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ガベージブレイブ(β)_034_訓練生2

 


 俺の訓練が訓練場で行われるなど誰が決めた!

 と言うわけで、俺はゴリアテたちを連れてボルフ大森林の入り口にやってきた。

 ゴリアテたちをレベル八十以上に引き上げれば今回の俺のミッションはクリアになるので手っ取り早くオーガの群れに放り込んでやろうと思う。

「スメラギ殿、私のような者が―――――」

「伯爵が良いって言ったんだ問題ないだろ?」

「しかし……」

「後ろめたいと思うのなら命の限り伯爵に仕え、恩を返すんだな」

「っ!そ、そうだな、スメラギ殿の言われるとおりだ!」

 テンションダダ下がりだったロッテンを鼓舞してこれからの訓練に備える。


「先ずはこれを食え」

 俺は一人一人にあった焼肉を与える。

 前衛系には『体力』や『腕力』、それに『俊敏』や『器用』などを上げる効果がある焼肉を。

 後衛系には『魔力』や『知力』、そしてこっちも『俊敏』や『器用』を上げる効果の焼肉を与える。


「これは……」

「俺の最初の命令だ、食え!返事はどうした!?」

「は、はい!」

「違うだろ!返事は『Yes,sir』だ!お前たちはそれだけ言えば良いんだ!」

「Yes,sir!」

 俺の気迫に押され『Yes,sir』と発する十人。

 いや~これ一度やってみたかったんだよ!気持ち良いなぁ~。

 俺の焼肉を食うと目の前に並ぶ訓練生の十人はそれぞれビクっと反応する。

 能力が上がったと視界に表示されたのだろう。

「す、スメラギ殿!」

「俺のことは教官と呼べて言っただろ!」

 ガツンとゴリアテを殴り倒す。

 本気でやったらゴリアテの顔が吹き飛ぶので優しくチョンと拳を当てただけだ。

 それでもゴリアテを殴り倒せるのだから俺も大概だ。


「お前たちには特別に俺が秘蔵している肉を食わせてやった。今視界に能力が上がったと出たと思うが、それは事実だ。それだけでお前たちはほんの少し強くなっただろう。だがそれでは足りん。この森を生きて出たいのであれば俺の言葉をしっかり聞き、実践しろ!分かったか!?」

「Yes,sir!」

 立ち上がり列に戻ったゴリアテも含め全員が俺に『Yes,sir』と返してくる。癖になりそうだわ。


 現在の訓練生ゴリアテたちは二つのパーティーにわかれている。

 俺は知らなかったのだが、この世界にはパーティーリングという物があるそうで、そのリングをお揃いで身につけていると魔物を倒したときの経験値がパーティーメンバーに均等に配分されるらしい。

 だから後衛、特に回復職や補助系職業がいるパーティーには必須だという。

 但し、六個で一セットなのでパーティーメンバーは六人までしか登録できない。

 だから今回は五人づつの二パーティーを編成している。

 このパーティーリングは一般販売されているそうで、伯爵家は百セット以上保有しているらしい。

 今度買っておこう。


 次にすることはこのボルフ大森林での注意事項だ。

「貴様らはこれからこのボルフ大森林に入る」

 十人の訓練生はあからさまに嫌そうな表情をする。

「だが、今のお前たちがこのボルフ大森林に入っても一時間と生きてはいないだろう」

 これは事実なので彼らも反論はないようだ。


「だが、入る!」

 真っ青な顔をする者がほとんどだ。

「心配するな。貴様たちのレベルは上げてやる。その上で戦闘訓練を開始する」

 俺の言葉に訓練生たちが騒めく。

「誰が喋って良いと言った!」

 近くにいたロッテンを殴りつける。勿論俺的にはソフトタッチだ。


 前衛の五人の前を二、三回ウロチョロして五人の中央で止まる。

「これからオーガの群れを殲滅する!安心しろ、俺が全てお膳立てしてやる。お前たちはオーガにトドメを刺すだけだ。そのトドメにはお前たちの最大の攻撃を与えろ、分かったか!?」

「Yes,sir」


 次に中・後衛の五人の方に向かう。

「治癒士、魔導士、精霊術師!貴様らは詠唱をするな!」

 騒つくので三人の額にデコピンをする。

 デコピンでも彼らには物凄い衝撃なので倒れる。

 倒れたまま額を抑えて呻いていた三人を立たせ再度徹底する。

「俺の許可なく喋ることは許さんと言っただろ!」

 踊り子の花妖精族がガタガタと震えているが無視して魔法系の三人への話を続ける。

「魔法は全て詠唱せずに放て!このボルフ大森林で詠唱などしていたら、その間に仲間が死ぬ!仲間を死なせたくなければ詠唱せずに魔法を放て!もし詠唱すればその時点で俺が貴様らを殴り飛ばし詠唱をキャンセルさせてやる!分かったか!?」

「Yes,sir!」


 次は猫獣人のシュバルツの前に立つ。

 猫獣人のくせに男だ。くそ、俺の夢を返せ!

