チート能力はもらえませんでした
長編4作品目になります。
書き溜めている話がある間は毎日投稿。
ストックがなくなると、2~3日に1話投稿で行く予定です。
「えっと、神様、もう一度言ってもらっていいですか?」
僕は神様に聞き返した。
「いいよー。異世界に転生してもらいます。」
「なんでですか?」
「なんでって・・・。そーだなー、面白そうだから?」
面白そうだから。
そんな理由で僕は異世界に送られようとしていた。
しかも疑問符だ。
神様の話によると、僕は飼い犬のソラ(2歳)と散歩をしている途中、トラックに引かれて死んだそうだ。
享年12歳という短い人生だった。
その現場をたまたま見ていた、異世界の神さまが地球の神様と交渉して、僕の魂をゲットしたらしい。
「なんでだよー」とツッコみたくなる
「時間がないから、ちゃちゃっと決めてくね。言っておくけど、君に拒否権はないから。あんまり駄々を捏ねてると、君の両親に神罰が下るよ。」
幼い少年の姿のこの神様は屈託のない笑顔で脅迫まがいのことを言ってくる。
言動は神様とはとても思えないがこの少年が神様であることは疑いようがなかった。
なぜかって?
それは僕の本能?がこの少年を神様と認めてしまったからだ。
一目会った瞬間から「この人には逆らってはダメだ」と本能が訴えていた。
「それじゃあどんどん決めてくねー。まず、行き先は・・・・・・」
それから神様が一方的に話続けて、どんどん設定とやらが決まっていった。
なんだかゲームキャラを作成しているような感じだった。
◇
神様の話を要約するとこんな感じになった。
僕が今から転生するのは剣と魔法の世界レプリカというらしい。
転生というが、誰かの子供として生まれるのではなく、神様が作った肉体で蘇って、この世界に送り込まれる、ということだ。
レプリカでの僕の名前はリーンに決定した。
年齢は12歳、前世の年といっしょだ。
ちなみに、12歳という年齢はレプリカでは成人する年齢だそうだ。
肉体はそれなりに丈夫に作ってあるので、無理をしなければ、そう簡単に壊れることはないと言っていた。
転生者にはチート能力がいくつか与えられるらしいが、それは本人が一番望む能力らしく、向こうの世界についたら分かるそうだ。
神様曰く、「サービスしといたから」だそうだ。
「と、いうことで頑張ってね。」
神様がそう言うと、僕は異世界に放り込まれた。
◇
気がつくと僕は気味の悪い森に一人立っていた。
僕は確か・・・神様に会って・・・。
記憶を呼び戻そうとするがぽっかり穴が空いているかのように一部分思い出せない。
神様に転生させられたのは覚えている。
でも、自分が誰なのか思い出せない。
思い出せるのは名前がリーンで12歳という神様に決められた設定だけだ。
転生前の自分のことは一切思い出せない。親の名前などもだ。
一方、転生前のことでも一般常識や歴史上の有名人物の名前などは憶えている。
当然、服の着方、食べ物の食べ方などはもちろん覚えている。
数字の計算や、日本の歴史なども思い出せる。
ちなみに、僕の一番好きな武将は織田信長だ。
さて、気になるのは神様がくれたはずのチート能力だ。
こちらの世界についたら分かると言っていたが、どうすればわかるのだろうか?
「ステータスオープン」
僕は試しに呟いてみた。
異世界ものと言ったら、これだよね。
突然、僕の目の前にステータスボードが現れた。
まじでこれで良かったんだ。
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名前 リーン
種族 人間
年齢 12
職業 なし
スキル
異世界言語翻訳
鑑定
称号・その他
転生者
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・・・・・・
異世界言語翻訳って、この世界の言葉が喋れて理解できるってことだよね?
鑑定って異世界もので定番のあの鑑定だよね?
たしかに本によってはレアスキルだけど、結構定番のスキルだよね。
神様。
チート能力はどこにいったんでしょうか?
サービスしとくんじゃなかったんですか?
「そ、そうか。称号の転生者がチートなんだ。えっとスキル鑑定使用、称号転生者を鑑定?」
スキルの使い方が分からないが、とりあえずやってみた。
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転生者
異世界から生まれ変わったもの。
強力な能力や神の加護を持っている
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どうやら鑑定のスキルは使えたようだ。
・・・・・・
鑑定さん、すみません。どちらも持ってないんですけど。
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転生者
異世界から生まれ変わったもの。
強力な能力や神の加護を持っている者が多い
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あっ
僕のクレームに対して、鑑定さんはすぐに鑑定結果の文を修正してきた。
仕事が早いな、って違うだろ。
どうしよう。
どうみても詰んでいる気がする。
チートスキルなし。
もちろんリアルチートスキルもない。
僕はごくごく普通の中学生だった。
別に祖父から一子秘伝の武術を教わっていたりなどしていない。
僕は周囲は注意深く観察する。
木々が鬱蒼と茂る薄気味悪い森だ。
僕はこの森を出て、無事にヒトの居る場所にたどり着けることができるのだろうか?
確か神様はレプリカは剣と魔法の世界といっていた。
ということはモンスターとかもいるはずだ。
僕、勝てないよね。
「どうか遭遇しませんように」
僕はそう祈りながら森の探索を始めた。
・・・これ、フラグじゃないよね?
スコティッシュテリア(愛犬)は次話に登場します。