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ガベージブレイブ(β)_047_腕試し1

 


 エントが言うには、クソジジィは人族と他の種族を仲たがいさせる施策を打ち出している。

 クソジジィの思惑は分からないが、このままでは神々の黄昏(ラグナロク)が起きても不思議ではないらしい。

 ラグナロクとは、簡単に言うと人類全てが滅亡する可能性がある戦争のことだ。

 ラグナロクにはエントや、その上の神たちも参戦する。そうなれば脆弱な人類の殆どは死滅するだろうと言うのだ。


 俺とカナン、ハンナの三人で今は世界樹の中で魔物を狩っている。

 世界樹は世界を支える存在であり、その中は異次元の広さがある。

 過去にラグナロクが起こったことがあるが、その時にエント側は負け戦が続いて世界樹の中にまで攻め込まれたことがあったそうだ。

 その時、この世界樹に攻め込んできた魔族を封じるための空間を神が創ったらしい。

 その空間に俺たちは足を踏み入れている。

 世界樹の中で試練を乗り越えた者だけが、この空間に入ることができるとアンティアは言っていた。


 神と神の戦いだけあって、攻め込んだ魔族のレベルは高い。

 最低でもレベル二百はあり、上はそれこそクソジジィレベルだという。

 エントとしては、封印したとは言え邪魔な魔族たちを駆除したい。

 俺は強くなるためにレベルを上げたい。

 両者の思惑が合致して俺たち三人はこの空間へ入ったのだ。


「はぁぁぁぁっ!」

 ハンナが突撃して異形の人型を倒す。

 この異形の人型は魔族と言われる種族だ。

 下半身が馬で上半身が人間だったり、下半身がクモで上半身が人間だったり、カエルのような顔をした人型だったり、色々な魔族がいる。


 魔族は俺たちがいた大陸とは違う大陸に住んでいるらしい。

 ラグナロクで勝ちを手に入れていたが、欲をかいて世界樹に侵攻して封印されてしまったので、残った魔族たちはその大陸に逃げ延びたらしい。


「燃え盛れ、フレイムストーム!」

 巨大な炎の渦が数体の魔族を飲み込む。

 魔族は悲鳴をあげて苦しんでいる。

 魔族にとってはカナンの魔法は地獄の業火のように思えるのかもしれない。


 ラグナロクは神々と神々に従う各種族間の戦いだ。

 エルフ族やアンティア、それにエントはヴィアナヘイムという勢力で世界樹を管理している。

 クソジジィはアルスガルズという勢力で、人族を従えており平地を管理している。

 そして魔族はギガンヘイムという勢力に属しているらしい。

 神々の戦いなんてどうでもいいが、クソジジィに関しては因縁になったと思っている。

 クソジジィは俺のことなんてなんとも思っていないかもしれないが、俺にはクソジジィを倒す理由がある。

 どちらかが滅びるしか俺たちの戦いは終わらないだろう。


「アルスガルズとアイスヘイムの者が何用だ!?」

 目の前に現れた魔族が喋りかけてきた。

 見た目は悪魔といった感じで、頭には牡羊のような巻き角が二本あって、背中には蝙蝠のような羽根がある。

 それ以外は人族とあまり変わったところはないだろう、ダンディなオジサン系の顔立ちだ。

 ちなみに、人族の俺とカナンはアルスガルズ、獣人のハンナはアイスヘイムに分類される。

 俺はアルスガルズではないが、この空間に封印されている魔族にとって人族は全員アルスガルズの括りなんだろう。


「お前たちのボスを倒しにきた。邪魔をしなければお前たちに手出しはしない」

 そんなことを言われて、はいそうですか、と言う奴はいないだろう。

 魔族はそれを聞いて口端を上げる。


「お前たちのような者があのお方を倒すだと? ふ、はははは! 笑わせてくれるわ!」

「何がおかしい? 気でもふれたか?」

「お前たちのような矮小なる者があのお方を倒すなど、できはせぬよ」

「ふっ。やりもせずに諦める奴の常套句だ。負け犬の遠吠え、はちょっと違うか」

 どの道、目の前にいる魔族と俺たちの話は平行線を辿るだろう。

 向こうから協力を申し出てくれば別だが、修業(レベル上げ)の為にここにきている俺たちが戦闘を回避する理由はない。


「ならば、私が確かめてやろう!」

 魔族の姿が消えたと思ったら俺の前に現れて、その長くて鋭い爪で俺の心臓をひと突きにしようとした。

 もちろん、そんなことを許す気はない。

 しっかりとハンナがその腕を掴み俺を守ってくれた。


「ほう、小娘のくせにやるではないか」

「ご主人様に指一本、触れさせはしません!」

「こしゃくな!」

 この魔族程度ならハンナ一人で問題なく倒せるだろう。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 氏名:ガーゼン・オルダイン

 種族:オールドエヴィル レベル三百二十五

 スキル:【爪闘術II】【魔力感知】【暗黒魔法II】

 能力:体力A、魔力A、腕力S、知力D、俊敏B、器用C、幸運F

 称号:古代魔族


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 世界樹の中に閉じ込められたせいか、それとも元々なのか、レベルは高いが能力はそんなに高くない。

 ガーゼンが持っている【暗黒魔法II】には少し興味はあるが、カナンには【全魔法】があるので、【暗黒魔法】も使えるのではないだろうか?


