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005_ハイエナウルフ

 


「……何だよ」

 俺は今、魔物と絶賛戦闘中だ。


 種族:ハイエナウルフ レベル百五十

 スキル:【臭覚強化】【爪斬り】【野生の勘】【連携】

 能力:体力C、魔力E、腕力C、知力D、俊敏B、器用E、幸運E


 夜を迎えてそろそろ寝ようかと思っていたら、どこからかこのハイエナウルフがやってきた。

 俺の寝床である大木に近づいてきたので俺は枝の上から様子を見ていたんだ。

 幸い、化け物の肉を食って【暗視】を覚えていたから夜でも視界はクリアだ。

 そうしたら基本は茶色で背中だけ黒い縞があるハイエナウルフが鼻をスンスンしだし顔を上げて俺と目があった。

 そうなるともう戦闘モードになるわけで、ハイエナウルフは枝の上にいる俺に飛び掛かってきた。

 犬のシェパードより二回りほど大きなハイエナウルフは俺のいる枝まで軽々と飛び上がってきた。

「ぐっ!」

 それに俺は驚き枝から落ちそうになったり、ハイエナウルフの爪に引っ掻かれ足に傷を負ってしまった。

 だから速攻で肉を取り出し【回復食】で肉を焼いた。

 焼き上がった肉を口に放り込むと傷が消えていったのでもう一切れ口に放り込み残りは【素材保管庫】に収納する。

 その間、僅か数秒。自分でも驚くほどの早食いだった。

 人間、危機に瀕していると何でもできるようだ。


 眼下ではハイエナウルフが俺を睨みつけ獰猛な牙を見せて唸っている。

 役に立つかは分からないが銅の剣も【素材保管庫】から取り出して右手に持つ。

 剣なんて初めて扱うのに何故かシックリくる。

 何でかと考えているとハイエナウルフがまた飛び上がった。

 スーッと体が動き剣がハイエナウルフの前足を切り裂く……俺は意識していなかったけど体が勝手に動いた感じだ。

 ハイエナウルフは「キャイン」と悲鳴を上げ前足から血を垂らしている。ザマァ!

「アオォォォォォンッ!」

「な、何だよいきなり叫ぶなよな!?」

 吠えた後は木の周りをウロチョロする。

 俺が寝るのを待っているのか?面倒だな、【着火】を試してみるか。

「【着火】」

 ……何も起きない。

 まぁ、予想していたので気落ちはない。

 そもそも料理のコンロに火をつけるのに数メートルも離れてつけることはない。

 だから【着火】の射程距離はせいぜい数十センチメートル。良くて一メートル程度だと思っていた。


 あのハイエナウルフはいつまでここにいるつもりなのか?

 昼間多少なりとも寝たからまだ良いけど、このままだと俺は疲弊してしまう。

 ハイエナウルフにつけた傷なんてアイツにしてみればかすり傷だろうし、早めに決着をつけないと先に限界がくるのは俺だろう。

 試してみるか。

「【湧き水】」

 ハイエナウルフの頭上に出来るだ大量の水が湧き出るようにイメージする。

「キャイブボラベ……」

 大量の水がハイエナウルフの押しつぶし、そしてその水がハイエナウルフを押し流した。

 ハイエナウルフは激流となった水に流され近くの大木に体をぶつける。

 驚いた。あれは湧き水というレベルではなく津波のようなものだ。

 水の中で足掻くハイエナウルフ。暫く水に弄ばれたハイエナウルフは気絶してしまったようで動かない。

「かなりダメージを与えたと思うけど、ここが思案のしどころだな」

 ハイエナウルフは確かに動かないが、腹が僅かに上下しているのでアイツはまだ生きているのが分かる。

 今は気絶しているかもしれないけどその内目を覚ましまた襲ってくるかもしれない。

 木を降りてトドメを刺せば確実だけど、それがアイツの作戦だったらどうなる?

 木から降りてしまったら登るのにはそれなりの時間がかかるし、その間は無防備となる。

 誘われている気もする……どうする?

