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ガベージブレイブ(β)_072_忍び寄る闇1

2巻発売から1カ月たちました。

今からでも買ってください!

よろしくお願いします。

 


 さて、イスラフェルをトップにした、ドッペル軍団(ドッペルゲンガー軍団を略している)は順調に人族至上主義を侵食している。

 特に人種差別が酷かったのが、テレサ法皇国、アルファイド王国、ルク・サンデール王国、ラーデ・クルード帝国だった。

 この四カ国は首脳陣だけではなく、ほとんどの貴族を総入れ替えしている。

 その他のソル大公国、イプス王国、東ブリタニア共和国、ガーマ王国、ペータル王国、デル王国はエンゲルス連合国と同じようなものだ。

 この六カ国は首脳陣を総入れ替えする。


 先に挙げた四カ国はエンゲルス連合国なんて目じゃないほど酷い人種差別をしていたので、表現するのは控えることにする。

 残ったオース海洋王国、サーガニア英雄国、ブリタニア王国、ファイルズ王国は入れ替えはあるものの、数は少ない。

 この国々はどれも海に面した国で、大国のオースと海上交易で繋がっていて、オースの影響力が強い国だ。

 海に面していても、エンゲルス連合国やイプス王国のように、あまりオースの影響を受けていない国もあるが、これは海上交易があってもルク・サンデール王国の影響が強い国だからだ。


 ドッペル軍団の報告でクソジジィのことも分かってきた。

 クソジジィは予想通り、ラーデ・クルード帝国の神殿にいるが、その神殿は多くのオールド種が守っている。

 小国のエンゲルス連合国はそうじゃなかったが、各国の代表者のほとんどはクソジジィの息がかかったオールド種だったり、オールド種が近くにいた。

 人族以外の人種が普通に暮らしていたオースでさえ国王はオールドヒューマンだった。まぁ、大国の代表者なのでクソジジィの息がかかっていても不思議ではないが、まさかオールドヒューマンだとは思わなかった。

