表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/88

ガベージブレイブ(β)_070_オース海洋王国2

 


 沖に留まっていた一隻の海賊船は、港に停泊していた二隻の海賊船が消えてなくなると、すぐにどこかへいってしまった。

 海賊たちの体がどんどん干からびていく中、オースの守備隊なのか騎士団なのかわからないが、兵士たちがやってきた。

「動くな!」

 俺を取り囲んで剣を向けてくる。

 俺はそんなに怪しい顔をしているのか? ちょっと自信なくしちゃうよ。

「間違えるな、俺は冒険者だ」

 そういうと、ギルド証を隊長っぽい奴に投げ渡した……おい、落とすなよ。


「……ごほん。Aランク冒険者!? 失礼した! ん? タロー……もしかして、漆黒の暴君か!?」

 俺のギルド証を見た隊長っぽい奴が聞き捨てならないことを言ったぞ。

「漆黒の暴君?」

「エンゲルス連合国のAランク冒険者のタロー殿ではないのか?」

「タローだが……」

「もしかして、タロー殿は自分の二つ名を聞いたことがないのか?」

「二つ名……って、なんだよ? しかも漆黒の暴君ってなんだよ!?」

「それは私に言われても。貴殿をAランクにした冒険者ギルドのギルド長が二つ名をつけて、世界中の冒険者ギルドへ通告したのだ。我らは冒険者ギルドからその報告を受けたから、貴殿のことを知っていたのだ」

 あのクソギルド長の野郎! 今度会ったらぶっ飛ばす!


「漆黒の暴君殿、それでだな、この状況について確認させてくれ」

「……その漆黒の暴君は止めてくれ。タローって呼んでくれ」

「そうか? 漆黒の暴君は恰好よくていいと思うんだがな?」

 なんで他の兵士もうんうんって頷くんだよ!?

「とにかく、タローで頼む」

「……分かった。では、タロー殿、この状況について説明を頼めるだろうか?」

「説明と言われても見たままだ。【木魔法】で海賊どもを倒した」

「確かタロー殿は剣士ではなかったか?」

 よく知っているな。情報共有といえば聞こえはいいが、個人情報がダダ洩れじゃねぇか!

「剣の方が得意だが【木魔法】も使えるぞ。こんな海賊(雑魚)などに黒霧(こいつ)を抜く必要はない」

「さすがA級冒険者殿だ。それで、海賊たちは死んでいるのか?」

「死んだ奴もいるが、まだ死んでいない奴の方が多いな」

「それなら、生かしたまま引き渡してもらえないだろうか?」

「……分かった。木はすぐに引っ込めよう」

「助かる。明日、城まできてくれるだろうか。今回の褒賞が出るはずだ」

「……分かった」

 なんだかとんとん拍子に話が進んでいくな。

 城にはいくつもりだったからいいけど、こういうのって本当に面倒だ。


 ▽▽▽


 海賊を兵士に引き渡した翌日、俺は城の前までやってきた。

 転移門は防衛上の観点から、どの国も城のそばではなく、町の郊外に設置していることが多い。

 それはオースも同じなので、城にはまだ入ったことがない。

 どう見てもインドのタージマハールのような宮殿だ。でも、タージマハールって霊廟だったはずだから、宮殿でも城でもない。

 とはいえ、今、視界の先にある立派な建物は城として認識されているので、城でいいだろう。


 門番にタローと名乗って昨日の隊長とアポがあると伝えると、門番はすぐに俺を通してくれた。

 あいつはどうも騎士団の団長で、けっこう偉いさんらしい。仕方がないので、団長と呼んでやる。

 しかし、黒霧を帯剣したままだけど、いいのかな?

 普通、こういうのって「剣を預かる」「黒霧は俺の半身だ、渡せない」などのやりとりがあると思っていたのにな。ちょっと拍子抜けだ。

 城の敷地内だけど、城には入らず、別の四階建ての建物の四階の一番奥へ案内された。


「おお、きてくれたか!」

 豪華なデスクと椅子があって、団長が偉そうに座っていた。

「どうも」

 俺は勧められていないけど、部屋の中にあった豪華なソファーに腰かけた。

 すると、団長もソファーの方にきて、俺の前に腰かけた。

「これが昨日の褒賞金だ。五千万ゴールドある。確かめてくれ」

 革袋をテーブルの上に置いたので、俺はそれをスーッと自分の方に引き寄せた。

「確かめないのか?」

「その必要はない。もし中身に不足があれば、オースの騎士団長はそのていどの男だったと思うだけだ」

「なるほど、こういうことで信用や信頼が築かれるのだな」

 ただ単に、数えるのが面倒なだけで、俺があんたを信用するとかの話ではない。断じてない。


「ところで、一つ頼みがあるんだが」

 ほらきた。こういうのがあるから嫌なんだ。

「………」

「実は、昨日の海賊の頭目がまだ捕まっていない。我々は捜索隊を組織して近海を探していたのだ。それで海賊の根城を見つけたので、これから出陣するのだが、一緒にきてくれないか?」