「なぁ、カナン」

「はい、なんでしょう?」

「【暗黒魔法】って、カナンも使えるのか?」

「はい、使えます。アンティアさんにもらった魔法書の中に【暗黒魔法】のことも載っていましたから」

 自慢げに鼻を膨らますカナンのそういったところが、子供だなと思ってしまう。思わず頭を撫でてしまった。

「えへへ~」

「あいつが持っているのは【暗黒魔法II】だけど、同じ魔法を撃ち合った場合でも威力は勝てるのか?」

「問題ありません! 魔法少女カナンにお任せください!」


 試練の後にカナンとハンナの能力を確認した。

 ハンナは物理系なので、自分自身の体の動きをチェックさせただけで済んだが、カナンは魔法系なのでどの程度の威力の魔法が、どの程度の範囲に影響を及ぼすかしっかりと確認をした。

 魔法の威力が分からずにフレンドリーファイアをしたなんてなったら、シャレにならないからな。

 カナンの魔法の試射が今まで以上に強力だったので、俺が思わず『魔法少女カナン』と呟いてしまった。

 それ以来、カナンは自分のことを『魔法少女カナン』と呼ぶようになった。

 ちなみに、ハンナは『神速のハンナ』である。

 二人ともちょっと痛い娘なのだ。


 ハンナと魔族のガーゼンの戦いは佳境を迎えていた。

 圧倒的なスピードで鼻歌を歌いながらガーゼンをボコるハンナ。

 鼻歌はリズム感のある動きをつくるのに丁度よいのだろう。


 ガーゼンはハンナに攻撃を一度も当てることができていない。

「どうしました? ご主人様に大口をたたいていたのに、その程度なのですか?」

「なめるなっ!」

 肩で息をしているガーゼンはハンナから距離と取ると、右手をハンナに向けた。


「よくもこのガーゼン・オルダイン様に傷をつけてくれたな!? 貴様に報いをくれてやる!」

 モブキャラっぽいセリフを吐いたガーゼンは【暗黒魔法II】を撃とうとしているようだ。

 てか、詠唱するのかよ!?

 このレベルで詠唱なんかしていたら詠唱中に殴られるっつーの。

 なんでこの世界の奴は詠唱をしたがるのかな?