「闘弓士!貴様は索敵の精度と範囲を向上させろ!貴様の索敵能力次第でパーティーの安全性が変わるんだ、分かったか!?」

「Yes,sir」

 こいつは殴る要素がなかった……殴っておきたかったが、まぁ、良い。


 最後に花妖精族だ。

 しかしこんな種族がいるとは思ってもいなかった。

 背中には蝶のような翅があり、その翅を動かしていないのに空中に浮いているんだ。

 しかも身長は五十センチメートルほどで、顔は五歳児のように可愛らしく幼い。

 こんな容姿なのに俺よりも年を取っている四十三歳なんだ。ダブルスコアーだ。

 幼女風合法ロリではなく、幼男風合法ロリだ。誰得なんだよ!

 ん、幼男なんて言葉はないか?幼児かな?幼児で良いか。

 日本で生息していた腐女子なら需要はあるのか?あれ、腐女子はBLだったか?腐っている女子の生態系なんぞ知らんわ!?


「踊り子!貴様は休まず踊れ!決して休むな、踊って踊って踊りまくれ!分かったか!?」

「Yes,sir」

 ブルブル震え涙目ながらも肯定する幼児。

 なんか俺が幼児を虐めているようでちょっと後ろめたい。

「貴様はき○たま付いているのか!?」

「Yes,sir!」

 付いているらしい。


 ボルフ大森林に入って十数分でオーガの気配を捉えた。

 先行して進む闘弓士は慎重に地面や木、その他色々なものに気を配っているが、まだ気が付いていないようだ。

 彼の索敵能力は【観察】と【追跡】、そして【遠視】などのスキルを複合的に使ったものなので、どの程度でオーガを察知できるか俺には予想もできない。


 暫く進むと闘弓士が腰を低くし手を上げて静止の合図を送ってきた。

 オーガを見つけたようだが、その距離は約百四十メートル。

 恐らくは【遠視】による視認なんだろう。

 森の中での視認の範囲としては優秀なのだろうが、これでは後方から近づかれると厳しいことになる。

 俺のように【気配感知】を持っている人間はあまりいないようだ。

 索敵の範囲拡大と性能向上は間違いなく必要だ。

 後から感知系スキルを覚える焼肉を食わしてやろう。

 それと隠密短剣士にも感知系スキルを覚えてもらった方が良いな。

 それはそうと視界の先には十四体のオーガが大きな棍棒や大剣を持ってウロウロしている。


「俺がオーガを無力化する。前衛は俺の合図でトドメを刺せ」

「Yes,sir」

 俺は訓練生をカナンに任せてオーガに向かって歩きだす。

 俺を視界に入れたオーガが他のオーガに知らせ俺の方に一目散に走ってくる。

 問答無用で俺に大剣を振ってくるが、それは空を切る。

 面倒なので十四体全部が集まるまで避けまくる。そして十四体が集まったところで黒霧を抜き【手加減】を発動させてオーガの間を駆け抜ける。

 俺が急に消えたと思ったら瀕死に追いやられたオーガたちは目を丸くして驚き痛みに呻く。

 しかし死んでいないので俺は【影縫い】を発動させ拘束し、更に【闇魔法】のスリープでオーガを眠らせる。

 そして訓練生に合図をする。

 俺の合図を受けた訓練生たちは倒れている十四体のオーガにトドメを刺し、そしてレベルアップをした。

 一番レベルの高かったゴリアテでレベルが三アップで五十五になったそうだ。

 意外と上がらないのだな、と思う。しかし十人で経験値を分け合っているから上り幅が少ないのは仕方がないか。

 同じことを繰り返し一番レベルの低い治癒士がレベル七十を超えるまで作業のようにトドメを刺させる。

 それと何度か後衛が詠唱していたのでその都度腹パンしてやった。

 口から涎を垂らしながら滅茶苦茶苦しそうに腹を抑えうずくまったが、そんなことは知らん。

 俺がダメだと言ったらダメなんだ!