 面倒な話だ。が、艦隊戦ってなんだか面白そうじゃないか。

 やっぱ艦隊戦って男のロマンがある気がするんだよ。

「報酬は前金で三千万ゴールド。見事に頭目を捕まえるか、死亡が確認できたら七千万ゴールドを払おう。その他に盗賊の根城にため込まれた財宝の三割でどうだ!」

「……いいだろう」

 金はたくさんあるから、ぶっちゃけいくらでもいいが、海をいく男か……ロマンだ。


 そんなわけで、俺は船に乗り込んで大海原に出た。

「……おっそ!? 何この遅さ!」

 軍艦に乗れると思って浮ついていたけど、実際に乗ってみたらこんなものかと思えて仕方がない。

 所詮は帆船だし、軍艦と言っても木だし、めっちゃ揺れるし、もう最悪。

「何を言うか!? この船は我が国が誇る最新鋭艦だぞ! 見ろ! このスマートな帆を! これだけスマートなのに、世界最高レベルの速度を出すのだぞ! それに―――」

 団長の話は延々と続いた。俺は団長(こいつ)の前で船の悪口を言ったらいけないことを知った。


 海に出て三時間ほど、視界の先に島々が見えてきた。

「あれが海賊が潜伏している島々だ。今は周囲を警戒させているが……監視の船が見当たらないな……?」

「なぁ、あれはその監視の船じゃないのか?」

 俺は波間に漂う木の板を指さした。

「まさか!? くそ、遅かったか!」

 すでに海賊は逃げた後だな。いや、これは……。

「団長、海の中に人の気配がある。数は五十くらいだ」

「何!? ……まさか!? タロー殿、その気配はどこに?」

「この先二キロメートルほどの海底だ。ゆっくりとこっちに近づいてきているぞ」

 俺は船首の先を指さした。

「助かった!」

 そう言うと団長は踵を返した。

「船長! 潜航準備! 距離二千の海底に気配あり!」

「了解! 総員、潜航準備! 総員、潜航準備だ、急げ!」

 俺からしたら、船長と呼ばれた男の方が海賊に見える。その容姿は完全にジャ●ク・スパ●ウだ。

 てか、潜航ってなんだ? まさか、海に潜るのか? どうやって? これ、帆船だよ? まさか、服を脱いで飛び込むのか?

 俺がそんなことを考えていると、船体を何かがドーム状に包みこんだ。

「なんだ、これ?」

「それは、我が国の技術の粋を集めたマジックアイテムだ!」

 団長が自慢げに解説をしてくれた。

 説明は長いので端折るが、かいつまんで言うと、【風魔法】と【水魔法】を駆使したマジックアイテムがあって、それはドーム状に船全体を包み込んでいるらしい。


「総員、潜航時の衝撃に備えろ!」

 船長が大声で指示を出している。

「タロー殿、ここに掴まってくだされ。船体から放り出されてこのドームから出たら海ですからな」

 なるほど、このドームは人を弾いたりしないんだな。

「潜航!」

 船長が潜航の命令を出すと、船頭がゆっくりと下に傾いていき、どんどん海の中に入っていく。

「ほえーーー。すげーなこれ!?」

 こんな経験ができたんだから、ついてきてよかった。

 誰だよ遅いとか、木の船だとかバカにしたことを言っていた奴は!?

 ドーム状の膜が海とこの船との境界線で、大海原に沈んでいくその光景がなかなか見ごたえがある。


「団長」

「なんだ?」

「ありがとう。いいものが見れたぜ」

「そうだろ!? これが―――」

 団長の話は長い。聞き流すに限る。

「ところで、この状態で戦闘なんてできるのか?」

 船はドーム状の膜で覆われていて、海の中に潜ることもできたが、戦闘ができるようには思えないんだが?

 何よりドーム状の膜がとても脆弱に見える。


「心配はいらぬぞ。あれを見ろ!」

 団長が指さした先では、水兵たちが何かを設置していた。

「あれは……バリスタか?」

「然様! 水中戦専用武装のバリスタだ!」

「ほう、水中戦専用か」

 この船に乗ってよかったよ! 面白くなってきたぞ!


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