2章 ウーディ編(1)
森の中のポツンと一軒家で、リーザと暮らしている。
最初は、1ルーム・キッチン・トイレ付きだった部屋を、キュノーがリフォームし、さらに、ダイハの大工さんたちが、リーザの部屋まで増築してくれた。
リーザは体が小さいけれど、よく気がつき、掃除をしてくれたり、この世界に合うような服を作ってくれたりする。
あたしは、高いところの掃除や、材料の買い出し(キュノーからもらった特殊能力で発生させている)など、役割分担をしている。
「ミキさん、棚や机の上にある作品は、いつ見てもステキですよね! これなんか、細部まで作りこまれていて……」
「わかるぅ? それ『タイプ八六』っていうんだけど、今いちばん大好きなの! 仕事が終わって、毎晩作って、二週間かけて作ったの!」
「ミキさんって、本当にクルマっていう機械が好きなんですね!」
「ダイハの人たちも、クリエイティブな人たちだから、いつかは、こういう機械を作れるかもね?」
リーザは微笑みながら、あたしの手を握る。
「ミキさんが、ダイハの棟梁になってくだされば……」
突然、リーザが目を見開き、
「あっ!」
「リーザちゃん?」
「ミキさんを必要とする人々の姿が見えました! 人というより、半獣半人ですが……」
「え? どういうこと?」
リーザが考えこむ。
「たぶん、ダイハのように、ミキさんのお力で救われるんだと思います。」
「……」
「皆さん、嬉しそうにミキさんと握手をしているイメージでした。」
――そうか。リーザちゃんは、未来が見えるんだった。
「リーザちゃん、ありがとう! どこに行けばいいのかな?」
「ごめんなさい、ミキさん。私は、どこに、どんな種族の人々がいるのか、わからないんです。」
落ち込むリーザ。
「大丈夫よ! 心配しないで!」
ピロン♪
“次なる目的地はウーディじゃ。”
――了解。
あたしはすぐに地図アプリで「ウーディ」を探す。
南東に向かって森を抜けた所にあるようだ。
「今からウーディという町に向かうわ。リーザちゃんはどうする?」
「私も行きます! 足手まといになるかもしれませんが、連れて行ってください!」
「よし! じゃあ、準備しよっか!」
あたしたちは、地図アプリを頼りにウーディを目指していた。
2時間ほど歩くと、霧が出てきた。
「リーザちゃん、ちょっと休もうか」
「はい。ミキさんが好きなおにぎりを作ってきたので、一緒にお昼ご飯を食べましょう!」
リーザは嬉しそうに言った。
てきぱきとシーツを広げ、休むところを作ってくれた。
美味しいおにぎりと、温かいお茶。
これだけで癒される。
「リーザちゃんが作ってくれたおにぎりもお茶も、最高だよ!」
「ありがとうございます。私にはこれくらいしかできませんので。」
「いや、十分だよ!」
はにかむリーザ。
「ところで、リーザに見えた未来のイメージはどういうの?」
少し考え込むリーザ。
「とにかく、ミキさんに感謝しているようでした……もう一度、ミキさんの手を貸してください。」
リーザがあたしの手を握って、静かに目を閉じる。
「尖った耳。鋭い目。大きな口。見た目は恐ろしいのですが、とても優しい表情をした半獣半人です。」
「半獣半人?」
「はい。見た目は獣のように毛むくじゃらで、私たちのように二足歩行しています。」
「へぇー、やっぱりリーザちゃんはすこまいね!」
リーザは再びはにかみ、空になったカップに、お茶を注いでくれた。
すぐに晴れるだろうと思っていた霧がだんだんと濃くなっていく。
「こほん、こほん。」
リーザが咳き込む。
「なんか、空気が重たくなってきたね。」
「こほん。そうですね。ちょっと息苦しい感じがします。」
あたしたちは、急いで片付け、ダイハで使ったマスクを着けて、先を急ぐことにした。
「ミキさん、この辺りの木は、みんな枯れかかっていますね」
たしかに、青々としていた森の木々が、葉を落としている。
空には霧に包まれた太陽が見える。
「ウゥゥゥ」
どこからか犬がうなるような声が聞こえてきた。
あたしは、リーザちゃんを後ろに隠し、身構える。
枯れた木々の間から、数匹の狼が現れた。
――ヤバい。狼たちは、ヨダレを垂らし、今にも襲いかかってきそうだ。
「グガァァッ!」
ピロン♪
――なによ、こんな時に!
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