表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高安女子高生物語  作者: 大橋むつお
16/112

16:〔明日香のナイショ話〕

高安女子高生物語・16

〔明日香のナイショ話〕       



 ここに書いたらナイショにならへん。


 そう思てる人は、大阪人の感覚が分からん人です。

 うそうそ、最後には分かる仕掛けになってるさかいに、最後まで読んでください。


 実は、演劇部辞めよか思い始めてます。


 一週間先には、芸文祭。ドコモ文化ホールいう400人も入る本格的なホール。難波から駅二つ。NN駅で降りて徒歩30秒。ごっつい条件はええんです。

 せやけど、観にくるお客さんが、ごっつい少ない……らしい。

 うちは一年やさかい去年のことは、よう分からへん。

「まあ、80人も入ったら御の字やろなあ」

 今日の稽古の休憩中に美咲先輩が他人事みたいに言う。

「そんなに少ないんですか!?」

「そうや。コンクールかて、そうや。予選ショボかったやろ」

「せやけど、本選はけっこう入ってたやないですか」

「さくら、あんた大阪になんぼ演劇部ある思てんのん?」

「連盟の加盟校は111校です……たしか」

「大阪て270から高校あんねんで。コンクールの参加校は80ちょっと。1/3もあらへん。本選も箕面なんちゅう遠いとこでやるさかい、ようよう客席半分いうとこや」

「うそ、もっと入ってたでしょ?」

「観客席いうのは、半分も入ったら一杯に見えるもんやねん。うちのお父ちゃん役者やさかい、そのへんの感覚は、あたしも鋭い」


 美咲先輩のお父さんが役者さんやいうのは、初めて聞いた。びっくりしたけど、顔には出さへんようにした。


 それから、美咲先輩は、いろいろ言うたけど、要は、三年なったら演劇部辞めるつもりらしい。

 それで分かった。元々冷めてるんや。盲腸かて、すぐ治るのん分かってて、うちにお鉢回してきたんや。

 馬場先輩に言われた「あこがれ」が稽古場の空気清浄機に吸われて消えてしまいそう。

「今は、目の前の芝居やることだけです!」

 そない言うて、まだ休憩時間やけど、一人で稽古始めた。

「えらい、熱入ってきたやんか!」

「午後の稽古で、化けそうやなあ」

 南風先生も小山内先生も誉めてくれた。一人美咲先輩には見透かされてるような気ぃがした。


――明るさは滅びのしるしであろうか、人も家も暗いうちは滅びはせぬ――


 太宰治の名文が、頭をよぎった。親が作家やと、いらんこと覚えてしまう。

 三年の先輩らは、気楽そうに道具の用意してる。うちは情熱ありげに一人稽古。

 このままいったら、四月には演劇部は、うち一人でやっていかならあかん。それが怖い。

 あたしは芝居は好きや。せやから、こないだスターの坂東はるかさんに会うてもドキドキウキウキやった。馬場先輩にも「アスカには憧れの輝きが目にある」言われた。

 せやけど、ドラマやラノベみたいなわけにはいかへん。

 新入生勧誘して、クラブのテンション一人で上げて、秋のコンクールまで持っていかなあかん。


 正直、そこまでのモチベーションはあらへん。


 それにしても、忌々しい美咲先輩。こんな時に言わんでもええやん!

 このナイショ話は、芸文祭が終わったら、頭に「ド」が付く。分かりました?


 アスカのドナイショ物語の始まりですわ……。


※ ドナイショは、標準語では「どうしよう」と言う意味です。 明日香



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