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ガベージブレイブ(β)_071_オース海洋王国3

皆さん、ガベージ2巻買ってやってください。

 


「目標、視認! 目標、視認!」

 水深はおそらく四十メートルほど。

 暗くもなく、明るくもない、この海の中で水兵の一人が敵を発見したようだ。

 俺はゆっくりと海中の散歩を楽しんでいるのだから、静かにしてほしいものだ。

 団長以下、大勢の水兵が忙しく動き回っている。まぁ、がんばれ。

「タロー殿! 何をのんびりお菓子なんか食っているんだ!? てか、どこからそんな菓子を出した!?」

 うるさいな。俺は今、優雅に海中の旅を楽しんでいるんだ。静かにしろよ。


 港で俺が見た沖に泊まっていた海賊船が近づいてくる。

 海賊船もドーム状の膜があるし、よく見るとこの軍艦によく似ている。どうやら設計思想が同じ船のようだ。

「やはり……」

 横にいる団長が呟いたその言葉は、あの海賊船の形を見てのものだ。

「海賊船がこの船の設計図でも手に入れたのか?」

「……いや、違う」

 団長はにがにがしい表情だ。

「この話は内密に頼むぞ。……この船の設計に携わった技術者が数人行方不明になっているのだ」

「へ~、つまり、その技術者があの海賊船を造ったってわけか」

「おそらく……」

「てか、数人の技術者だけで、あの船が造れるのか?」

 船を造るのに数人の技術者がいるだけで済むのか?

「いや、大規模な造船所や多くの船大工が必要だ」

「それなのに、なんで海賊が手に入れれるんだよ?」

「アルファイド王国が絡んでいる可能性が高い。あくまでも予想だが……」

「たしか、オースの東にある国だよな?」

「そうだ。あの国は帝国の息がかかっているからな。虎の威を借るなんとやらだ」

 人族至上主義といっても、色々と確執があるようだ。

 そういった内情もイスラフェルとドッペルゲンガーたちが支配すれば分かるだろうが、あまり興味ない。


 さて、海賊船がかなり迫ってきているので、水兵たちはかなり慌ただしく動いている。

「バリスタ設置完了!」

 大きな弩が甲板に設置された。

「全速前進! 突っ込むぞ! 総員何かに掴まっていろ!」

 船長が大声で指示を出した。

 突っこむってことは、海賊と根性比べをするんだろ?

 いいね~、こういうの好きだ。わくわくする。


 海賊も引く気はないようで、どんどん海賊船が近づいてくる。

「タロー殿、投げ出されるなよ」

「団長こそな」

 団長も楽しそうだし、船長や水兵の顔も笑顔だ。こいつら……海の男だねぇ~。


 海賊船との距離は……二十メートル……十・九・八・七・六・五、ここで海賊船が船首を振って方向を変えた。

 それを見た船長が思いっきり舵を回した。根性比べは船長の勝ちだ。

 船の方は正面衝突は避けたが、お互いに船の側面が擦れあい、大きな音を立てて揺れた。

「バリスタ、撃て!」

 揺れる中で、船長が命令を出した。

 水兵もその命令でバリスタを撃ち、海賊船の側面にバリスタがめり込んだ。

 あの衝撃や揺れのなかでよくやるものだと感心する。

 バリスタには鎖が繋がれているので、巻き上げ機が激しく回転する。

「野郎ども! バリスタを巻き上げろ!」

 完全にすれ違ったところで、船長が命令して水兵が回転する巻き上げ機を止める。

 すると、船に大きな揺れが起き、鎖がピーンと張る。

「おら! 気合入れて巻け!」

 水兵が六人がかりで巻き上げ機を巻いていくと、鎖で繋がっている海賊船が引き寄せられる。

 水夫がどこかで聞いたような歌を歌いながら楽しそうだ。

 海賊船も必死でバリスタを外そうと船体を振っているようだが、しっかりと船体にめり込んでいて取れる気配はない。


 そうこうしているうちに海賊船がすぐそばまで引き寄せられてきた。

「白兵戦よーい!」

 船長が大声で叫ぶと、巻き上げ機を巻いている水兵以外の水兵たちがカットラスのような比較的短い反った剣を抜いた。

「面白くなってきたぜ!」

 団長も剣を抜いて、うずうずしている。脳筋め。

 そういう俺も人のことは言えないけどな。

(相棒、いくぞ)

(仕方がないな……)

