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高安女子高生物語  作者: 大橋むつお
58/112

58:〔初めてのアマゾン!〕 

高安女子高生物語・58

〔初めてのアマゾン!〕        



 話は前後します。


 月曜は、神戸の異人館街の遠足やったけど、その前の日曜は、今里のお祖母ちゃんの全快祝いに行ってました。


 以前、佐渡君のとこらへんで書いたけど、今里のお祖母ちゃんは左の腕を骨折して一カ月半も入院してました。



 単純な骨折やから、普通半月もあったら退院できるんですけど、お祖母ちゃんは骨粗鬆症のうえに足腰悪いよって、一カ月余分にかかりました。それが、やっと退院して快気祝い……というても、家で盛大にやるわけやない。布施のN寿司いうとこ行って、奈良の伯母ちゃん夫婦とうちの家族三人で、お寿司を食べる。

 今里の家から歩いても10分ほどやねんけど、お祖母ちゃんは家から奈良のオッチャンに車に乗せてもろてやってくる。うちら高安組は、寿司屋の前で順番取り。11時45分開店やねんけど、もう10人ほど並んではった。お祖母ちゃんがオッチャン伯母ちゃんといっしょに来た頃は、もう30人ぐらい並んでた。

 


 6人でたらふく食べた。


 うちは定番のマグロから始めて、中トロ、鉄火、エビ、イカ、蛸、ほんでもっかい鉄火にもどって上がり。ちょっと少ないみたいやけど、ここのN寿司は1皿に3貫載って、ネタも大きいよって、お馴染みの回転寿司の倍くらいはある。

 ビックリしたんが蛸。符丁は「ぼうず」 何がビックリしたか言うと、蛸が生やいうこと。お馴染みの回転寿司やら出前寿司のたこは茹で蛸。いつもの調子で食べたら吸盤が上顎にひっついてえらいことやった。

 うちの味覚では、サビが足らんのでサビ入りのムラサキをハケで塗ったら死ぬかと思た。サビの効き過ぎ。上向いて、しばらく口を開けてる。わさびは揮発性なんで、こうやっとくと刺激が抜けていく。せやけど「アホな顔せんとき」いうて、お母さんに怒られた。伯母ちゃんが、せんでもええのに、その姿をシャメで撮りよる。こんな姿、関根先輩には見せられません。


 うちにひっついてきた楠木正成のオッサンが、しきりに「うまい!」を連発しとった。「もっと食え」言うとったけど、オッサンの言う通りしとったらブタになる。鉄火の追加で辛抱させた。どうも正成のオッサンの時代には寿司は無かったみたい。


 それから、お祖母ちゃんの手ぇ引いて喫茶店。正確にはお祖母ちゃんがうちの腕に掴まってる。保健で習たし、中学の職業体験で行った介護施設でも身に付いた「手のさしのべ方の基礎」せやけど、お祖母ちゃんは、嬉しかったみたいで、後でお小遣いむき出しで1万円もくれた!


 いつも通り前説が長い。


 うちは、この1万円で、始めてネットショッピングやった! それもお洋服!

 カード決済やと、大人やないとでけへんけど代引きやったらできる。そない知恵をつけてくれたんは、奈良のオッチャン。


 うちは、制服以外ではパンツルックが多い。家の中では、たいがいジャージ。せやけどジャージばっかり着てたらジャージ女になってしまう。ジャージ→くつろぎ→だらしないの三段論法は正解やと思う。人間は着てるもんで立ち居振る舞いが決まってくる。

 美保先輩に勝つためにも、ちょっとは女の子らしいしとかなあかん。


 女の子の夏のファッションを検索。正直目の毒。


 2時間ほどかけて、二つ選んだ。七分袖のカットソーと、大きな花柄のスカート(細いブラウンのベルト付き)

 カットソーとTシャツの違いがよう分からんよって、検索。


 カットソーいうのは、生地が編み物で伸縮性がある。Tシャツはただの(主に)木綿の生地。体のフィット感がちゃう。で、3回ほどクリックして、アドレスと住所打ち込んだらしまい。お届けは2日後てなってたけど、遠足から帰ったらもうきてた。

 惜しい、もうちょっと早かったら遠足着ていけたのに!


 で、部屋に籠もって1人ファッションショーやった!


 我ながら「馬子にも衣装」スカートがミニやけど、フレアーがかかっててフワっとしてる。カットソーは体に緩やかにフィット。ジャージやら制服とは全然ちゃうシルエットが、そこにあった。

――うちて、こんなに女の子らしかったんや!――

 感動してしもた。

――かいらしいのは認めるけどな、いきなり、これ着て学に会うのはやめときや――

 正成のオッサンが、いらんことを言う。

――河内の女は心意気や。まず、ドーンととびこんでいけ。ほんで相手に通じたらきれいにしたらええ――


 正成のオッサンの言うことは分かる。せやけど、こないだみたいに、いきなり夜這いかけるんはちゃうと思う。


 もどかしいなあ、青春いうのは……。


――なんもむつかしない。行動あるのみや――



「うるさい、黙ってて、オッサンは!」

「明日香、このごろ独り言多いなあ……」


 洗濯物干しに上がってきたお母さんに聞かれてしもた……。


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