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ガベージブレイブ(β)_086_クソジジィ包囲網5(完)

 


「あの……お方の居場所は分からぬ……」

 神に創られたエンシェント種が神に反逆することはないだろうと思っていた。

 だから、クソジジィは俺と戦うしか選択肢がないのも当然分かっていた。

「なら、俺と戦うしかないな。皆は下がっていてくれ」

「く……」

 クソジジィの雰囲気が変わった。覚悟を決めたように見えるが、本当のところはどうだろうか?


「我とて人族を長年率いてきたのだ。こんなところで死ぬつもりはない!」

 こんなところって、ここはお前の本拠地だろ?

「なかなか威勢のいい啖呵だ。俺もお前のその意気に応えてやろう」

 黒霧を構えてクソジジィを見据えた。

 お互いが動くタイミングを計っている。俺はクソジジィの呼吸を感じ心静かにクソジジィを見据えているが、クソジジィは呼吸が荒く額からダラダラと玉のような汗がしたたり落ちる。

 最初に動いたのは俺ではなく、クソジジィだった。俺と対峙しているのが我慢できなくなったようだ。

「死ねっ!」

 クソジジィが手を振ると床から石の槍が飛び出してきた。いままで土だったが、今度は石か。

「こんなワンパターンの攻撃で俺を倒せると思っているのか?」

 俺は石の槍を躱しつつクソジジィに接近して黒霧で切りつけた。

「ぎゃっ!?」

 その時、クソジジィが石の壁を出してきたので、残念ながらクソジジィの胴体を真っ二つにすることはできなかった。


 石の壁に線が入り数秒後にはその線から石がずり落ちた。

 見るとクソジジィは腹部から出血していて蹲っていた。

「石壁なんて出して中途半端に防御するから苦しむんだぞ」

「く、くそ……がはっ……」

 クソジジィは口から血を吐き出した。どうやら腹部の傷が内臓まで達していたようだ。


「おのれ……許さぬ……許さぬぞ!」

「それは俺の言葉だ」

 いい加減クソジジィとの会話にも飽きてきたので、俺は黒霧を構えた。

 先ほどからクソジジが逃げようとしているのは気配で分かっているが、この大神殿には俺の【完全結界術】が張ってあるのでクソジジィが逃げることはできない。


「ツクル君!」

「おう、一ノ瀬か。外はもういいのか?」

「うん、大丈夫」

 俺と二人が喋っていると、クソジジィは懐から何かを取り出して口へ放り込んだ。

「何を飲み込んだか知らないが、それで生き延びれると思うなよ」

「くくく……はーーーっははは! まさかわしがこの薬を飲むことになるとはな……」

「なんだか自信ありげだな? もう少しは俺を楽しませてくれるんだろうな?」

「ほざけ小僧が!」

 どんな薬を飲んだかは分からないが、クソジジィはものすごく強気になった。


「ぐががっが……」

 クソジジィが苦しみ始めたと思うと、両手両足の筋肉があり得ないほど膨張し、続いて腹部、胸、首が膨張していく。

 なくなっていた左腕が生えてきて、さらに腹部の傷もすでに塞がっている。俺の焼肉のような効果があるようだが、俺の焼肉には筋肉の膨張効果はない。


「これは……」

「どうしたんだ、一ノ瀬」

「ツクル君が私を助けてくれたあの日、こんな化け物がいたのを覚えている?」

「……あぁ……あれか」

 猿山たちが化け物になっていたな。

「九条君が猿山君たちに薬を飲ませたら、あんな姿に変わってしまったの……」

「ほう、すると、今クソジジィが飲んだ薬は……」

「その通りだ! 我の力を数倍に跳ね上げてくれる秘薬だ! がーーーっははは!」

 勝ち誇って鼻の穴を広げている顔がめっちゃムカつく。もう一回切り落としてやろうかな。

「ぐぎゃっ!?」

「あ、思わずぶっ飛ばしてしまった……」

 クソジジィは俺に殴り飛ばされて数メートル地面を転がった。

「ま、まだ薬の効果が完全に体中にいき渡っていないのに……」

 そんな悲しそうな顔をするなよ、俺が悪いみたいじゃないか。てか、鼻が潰れているぞ、くくく。


「ツクルさんは容赦ないですね」

 アリー、俺は容赦しているぞ。そうじゃなかったら、黒霧でぶすりといっているからな。

「ご主人様は我が道をいくのです~」

 間違っていないだけにカナンに反論できない。

「ツクル君だもんね……」

 一ノ瀬は俺をなんだと思っているんだ?