「ハンナさん、下がって!」

「はい!」

 ガーゼンが魔法を撃つのなら、こっちも魔法だ。

 魔法の威力勝負って、なんだかわくわくするよな。


 ガーゼンの手の前には黒く蠢くバスケットボール大の球体ができている。

 球体からは稲光のようなものが出ている。なかなかに凄そうな魔法だ。

「はーっははは! 死ね!」

 詠唱が終わったようで、モブキャラ決定のセリフを吐いてしまうガーゼン。

 黒く蠢く球体を放ったガーゼンは勝ち誇っている。


「させませんよ! 漆黒なる闇の(いかづち)!」

 カナンの手からも同じ黒く蠢く球体が放たれた。

「なっ!? 何故、漆黒なる闇の(いかづち)をっ!?」

 カナンが魔法を放ったら、ガーゼンは間抜けな顔をして驚いた。


 二人が放った黒い球体がぶつかる。

 二秒ほどはその場で拮抗していたが、すぐにガーゼンが放った黒い球体が押され始めて霧散してしまう。

 しかしカナンの黒い球体は形を保ち真っすぐにガーゼンに向かって飛んでいく。


「な、何故だ!? 何故私の漆黒なる闇の(いかづち)が!?」

 ガーゼンは黒い球体を回避しようと逃げるが、黒い球体はガーゼンを追いかける。

「なっ!? 何故ついてくる!?」

 カナンの【魔力操作】のレベルはIVなので撃った魔法の軌道修正などお手のものだ。

 ガーゼンには【魔力操作】がないので分からないだろうが、【魔力操作】はこういう芸当もできるのだ。


「うおぉぉぉぉぉぉっ!」

 ガーゼンのお尻に命中した黒い球体はそのままガーゼンの下半身を爆散させた。

「ぶべ……」

 かろうじて胸から上は残ったが、この状態でまだ息のあるガーゼンの生命力の方が驚きだ。

 口から血を吐き出して、虫の息のガーゼンに近づく。

 周囲にガーゼンの体だった肉片や骨が散らばっている。なかなかグロイ光景だ。


「雑魚相手ならこんなものだな」

「パワーとスピード、どちらも大したことはありませんでした」

「魔法の方もそこまで強くはなかったです」

 少なくとも試練を受ける前の俺たちならかなり苦戦した相手だったはずだ。

 しかし精神的に鍛えられて、さらに能力も上がっている俺たちにはそこまで強敵にならなかった。


「ぐふっ。この私が雑魚扱いか……いいだろう、この道を真っすぐに行け、突き当りを左に行けばあのお方の元まで行けるだろう……」

 ガーゼンはすっきりした顔で俺たちにそう言って息絶えた。

「なんだか拍子抜けだったな。もっと強い奴と戦わないと実感ができない」

「はい、今度はもっと早く倒します!」

「殲滅するのです!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 種族にはオールド種とエンシェント種というのがある。

 人族の場合、人族の上にオールドヒューマンがあり、さらにその上にエンシェントヒューマンが存在する。

 あのクソジジィはエンシェントヒューマンなので、種族の位階としてはアンティアと同じだ。


「ご主人様、これでオールド種の魔族を三人倒したのです!」

 カナンとハンナは現れる魔族をぶちのめし、ガーランドの他に二人のオールド種を撃破した。

 レベルも順調に上がっていき、今ではツクルと大して変わらないまでになっている。


「おい、私の出番がないではないか!」

「黒霧さんはもっと後で活躍するのです」

「今は私たちに魔族を譲ってください」

 カナンとハンナが魔族を倒していくので、俺は【詳細鑑定】以外に何もしていない。

 だから黒霧は自分の出番がなくてふてくされているのだ。


「主様、魔族が来ますぞ」

「おう、今度はベーゼに任せるぞ」

「お任せあれ」

 ベーゼは試練を受けていないが、俺が召喚をした魔物だからか、能力が上がっていた。

 元々、ベーゼもレベルは二百七十だったので、この異空間で出てくる魔族といい勝負ができた。


「いでよ、眷属ども!」

 ベーゼが眷属を召喚する。

 地面から骸骨がボコボコと生まれてくる。

 十体、百体……千体もの眷属を召喚するベーゼは物量で押す戦いをする。


 近づいてきたのはレベル三百十の牛頭の人型の魔族だ。

 眷属はその魔族を取り囲むが、ベーゼの眷属のレベルは高くても二百五十なので魔族が無双をする。

 しかし、ベーゼは冷静に状況を判断して、さらに眷属を召喚する。

 最初は魔族の圧倒的な強さが目立ったが、一回目に召喚した眷属を倒し終わった辺りで疲れが出てきたのか、次第に被弾するようになっていく。

 ベーゼの眷属の攻撃は徐々に魔族に怪我を負わせていく。

 魔族もむきになって眷属を倒していく。

 そして二回目に召喚した眷属が残りわずかになり、体中に傷を負った魔族がにやりと笑った。


「甘いな、ベーゼが二回しか眷属を召喚できないなんて、思ってもらっては困る」

「うわ~、また骸骨が沢山でてきたです」

「敵を潰すまで魔物を召喚するベーゼさんは、嫌らしい戦い方です」

 三回目の召喚を見た魔族の表情があっという間に絶望へと変わった。

 もうすぐ倒しきると思ったところで、また召喚されたのだから絶望するのも仕方がないか。

 結局、魔族は二千体の骸骨を倒して力尽きた。

「主様に無様な戦いをお見せして、申し訳ございません。我がレベルが上がれば眷属も強化できますれば……」

「構わんさ、お前が納得いくまでやればいい」

「はっ、ありがたきお言葉」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「アンティアよ、ツクルから目を離すでないぞ」

「何ゆえに御座いますか?」

 エントは巨大な世界樹と同じ容姿をしている。

 唯一違うのは幹に顔があることだろう。

 その幹にある目がアンティアを見据える。


「ツクルには力を感じるのだ」

「力……たしかにツクルには何か得体のしれないものを感じますが……」

「おそらく、ツクルには神の加護があるのだ……」

 アンティアは声こそ出さなかったが、目を大きく見開いて驚く。

 神の加護は滅多なことでは与えられない。

 もし神の加護を持っているのであれば、ツクルはエント以上の存在となり得るだけの可能性を秘めているということなのだ。


「ツクル自身は気づいておらぬようだがな」

「一体、いずこの神がツクルに加護を……?」

「分からぬ。今までに感じたこともないものであった……」

 エントは目をつぶると長く伸びた枝のような鼻を別の枝でさするとアンティアに囁いた。


 

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