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ガベージブレイブ(β)_073_忍び寄る闇2

 


 到着したのは、海を見下ろす山の中腹だ。

 ここら辺は硫黄の臭いと湯気がいい感じで出ている。

 周囲には人が住んでいる気配もない。


「カナン、あの湯気のところに少しずつ穴を掘ってくれるか。拳くらいの細い穴でいいから」

「任せてくださいなのです!」

 紅き賢者の杖を掲げると、それを振り下ろした。

「えい!」

 そのかけ声でドリルのような物が山肌に刺さり、拳大の穴を掘り進めていく。

 土を巻き上げていくが、穴が小さいので土の量は多くない。

 一分程すると、穴の中から何か音が聞こえてきて、すぐに穴からお湯が噴き出した。

「お湯が出てきたのです!?」

「カナンさん、これが温泉よ」

 一ノ瀬のテンションがさらに上がる。

 そのお湯を【詳細鑑定】で確認してみる。


 温泉の湯 : アルカリ性単純硫黄温泉。美肌効果のある温泉で、源泉の温度は六十度。


 これは一ノ瀬たちが望んでいた温泉のようだ。

「本当!? 一回目で当てるなんて、すごいね!」

 一ノ瀬は嬉しそうだ。こっちの世界にきてから温泉なんて夢のまた夢だったからな。

「カナン、次はあのお湯が出ている穴を石で囲んで、少しだけ流せるように上の方に穴を開けておいてくれるか」

「はいなのです!」

 俺の【等価交換】を使ってもいいけど、カナンの魔法の方がこういう時は便利だ。


 カナンのおかげで、源泉から少し下に温泉を引いて浴槽ができあがった。

 今は完全に露天風呂だが、これだと女性陣と俺が一緒に入ることになるので、二つ目の浴槽を造ってもらっている。

 あと、浴槽を囲うように建物を立てていく。これは俺がやっている。


「よし、できたぞ!」

「皇湯って……」

 脱衣所の入り口に暖簾をかけているが、それに皇湯と書いておいた。

「風情が出ていいだろ?」

「そうだね、なんだか日本に戻ったような気になるよ!」

「さぁ、入るぞ!」

「うん!」

 脱衣所は男女別だし、浴槽も別だ。


 裸で温泉が溜まった浴槽を見ると、感慨深い。

 入る前に全員に【クリーン】をかけているので、汚れはない。だからかけ湯もせずに飛び込んだ。

「やっほーっ!」

 ジャブンとお湯に浸かった瞬間、飛び上がった!

「あっつ!?」

 お湯の温度を【詳細鑑定】で確認してみたら、四十三度だった。

 いきなり入るには、ちょっと熱かった。

 だけど、このくらいの温度なら足から入ってゆっくりと慣らしていけば、問題ない。

 肩まで浸かると、お湯の成分が体に染みこんでくるような気になるから不思議だ。

 これも、硫黄の臭いと少し白色に濁ったお湯ならではの情緒ってやつだろう。

 これで雪でも降っていれば、風情があっていいんだがな。


「ご主人様~。いい湯です~」

 壁一枚を隔てた先には四人がいる。しかもすっぽんぽんで。

 男のロマンとしては、壁をよじ登って覗きをするところだが、それがバレた時が恐ろしい。

 別に四人から桶を投げられようと大したことはないが、白い目で見られるのがこの上なく嫌なのだ。

 四人に白い目で見られることで快感を覚える特殊な性癖は、俺にはない。

 それに俺はこのお湯を堪能していたいのだ。


「ああ、気持ちいいな! やっぱり温泉は最高だ」

「ツクル君。きてよかったね!」

「一ノ瀬も久しぶりの温泉だ、楽しめよ」

「うん!」

「ご主人様、お背中を流しましょうか」

 お願いしますと、言いそうになったが、それでは色々とヤバいことになると思って思いとどまった。

「は、ハンナもゆっくりと浸かればいいぞ」

「ツクルさん、私たちと一緒に入りませんか?」

 入りたいが、入っては俺の理性が崩壊しそうだから、ダメだ。

「あ、アリーさん!?」

 一ノ瀬がきょどっているようだ。

「うふふ、今はダメでもいずれ一緒に入りましょう」

「そ、そうだな……」

 その後は壁越しに四人と会話を楽しみながら、温泉を楽しんだ。


「いい湯だったね! 肌がすべすべになってるよ!」

 一ノ瀬は浴衣の袖の先から腕を出して見せてきた。

 指で押したら押し返されそうな張りと、きめ細やかな白い肌がなんとも美しい。

「綺麗な肌だ」

「え!?」

「ん? どうしたんだ、一ノ瀬?」

 なんだか一ノ瀬の顔が赤い。温泉に長く浸かっていたから、少しのぼせたのか?


「ご主人様~。カナンの肌はどうですか!?」

 カナンが力こぶをつくって見せてきた。

 肌を見せるのに、その力こぶはおかしいと思う。

「うん、カナンも綺麗な肌をしているぞ」

「やった~なのです!」

「ご主人様、ハンナの肌はいかがですか?」

 ハンナが浴衣の隙間から太ももをチラリと見せてきた。

「ぶふっ!?」

 その柔らかくて美味しそうな太ももに視線が釘づけだ!