 ちなみに、ルク・サンデール王国の国王とラーデ・クルード帝国の皇帝もオールドヒューマンだった。

 そんなオールドヒューマンたちでも、ドッペルドッペルゲンガーのことには敵わなかったようだ。

 イスラフェルが召喚する眷属ドッペル君のレベルは三百二十が最高であり、対してオールドヒューマンは三百未満。

 レベルではギリギリ勝っているが、大国を預かっていたオールドヒューマンはなかなかの猛者だったようで、存在を乗っ取るのも苦労したと聞いている。

 それでもちゃんと存在を乗っ取っているのだから、ドッペル君たちを褒めてやらないとね。


「それで、クソジジィの方はどうだ?」

「オールド種との連絡が途絶え、相当焦っているようです」

 アリーの提案で、ベーゼはクソジジィの監視と人族以外の種族の国と魔族の監視をさせている。

「アルスとホーメンの方は?」

 アルス獣王国とホーメン帝国は人族以外の国だ。

 アルスの方は国名でも分かるように獣人の王が治めているし、ホーメン帝国はドワーフの女帝が治めている国だ。

 共にラーデ・クルード帝国とは国境を接している国なので、動きがあるとクソジジィ包囲網の邪魔になりそうだから監視している。


「共に魔族が介入したことで様子を見ながら、先の戦いの傷を癒しているといった感じでしょう」

「それなら、いい。で、魔族は?」

 魔族と一括りにいっているが、本当は巨人族と魔族だ。

 この二種族は同盟関係ではなく、巨人族が魔族を従えている感じらしい。

「ラーデ・クルード帝国軍と衝突しましたが、今回は奇襲ではなかったことから、戦況は互角といった感じです」

「そうか。動きがあったら、また知らせてくれ」

「承知」


 今度はアリーに視線を持っていく。

「次はどうするのがいい?」

「そうですね、魔族の方はできるだけ大人しくしておいてほしいですね。邪魔なようなら、魔族の方もイスラフェルさんにお願いしましょう」

「イスラフェルにか? ベーゼの方でもいいんじゃ?」

「死霊にしてしまっては、人族以外の国が警戒をすると思います。ですから、いまはイスラフェルさんの方がいいと思います」

「確かにドッペル君が乗っ取った人族と死霊では、どう考えても前者の方が使い勝手がいいな。分かった、その件はアリーの判断でイスラフェルを動かしてくれ」

 ベーゼの方は隠密性においてはドッペル君以上だが、生きた人間に見た目が受け入れられないのは理解できる。


「次の一手は人族至上主義の国々に、人族至上主義を放棄させます。その際、ラーデ・クルード帝国にはそのまま人族至上主義でいてもらいます」

「ん? なんでだ? 全部の国に放棄させた方が手っ取り早いんじゃないか?」

「そうでもありません。ラーデ・クルード帝国以外の十四カ国と他の国々が手を取り合うには、敵が必要なのです」

「敵……か……それなら魔族でもいいんじゃ?」

「魔族は全ての人間の敵として認識がありますが、人族至上主義から受けた迫害とは種類が違います」

「なるほど、そういうことか。十五カ国が自主的に人族至上主義を放棄するとわだかまりが残るが、人族至上主義の代名詞でもあるラーデ・クルード帝国を人族とそれ以外の種族が手を取り合って滅ぼせば、わだかまりも少なくて済むわけだ」

「その通りです。ラーデ・クルード帝国には人々の恨みをできるだけ多く抱えて滅んでもらいます」

「それで、十四カ国が人族至上主義を放棄するのはいつごろになりそうだ?」

「はい、半月から一カ月後といったところだと思います。その際には魔族には一度撤退してもらおうと思っています」

「ラーデ・クルード帝国を皆でボコボコにするために、魔族は邪魔ってわけだな?」

「うふふふ、そうです」

「アリーも悪よのぅ……はーっははは!」

「ご主人様が黒いのです……」

 カナン、俺は黒が好きだ。俺の服装は黒だし、相棒も黒霧だぞ?


 こんな感じで俺たちによるクソジジィに対する嫌がらせの準備は着実に進んでいく。

 というわけで、半月から一カ月はのんびり過ごそうということになって、温泉にでもいこうと思ったわけだ。

 一旦、ことが起きたら忙しくなるので、その前に骨休めをしようと思ってのことだ。

 振り返ってみると、俺もこの世界に飛ばされてから、休む間もなく色々とやってきた。

 それにカナンとハンナには色々と無理をさせてきたから、温泉にでも入ってリフレッシュをさせてやろうと思ったんだ。


「温泉!?」

「日本人だから温泉は心の癒しだよな、一ノ瀬」

「うん! 温泉大好き! でも、この世界に温泉なんてあるの?」

「なければ、作ればいい。温泉の出そうな火山方面にでもいけば、湧いていると思うけど」

「そうだよね! うん、温泉いこう!」

 一ノ瀬はノリノリだ。

 だけど、カナン、ハンナ、アリーは温泉の意味が分からないようなので、一ノ瀬が三人に温泉のよさを語って聞かせている。


「お肌にいいのですか!?」

「美肌効果があるのでしたら、入ってみたいです」

「女性にとって、お肌が若返るのは嬉しいことです」

 三人ともお肌のことを気にしているようだけど、温泉の泉質によっては効果ないぞ。

「ご主人様、お肌の温泉いきましょう!」

「ご主人様にハンナのお肌を見ていただかなくては……」

「うふふ、ハンナさんの言う通りですね。ツクルさん」

 えーっと、俺はなんて答えればいいんだ?

 うん、聞かなかったことにしよう! そうしよう!


 火山については人族至上主義の国々にドッペル軍団や死霊軍団を送っているので、火山の情報や、火山のそばに湧く温かい水の情報は沢山集まっている。

 エンゲルス連合国から一番近いのはイプス王国だ。

 イプス王国はエンゲルス連合国の南にある国で、火山が多い国らしい。

 これは期待できると、俺たちは魔法の絨毯に乗って出かけることにした。


 転移門を使って向かうと速いと思うだろ? そうじゃないんだな。

 イプス王国の転移門が設置されているのは王都近くなんだけど、その王都がイプス王国の南端にあるので、火山帯までけっこうな距離があるんだ。

 だから、魔法の絨毯で飛んでいっても時間的にはあまり変わらないのだ。

「うわ~、海の近くなんだ~」

 一ノ瀬のテンションが上がっていく。

「海が近いので魚が美味しいのです!」

 カナンは食欲方面のテンションが上がっていく。

「なんだか変な臭いがします……」

 それは多分、硫黄の臭いだぞ、ハンナ。

「魔法の絨毯の旅がこれほど快適とは思いませんでした」

 乗り心地重視だからな。アリーが気に入ってくれたら嬉しいよ。


 

異世界転移者のマイペース攻略記の2巻も発売になっています。

こちらもよろしくお願いします。

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