 海賊相手では歯ごたえがないので、黒霧は嫌がると思っていたけど、声のトーンは少し楽し気だった。

 黒霧も面白い光景をみることができて、楽しいのだろう。


 船体が再びくっつくほどの距離にきた。

 ドームとドームがくっつきあい、一つになった。

「野郎ども、ぶち殺せ!」

「いくぞ、おらっ!」

「殺せぇぇぇっ!」

 船長を始め、水兵が海賊船に乗り移っていく。

「タロー殿、お先にですぞ!」

 団長も海賊船に飛び移った。

「なら、俺もいくかな」

 黒霧を抜き、トンと船の縁を蹴って海賊船に飛び移った。

 目の前に現れた汚らしい海賊を切り捨てると、黒霧から嫌そうな感情が流れ込んできた。

「結局、嫌がるじゃねぇかよっ!」


 俺は歩き出した。

 せっかくなので、船の中を見て回ろうと思って、目の前にあった扉を蹴破ったら、吹き飛んだ扉が向こう側にいた海賊に当たったようだ。

 そんなことは気にせず、扉を通って中に入ると階段があったので、下りてみる。

「死ねぇっ!」

 海賊が出てきたので、ヤクザキックで吹き飛ばしたら、壁にぶち当たって血をまき散らした。

「いやだねぇ~、汚いったらありゃしねぇ」

 その横にいた海賊がガクガクと震えている。

 俺の顔を見て震えるなんて、失礼なやつだな。

「おい、武器を捨ててそこに跪け。動いたら殺す」

「ひゃいっ!?」

 素直でいいじゃねぇか。でも、海賊になった時点でアウトだ。

 ガクブルの海賊に【闇魔法】をかけて寝かせておく。


 奥へ進むと、多くの女性が一つの部屋に閉じ込められていた。

 どうやらどこかへ売り飛ばされるために攫われた女性たちのようだ。

「俺はオース軍の関係者だ。ここに海賊はいるか?」

 フルフルと首を横に振る女性たち。

 怯えているようだが、俺はそんなに怖くないぞ?

 ん? 気の強そうな少女がジッと奥を見つめている。まるで、俺に気づけと言わんばかりだ。

 なるほど、そういうことか。

「分かった、お前たちはここから出るなよ」

 俺はその部屋から出て、しばらく待つ。

 すると、部屋の扉が開いて男が出てきたので、後ろから黒霧を男の首筋に当てる。

「よう、お前はどう見ても女じゃないよな?」

 海賊にも見えない。どちらかというと、貴族のような服だ。

「た、助けてくれ!? 私は攫われたんだ、頼む、助けてくれ!」

 俺は黒霧を引き、男の前に出た。

 オース人には見えないな。どちらかというと、日本人のような肌の色だ。

「そうか、なら、オース軍で保護してもらう。部屋に戻れ。今度、部屋から出たら切り殺されても知らないぞ」

 俺は男に背中を向けて立ち去ろうとした。

「あ、ありがとう!」

 そこで、俺は男に蹴りを入れた。

 男は懐から短剣を出して俺を刺そうとしたのだ。

 男は蹲って失神したが、死んではいない。どう見ても海賊ではないので、面白い情報が聞けるかもしれないと思って【手加減】をちゃんと発動している。

 まぁ、肋骨とか数本折れていても俺のせいじゃない。こいつが悪いんだ。


 次の部屋にいく前に団長がやってきたが、蹲っている男を見て驚いている。

「この男は……」

「どうした?」

「うむ、名前は知らぬが、この男には見覚えがある。たしか、アルファイド王国の外交官だったはずだ」

「ふ~ん、団長が言っていた国だな。そいつは引き渡すから、好きに使えよ」

「うむ、助かる!」


 団長に男を引き渡して、もっと奥へいく。

「ここだな」

 部屋の中に気配があるので、扉を蹴破ろうとしたら、扉が爆発した。

 もちろん、俺は避けている。まぁ、当たってもダメージはないが、こういうのは気分だ。

「ち、外したか。運のいい奴だ」

 運じゃないぞ、実力だ。

「お前が海賊のボスか?」

 フ●ク船長のように、右手にフックをつけたザ・海賊といった感じの男に聞いてみた。

「俺様のことは船長って呼べ!」

「ふむ、ボスでいいようだな」

「船長だ!?」

 そう言ってフックを振り下ろしてきたので、体を半分ずらして避けようと思ったら、フックが伸びてきた。

「おっと、面白い玩具だな?」

 そんなものに当たるわけもなく避けきったら、ボスが歯ぎしりして悔しがった。


「タロー殿!?」

 団長もやってきた。

「貴様、海賊バルバロッタ!?」

 中世の地中海あたりにいそうな海賊の名前だな。

「がーははは! 泣く子も黙るバルバロッタとは俺のことだ!」

「俺は泣いてないから関係ないな」

「ふざけやがって!」

 バルバロッタが銃を取り出して俺に向けて引き金を引いた。

 バン。スパッ。

 銃から飛び出してきた鉛玉を斬り落とした。

 鉛玉なんて、俺には止まったように見えるぜ。

「「え?」」

 バルバロッタと団長が驚いている。

 いいぞ、そういう顔をされるのは楽しい。


「そんな玩具で俺に傷をつけられると思うなよ。雑魚が」

「この俺様を雑魚だと!?」

 今度は剣を振り回してきたので、剣ごとバルバロッタの髭を切ってやった。

「俺様の髭が!?」

 そんなに悲しむなよ、ほれ、きれいさっぱり剃ってやるからよ。

「「………」」

 髭だけではなく、髪の毛も剃ってやった。これで少しは清潔に見えるだろう。

「ぷぷぷ、なかなか似合っているぞ」

「タロー殿……ぷぷぷ……」

「ふ、ふ、ふざけるなっ!?」

 バルバロッタはその場に蹲って泣き出してしまった。

 面倒な奴だな。首トン。

「団長、後は頼んでいいか?」

「ああ、助かった。報酬はしっかりと出すから、楽しみにしていてくれ!」

「期待せずに待っているぜ」

 こうして、海賊騒動は終息に向かっていくのであった。めでたし、めでたし。


 

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