「と、とても綺麗だと……思うぞ」

「ありがとうございます。ご主人様」

「ツクルさん、私の肌は?」

 アリーから声がかかるとは思っていたが、振り向いたら視線が釘づけだ……。

 何に釘づけかって? そりゃー、アリーの浴衣がはだけた胸元に決まっているだろ!?

 見えそうで見えないギリギリのラインだ。これでガン見しなかったら男ではない!

「い、いい……すごくいいと思います……」

 俺ってもしかして、遊ばれている?

 でも、こんな遊びならウエルカムだよ!


 ▽▽▽


 思わず、旅館を建ててしまった……。

 いや、だってさ、温泉といえば、旅館じゃね? 【等価交換】の浪費だなんて、思わないぞ。結構、力を込めて建てた。


「老舗旅館!?」

「ふふふ、一ノ瀬よ。これが俺の旅館に対するイメージなのだ!」

「たしかにイメージは間違っていないけど、誰がこの旅館を管理するの!?」

「そこは大丈夫だ、ちゃんと考えているぞ!」

 俺は【精霊召喚術】で屋敷妖精を召喚した。【精霊召喚術】なのに妖精はおかしいと思っているだろ?

 本当は精霊だけど、屋敷精霊より屋敷妖精の方がしっくりくるじゃないか! ネーミングや呼び方のニュアンスによるものである!


「マスタ~、およびですか~」

 目の前に現れたのは、可愛らしい容姿の十歳くらいの少女だ。

 別に俺の趣味じゃないぞ、妖精といったら少女かな? って思ったら、こんな可愛らしい和服の妖精が出てきたんだ。

 和服にしたのは、純日本風の旅館の管理をしてもらうからで、俺の趣味ではない。

 美しい緑色の髪の毛を背中の真ん中まで伸ばし、サファイアのように青い瞳が特徴の少女だけど、屋敷(旅館)の管理に必要なスキルは持っているぞ!

「お前は今からブラウニーだ。この旅館をしっかりと管理してくれ」

「は~い」

 容姿は子供だし、言葉遣いも子供っぽいので、座敷童っぽく見える。

 そんな彼女にブラウニーと名づけたのは、イギリスの伝承なんかにある妖精が、ブラウニーっていうからだ。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 氏名:ブラウニー

 種族:ハウスマスター レベル三百

 スキル:【家事III】【屋敷魔法III】【物理攻撃耐性II】【魔法攻撃耐性II】

 能力:体力B、魔力S、腕力C、知力B、俊敏B、器用S、幸運A

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 家事 : 家の仕事は全てお任せ。

 屋敷魔法 : 屋敷を維持管理するための魔法。


「よし、宴会するぞ!」

「やった~!」

「お手伝いします!」

「旅館と言えば宴会だよね!」

「うふふ、楽しそうですね」

 カナン、ハンナ、一ノ瀬、アリーが楽しそうだ。

「ブラウニー、料理は俺が用意するから、ハンナと宴会の準備を頼む」

「は~い」

「あ、私も手伝うよ」

 ふよふよと空中に浮く和服の少女とハンナ、そして一ノ瀬が旅館の奥へ消えていった。


「さ~って、俺は食材を海で獲ってこようと思う」

「それでしたら、私も一緒についていきます」

「は~い、カナンもいきま~す」

 俺の方にはアリーとカナンがついてくることになった。

 そういえば、アリーの成長は話には聞いたが、実際には見ていなかったな。

「せっかくだから、アリーの力を見せてくれ」

「分かりました」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 氏名:アルテリアス・エイバス

 ジョブ:言霊師 レベル三百

 スキル:【言霊III】【歌唱III】【ソニックヴォイスIII】【魔法攻撃耐性III】【物理攻撃耐性III】【細剣術III】【囁きIII】【拡声III】

 種族スキル:【聴覚強化III】

 能力:体力B、魔力S、腕力A、知力S、俊敏A、器用B、幸運B

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 拡声 : 発した声を広範囲に届ける。


 アリーは魔法系のスキルが覚えられなかった。その代わり、【細剣術】という近接戦闘スキルを一つだけ覚えることができた。

 後は耐性スキルと【囁き】を俺の料理で覚えた。

 レベルアップで唯一増えたのが【拡声】で、この【拡声】によってより遠くへ声を届けることができるようになっている。


「よし、ここでいいか」

 魔法の絨毯で海へ出て、魚の反応が多い場所の上空で止まった。

 魔法の絨毯は本当に便利で、高速飛行もできればホバリングもできる。

「この下に魚がいる。アリー、できるか?」

「問題ありません!」

 アリーは魔法の絨毯の縁から頭だけ外に出す。

 四つん這いになっているので、歌姫の衣装のスカートの中が見えそうで見えない……。目に毒だ。

「ツクルさん、見てもいいのですよ」

「なななな、何を見るんだ!?」

「うふふふ、見るだけではなく、触ってもいいのですよ」

「そ、そんなことより、魚を獲れ!」

 俺は盛大に目を彷徨わせていたと思う。

 カナン……アリーのマネをしなくても……。


 

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