「あのような顔をするクソジジィさんが悪いのです。私であれば、顔を破壊するほど殴っていたと思います」

 そうだよな! うん、ハンナは分かっているじゃないか。


「くそ! このわしがあのような若造にいいようにされるとは!」

 おいおい、今さらだろ?

「その若造に引導を渡されるんだ、ありがたく思えよ」

「ふざけるな! もう許さんぞ! 完全体のこのわしを怒らせたお前たちが悪いのだ!」

 完全に変形が終わったようでクソジジィは立ち上がって、その盛り上がった筋肉に力を込めた。てか、猿山たちは顔も化け物のようになっていたのに、クソジジィの顔は変わっていない。

 いや、少し世紀末覇者のような顔になっているが、猿山たちのように元の面影もない状態ではない。


「てめぇ、猿山たちの薬と自分が飲んだ薬に差を持たせたな?」

「ふん、あの者どもはただの実験体だ。完成したこの薬をあの愚か者どもが飲んだ薬と同じだと思うなよ!」

 そんなこと言われても所詮はクソジジィだろ? ピンとこないんだけど?

「………」

 俺がどう答えていいか分からずにしていたら、クソジジィがさらに胸を張って勝ち誇った顔で俺を見下ろしてきた。

 こいつ、筋肉が大きくなっただけではなく、背まで大きくなっていて三メートルくらいになっていやがる……。


「今さら後悔しても遅いぞ! あの世で悔め!」

 クソジジィが床を蹴ったら床に小さなクレーターができた。その勢いで俺の目の前にくると俺をぶっ飛ばそうとしてきた。

「ぎゃぁぁぁっ!?」

「おい、その筋肉は見せかけか?」

 俺はクソジジィが伸ばしてきた右腕を黒霧で切り飛ばした。たしかに先ほどまでより手応えはあったけど、俺には誤差範囲だ。


「な、なぜだ!?」

 クソジジィはなくなった右腕を押さえて、涙と鼻水を流しながら俺を睨んできた。

「いや、お前、弱すぎだろ? 元が弱いから少し強くなったところで俺にしてみれば誤差範囲の弱さだぞ」

 たしかにパワーは上がったかもしれないが、隙だらけなんだよ。

 生死をかけた戦いをしていないからそんなていたらくなんだぞ。

「ぐぅ……」

 そんな悔しそうに唇を噛むなよ。クソジジィがそんなことをしても可愛くないからな。

「もう飽きた。そろそろ死んでもらおうか」

「ひぃっ」

「他人をあてにするからお前は弱いんだよ!」

 クソジジィの左肩に黒霧を突きたてた。

「ぎゃぁぁぁっ!?」

 黒霧をゆっくりと抜き、クソジジィの左足を切り飛ばす。

「ぐぎゃっ……」

「言っておくが、俺はもっと酷い目に遭ったが、それでも生き残ってこうしてクソジジィの前に現れたんだ。お前ももっと足掻けよ」

「うぅ……」

 クソジジィは左足を切り飛ばされて立ち上がれずに床に座りこみ、涙と鼻水を流しながら情けない目で俺を見てくる。

「俺が受けた痛みや苦しみは、今お前が受けているものよりはるかに大きなものだった」

 クソジジィの左足はすでに再生を始めている。あの薬は再生も促進させるようだ。まぁ、俺の焼肉のほうが再生効果は高いけどな。


「お前は強い奴と戦ったことがないのか? なんでそんなに無様なんだよ?」

「く……我らエンシェント種以上の種族など……」

「そんなことを言っているから弱いんだよ。もっと強い奴と戦わないと人生を損しているぜ」

 右腕を切り飛ばし、半分再生した左足を再び切った。

「それにその姿になったせいで楽に死ねるチャンスを自分で潰しているんだぞ」

 左腕を切り落とす。

「がっ!?」

「切り落としても再生するから、お前の苦しみを長引かせるだけなの分かるか?」

 右足も切り落とす。これで両腕両足を切り落としたが、再生しているので切り口から肉が盛り上がっていく。


「俺が拷問しているように見えるだろう? ちょっとは俺のことを考えろよ」

 再生した左足と左腕を切り落とした。

「ぎゃぁぁぁっ!?」

「叫んでないでなんとかしようと思わないのか?」

 同様に再生した右腕と右足を切り落とした。

「あが……うぅ……」

 本当に俺が拷問しているようで不本意だ。だけど、再生するんだから俺が悪いわけじゃない。


