どうやらチート武器(予定)のようです
武器屋の店員に聞いた場所に行くと大きなお屋敷が建っていた。
「ここだよね。」
僕はソラに尋ねると、ソラは「さあ?」という顔をしている。
僕は勇気を振り絞って門の所に行くと、鐘を鳴らす。
「はいはーい」
間の抜けた返事と共に出てきたのはラックさんだった。
「あれ?少年、どうした?」
「こんにちは、ラックさん。」
僕は武器屋での話を伝える。
「刀!?確かに一振り怪しい刀を仕入れたんやが、それが鑑定できんでな。それで店に出せてないんや。」
「鑑定できない?」
「ああ、鑑定屋に頼んでも一部鑑定できんのや。流石に呪われてたらいかんから店に出してへんのや。」
「僕が鑑定しましょうか?」
「なんや、少年。鑑定のスキルをもってるんか?」
「はい」
「それじゃあ頼むか。ちょっと待っといてや」
ラックさんはそう言うと部屋を出ていく。
しばらくすると、小ぶりの刀を1振り持って帰ってきた。
うーん。なんとも不気味な刀だ。
刀身は先ほど見た刀より短く、黒光りし、何か禍々しいオーラを放っている。
鞘もまるで何かを封印するかのようにびっしりと怪しい言語が彫り込まれている。
見た目は完全にアウトだ。
「少年、これが例の刀や。やってみい。」
僕は鑑定スキルを使用する。
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妖刀 黒牙
名ものなき刀匠に打たれた小太刀。
倒したモンスターを糧に成長する。
Lv1
ATK 30
スキル なし
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・・・何と言っていいのか。
これ、明らかに転生者用の武器だ。
この世界にはATKとかの概念はないよね。
どう説明しようかな。
「どうや、少年。鑑定できたか?」
「ええ、一応できました。」
僕は取り合えず、そのまま、ラックさんに伝えた。
「少年、この鑑定結果。本当か」
「はい、僕の鑑定ではこのように出ましたけど?」
「うーん、鑑定屋の結果よりも詳しく鑑定できてるな。まあ、ATKとか意味わからんけどな。」
「そ、そうですね。でも、呪われてはいないみたいですよ」
「そうやな。どうする?ほしいなら200000ゴールドでどうや?」
「いいんですか?」
「いいで。少年は自分の命の恩人やからな。防具もほしいならどうや?」
「あっ。防具は昨日お店で買わせていただきました。」
「・・・もしかしてホーリカウの皮鎧を買った少年ってリーン君!」
「はい、そうですけど。」
「すまん。あの鎧も鑑定できてなくてなくてな。ホンマやったら店頭には出せへん商品やったんやけど、店員が勝手に売ってしまってな。どうしようかと思ってたんや。それで、あの鎧も鑑定できたんか?」
「はい」
僕は素直に鎧の鑑定結果を教えた。
「すみません。騙したようなことになって。」
僕が謝るとラックさんは首を横に振った。
「それはいいんや。鑑定できんで売った商人の方が悪いんや。自分の仕入れたものが良かったっていうことが分かっただけで満足や。」
「そうなんですか?」
「ああ、物を見る目があるってことやからな。」
ラックさんは嬉しそうにそう言い切った。
その後、ラックさんにお昼までご馳走になってしまった。
◇
その日の午後、新しい武器と防具がそろった僕は東の平原に来ていた。
モンスターと戦ってみるためだ。
もちろん、ソラには一緒に来てもらっている。
一人でなんて絶対無理だ。
「ソラ、弱そうなモンスターを探してくれ。」
ソラは「ワン」と一声すると走り出す。
すぐに2匹のホーンラビットと遭遇した。
僕はソラに頼んで1匹だけ倒してもらうと、生き残った一匹と対峙する。
小太刀を手にした僕はホーンラビットと死闘を演じることとなった。
「ゼーハー、ゼーハー」
傷一つ追うことなく倒したが、倒すために僕の体力は空になった。
ホーンラビットの初撃が見事に僕のお腹に直撃したが、ホーリーカウの皮鎧のおかげでノーダメージだった。
それに恐れを抱き逃げ出したホーンラビットを僕が必死に追いかけるという滑稽な戦闘シーンが30分ほど続いたのだ。
僕は魔法鞄から魔法の水筒を取り出すと水を一気に喉に流し込んだ。
とっても美味しい。
前世で売ってた〇〇のおいしい水なんかよりよっぽど美味しい。
喉を潤した僕は戦闘は諦めた。
この調子でモンスターと戦っても日が暮れるまでに何匹のホーンラビットを狩ることができるだろうか?
ここはレベリングしかないな。
ゲームのようにモンスターのとどめを刺しただけで僕が強くなるかは分からないが、少なくとも黒牙のレベルは上がるはずだ。
僕はソラに頼んでモンスターを瀕死状態にしてもらうと僕がとどめを刺すという作業を延々と繰り返した。
その結果、黒牙はレベルアップしていた。
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妖刀 黒牙
名ものなき刀匠に打たれた小太刀。
倒したモンスターを糧に成長する。
Lv3
ATK 50
スキル 自己修復
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うん、少し強くなっている。
武器なのにスキルも一つ覚えている。
このままいくと、チート武器一直線だろうか?
僕は・・・もちろん強くなっていなかった。




