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高安女子高生物語  作者: 大橋むつお
52/112

52:『オッサンの時代とはちゃうねん!』

高安女子高生物語・52

『オッサンの時代とはちゃうねん!』     



――僕も、明日香のことは好きや――


 ドッキン!


 それが、まず目に飛び込んできて、うちは思わず、スマホから目を離した。


 ドキドキドキドキドキドキドキドキ


 うちの中に勝手に住み込んだ、山川の詳説日本史でもたった一回しか出てけえへん楠木正成が、うちの関根先輩への煮え切らん思いに業を煮やした。

 ほんで、こないだ玉串川の川辺で、うちに「好きや」と告白させよった。そんでも、それ以上なにもようせんうちに苛立ったんか、意地悪か、善意か、よう分からへんけど、うちが寝てて意識がないうちに先輩のアドレス調べて、うちの声で電話しよった。で、その返事がメールで返ってきた。


 心を落ち着けて続きを読んだ。


――保育所のころから好きやったけど、明日香は他にも男の友達がいてて、俺のことは眼中に無いと思てた。こないだの玉串川のことも、あとのシラっとした態度でイチビリかと思た。夕べのことで、明日香の気持ちは、よう分かった。正直、今は美保もいてる。煮え切らん男ですまん。でも、夕べみたいなことはあかんと思う。学――


 心臓がバックンバックン言うてる……ん……ちょっとひっかかる?


 夕べみたいなこと……電話以外になんかしたか? 


 うちは電話の履歴を調べた。美保先輩と二人の電話の履歴はあったけど、関根先輩のは無かった。で、メールの送信履歴を見る。


――今から、実行に移します。明日香――


 え……うちて、なにを実行に移したんや!?


 そう思うと、ジャージ姿のうちが浮かんできた。どうやら夕べの記憶(うちの知らん)の再現みたいや……。



 時間は夜の十二時を回ってる。



 素足にサンダル。自転車漕いで……行った先は、関根先輩の家……自転車を降りたうちは、風呂場から聞こえる関根先輩の気配を感じてる。先輩がお風呂! せやけど、うちは覗きにはいかへんかった。方角は、関根先輩の部屋。その窓の下。

 うちは、そーっと窓を開けると、先輩の部屋に忍び込んだ。で……。


 あろうことか、先輩のベッドに潜り込んでしもた!


 先輩が、鼻歌歌いながら部屋に戻ってきた。


「先輩……」

「え……!?」

「ここ、ここ」

 うちは布団をめくって、姿を現した。

「あ、明日香。なにしてんねん、こんなとこで!?」

「実行に移したんです……うちもお風呂あがったとこです」


 ゲ、うちはジャージの下は、何も身につけてないことに気が付いた! ほんで、おもむろにジャージの前を開けていく。先輩の目ぇが、うちの胸に釘付けになる!

 うちの手ぇは、ジャージの下にかかった。


「あかん、明日香! こんな飛躍したことしたら!」

「言うたでしょ。うちを最初にあげるのんは、先輩やて」

「声が大きい……!」


 それから、先輩は、うちのジャージの前を閉めると、お姫さまダッコ!……で、窓から外に出されてしもた。

「大丈夫か……頭冷やして……オレも連絡するさかい!」

 で、うちは、そのまま自分の家に帰った。


 なんちゅうことをしたんや!


「好きやったら、あたりまえやろ。この時代の男はしんきくさい。好きなくせに夜這いも、ようさらさんと。せやから明日香の方から仕掛けていったんや」


「オッサンの時代とはちゃうねん!」


「せやから、夕べは大人しい帰ってきた。関根、ほんまにビビっとったからな。わし、分からん。好きな女が二人おってもええやんけ。付き合うて、相性のええほうといっしょになったらええねん。せやけど、明日香の気持ちは伝わったで」

「伝え過ぎや!」

「そう、怒りな。そろそろ学校いく時間とちゃうけ?」

「あ、もう7時45分!」


 うちは、ぶったまげて、制服に着替えよ思て、パジャマ代わりのジャージを脱いだ……ほんで、気ぃついた。夕べの朝やから、うちは、パンツも穿いてなかった……。



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