 意を決して木を降りようとしたら何かの音が耳に響く。

 その音は次第に大きくなっていく。

「マジかよ……」

 俺は絶望に震える。

 現れたのはハイエナウルフ。その数は八。

 一頭でも苦労したのに八頭ものハイエナウルフとどう戦えっていうんだよ?


 俺は先ず木を登った。

 上の枝に移ることでハイエナウルフの攻撃を躱そうという魂胆だった。

 しかし奴らはその鋭い爪を木に引っ掻けながら木を登ってくるんだ。

 俺は青ざめたよ。

 血走った眼と口から見える牙が俺の恐怖心を煽る。

 死を覚悟したけど、それで俺は冷静になれた気がした。

 人間、死ぬ気になれば何でもできるって言う人がいるけど、それは嘘だ。

 死ぬ気になってもできることなんて限られているし、人間の持って生まれた才能と今までの努力に比例して能力は決まるんだ。

 冷静になってどうでもよいことを考えてしまった。


 よく見たら木登りをしているハイエナウルフって結構間抜けな恰好だ。

 これならいける!とすぐ下まで迫った一頭のハイエナウルフの前足に銅の剣を突き立てる。

「キャイン!」

 間抜けな格好で木から落ちるハイエナウルフはその下にいたもう一頭を巻き添えにした。

 だけど木から落ちただけで死んだり重傷を負ったりするわけもなく、八頭という数は変わらない。

 そこで気付いたのだけど剣の届く間合いなら【着火】も使えるのでは?と。

 二頭目がよじ登って近づいてきたので試してみる。

「【着火】」

 ゴウッ!

「キャウイィィィンッ!」

 成功だ。頭に火をつけてやったのでもがき苦しみながら木の下に落ちていくハイエナウルフ。

 枝の上でなければ小躍りしているところだ。


 イメージは焼け死ぬまで燃え続けるだ。

 そのイメージで【着火】を使うと木の下に落ちて本来は射程外のハイエナウルフの顔は燃え続ける。

 三頭ほど【着火】で撃退したところで視界に文字が浮かぶ。

『レベルが上がりました』

 どうやら最初に【着火】して燃やしたハイエナウルフが死んだようで、火も消えていく。

 三頭の火が消えたところで三度目のレベルアップ表示があった。


 氏名:ツクル・スメラギ

 ジョブ:調理師・レベル百三十五

 スキル一:【調理】【着火】【解体】【詳細鑑定】【素材保管庫】【湧き水】【回復食】【道具整備】【食材探知】

 スキル二:【暗視】

 能力:体力D、魔力D、腕力D、知力B、俊敏D、器用EX、幸運EX


 暗視 ⇒ 暗くても見えちゃうよ。でも覗きはだめだからね♡


 レベルが差があるからレベルは十二も上がった。

 食事して覚えたスキルは『スキル二』のスロットに表示されるようで、【暗視】はそこに表示されている。

 相変わらず戦闘向きのスキルは少ない。

 【着火】は射程が短か過ぎるし、【湧き水】はそれなりのダメージを与えることができるが決め手に欠ける。

 レベルアップして考え込んでいたらハイエナウルフがなんと木を削りだした。

 ガシガシと五頭のハイエナウルフが木の幹を爪で削っているのだ。

「大木が簡単に倒れるとは思えないけどヤバいな」

 しかし考えてみたら五頭は木の真下に集まっており、これはチャンスと思う俺だった。

「【湧き水】!」

 鉄筋コンクリートの建物さえ破壊する津波をイメージしてみた。

 ゴォォォォォッ!

 激流のような水の流れがハイエナウルフたちを襲う。

 水って意外と重たくてそして地上で暮らす生物には容赦ない破壊力を発揮するんだよな。

 勿論、【湧き水】ではハイエナウルフを死に追いやることはできない。

 それでもアイツらが木を削ろうとするのを止めれば今の状況としては御の字だ。

 予想通り五頭のハイエナウルフは死ななかったが、それでも木に近づかず遠巻きにこちらの様子を窺っている。

 これは所謂ところの我慢比べになってきた。

 そうなると俺の方が圧倒的に不利だ。


 

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