 何度も両腕両足を切り落としていたら、クソジジィが徐々に小さくなってきているのに気がついた。

「お前、小さくなってるぞ? 薬が切れかかっているのか? ちっ、このくらいで壊れてんじゃねぇよ!」

 虚ろな目で宙を見つめているクソジジィからは反応がなくなってしまった。

 黒霧でクソジジィの頬をつっついてみたが、まったく反応しない。

「そういう時はこうするんだよ!」

 俺はクソジジィの口に細切れの焼肉を放り込んで飲み込ませた。

 するとクソジジィの体がビクンビクンと何度か跳ねて体が完全に元の大きさになって両腕両足が元通り生えてきた。


「ほれ、起きろ!」

 クソジジィを蹴り飛ばして起こしてやる。

「うぐ……」

 目を覚ましたクソジジィがもぞもぞと上半身を起こした。

「ここは……」

「おい」

「ひぃぃぃ」

 ビビッてんじゃねぇよ!


「ツクル君、、クソジジィさんは完全にツクル君にトラウマを抱えてしまったみたい」

 後ずさって小便を漏らしてブルブル震えているクソジジィを見ると、なんだかあほくさくなってしまった。俺はこんな奴に何を期待していたんだろうか? もっと熱い戦いか? いや、今の俺とこいつでは差は明らかで戦いにならないは分かっていたはずだ。

 なら復讐のためにクソジジィを殺すことか? 最初はそうだったかもしれないが、こんな姿を見たらその気もなくなる。

「カナン」

「はいなのです」

「クソジジィをあの誰もいない世界に追放できるか?」

【時空魔法】で異世界にいけるのか、確認した時にいった異世界へクソジジィを送ってやろうと思う。

「できるのです」

「だったら、クソジジィをその世界に追放してくれ」

「殺さないのですか?」

「なんだかバカバカしくなったからもういいや。どの道、クソジジィが死んだ後の新しいエンシェント種は追放する予定だったんだ。こいつを追放したって構やしない」

「はいなのです! 【時空魔法】ちゃんお願い!」

 カナンが燃え盛る大賢者の杖を二回、三回と振ると、クソジジィを取り囲むように魔法陣が現れた。

 クソジジィは俺の顔と魔法陣を交互に見比べて逃げようとしているようだが、この大神殿には俺の【完全結界術】で結界を張っているので、地面に潜って逃げることはできない。


「あばよ。二度と会うことはないと思うが、会ったらぶっ殺すからな」

「ひぃぃぃっ!?」

 俺の笑みを見たクソジジィが情けない声を発したのには少し傷ついた。

「それでは、さようならなのです~♪」

 カナンのかけ声は気が抜けそうになるが、カナンの魔法はこの世界随一だ。

 魔法陣がクソジジィを取り込み、眩しく発光して消えた。大神殿に残された俺たちを静寂が包む。

 やり切った感はない。だからと言って後悔もない。ただ、少しだけ虚しさが残った感じだ。


「さてと、帰るか……」

 静寂を破ったのは俺だ。あまり長いことクソジジィの余韻に浸っているのもムカつくし。何よりあのクソジジィのことをいつまでも考えていると吐き気をもよおしてきそうだ。

 これでオレの復讐は終わった。これからは復讐という後ろ向きな考えではなく、前を向いて歩んでいきたい。そう、皆と一緒に歩んでいこう。


「皆、ありがとう。そして、これからもよろしく頼む」

「ご主人様にお礼を言われると、なんだか背中がムズムズします~。でもカナンはいつまでもご主人様と一緒です!」

「このハンナ、ご主人様に捨てられないかぎり、永遠にお傍にお仕えいたします」

「うふふ、このアルテリアスは半ば家を捨てたのです。ツクルさんの傍以外にいくところなどありません。これからもよろしくお願いしますね、ツクルさん」

「ツクル君の傍にいたい。今は素直にそう言えるわ。よろしくね、ツクル君」


 

コミカライズ6話本日公開。

マグコミへGO!


ガベージブレイブは本話をもって完結になります。

長らくのご愛顧、ありがとうございました。

今後はその後談を投稿するかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。

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