきた。


「おう、講師のバラックだ。よろしくな。」


やって来たのはバラックさんだった。

バラックさんは僕たちの顔を見渡すと、いきなりため息をついた。


「おいおい、マジかよ。今回の受講生ってこいつらなのか。」






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