 日が暮れそうなので野営の準備をする。

 訓練生たちは疲れているだろうがテントを張らせる。

 その間に俺がご飯の支度をする。

 小麦粉をコネてから発酵させそれを薄く伸ばして丸く形どる。

 その上にトマトから作ったケチャップを薄く塗る。

 更にその上にはモウ乳を発酵させたチーズを満遍なく盛って細切りしたピーマンとコーン、そしてウッドボアの肉を燻製にした物を薄く切って盛り付ける。

 そう、これはピザだ。

 訓練生は今日のパワーレベリングの強行軍で疲れ果て幽霊のような表情をしているのでカロリーの高い食事を与えてエネルギー補充をさせる。

「う、美味い!」

「何だこれ!?滅茶苦茶美味いぞ!」

 全員がピザを称賛する。おかげでLLサイズほどの大きさなのに訓練生だけで二十三枚も食いやがった。

 更にカナンはゴリアテと同じく三枚も食いやがった。

 俺は一枚で腹いっぱいなのに、二十七枚ものピザが全員の胃袋の中に消えていった。

 まぁ、作った側からすると何度も美味いと言って沢山食ってくれると嬉しいけどな。


 食事も終わったので見張りの順番を決めさせる。

 俺とカナンは見張りをしないので訓練生が三・三・四人に分かれて見張りを行う。

 俺の殺気を振りまいておいたから魔物なんて近づいてこないだろうが、それを言ったら緊張感をなくすから言わない。


 尚、サイドルへ卸しているおにぎりは五日分をまとめて納品しているのでボルフ大森林でキャンプしても問題ない。

 今までもカナンのパワーレベリングなどでボルフ大森林に入る時はそうしていたし、サイドルも時間停止能力のあるアイテムボックスを持っているので何も問題はない。


 パワーレベリングも進みレベルが一番高いゴリアテで八十八になっているのでオーガとも十分に戦えるだろう。

 問題は魔法系後衛だ。

 『精霊術師』のオブリは詠唱しなくても【精霊魔法】を発動させることに成功している。流石はエルフといったところか。

 しかし他の魔法系職業はまだ詠唱破棄ができていない。

「いいか、お前たちが詠唱をせずに魔法を発動させなければ仲間が死ぬぞ!イメージだ、イメージを固めて発動させろ!」

「Yes,sir」

 発破をかけるが、二人の表情は暗い。


 十三体のオーガの群れを発見した。

 『踊り子』のフリンは常に踊っている状態でパーティーメンバーは常にバフが重ね掛けされている。

 直接戦闘をしてはいないが、恐らくこのフリンが一番キツイ。

 踊り子の『体力』は高くないのに踊り続けているのだから当然だろう。

 だからフリンには『体力』の回復を助ける踊りを多く入れるように指示している。

 しかし幼児が腰をフリフリして空中を踊りながら移動する絵面は見ている分には楽しいな。


 オーガの群れに熊獣人で『大盾騎士』のエーデルが突っ込む。

 それと同時に『精霊術師』のオブリが【精霊魔法】のエアスラスターを撃つ。

 更に『闘弓士』のシュバルツが矢を射かける。


 エーデルの後ろには『双剣士』のロッテンが続き、さらにゴリアテや犬獣人で『闘槍士』のブルガが続く。

 エアスラスターが着弾し数体のオーガに傷を着け、更に矢が追い打ちをかける。

 しかし頑丈な肉体を持つオーガは一体も倒れず走ってくるエーデルたちを迎え撃った。

 ガンッと甲高い音がする。オーガの大剣をエーデルの大盾が受け止めた音だ。

 オーガのレベルは八十、対するエーデルは八十一なのでレベルは互角だ。

 生まれながらの戦闘種族であるオーガと厳しい訓練によって戦闘技能を身に着けたエーデルとではどちらが上なのだろうと考えると少し心がウキウキする。


 オーガが集まってきたのを見たエーデルが【アンガーロック】を発動する。

 この【アンガーロック】は一定範囲内の敵の敵対心(ヘイト)を上げるスキルだ。

 大盾を装備したエーデルの面目躍如である。

 周囲をオーガに囲まれたエーデルが今度は【頑丈】を発動する。

 この【頑丈】は言うまでもなく『体力』を上げる効果があるのでオーガの集中攻撃を浴びても数分は持つだろう。

 その間に『双剣士』のロッテンや『剛腕剣士』のゴリアテ、そして『闘槍士』のブルガがオーガに容赦ない攻撃を加える。

 そして援護射撃としてシュバルツの放った矢がオーガに満遍なく刺さっていく。

 更に満を持していた『隠密短剣士』のファルケンが大木の枝の上から一体のオーガ目掛け飛び掛かりオーガの太くて屈強な筋肉に守られた首を切り裂く。


 三体ほどオーガが倒れたころにエーデルの疲弊がピークに達しようとしていた。

 流石に同じレベル帯のオーガから袋叩きにされてはキツイ。

 しかし『治癒士』のアクラマカンは未だ魔法を発動できていない。

「ぐっ」

 ここでエーデルの膝が地面に付きそうになったが、エーデルは【鉄壁】を発動させダメージを無効化する。

 しかし発動させれば十数分は継続する【頑丈】と違い【鉄壁】の効果は二分ほどだ。

 この【鉄壁】の効果が切れる前にできるだけオーガを倒さないとキツイだろう。

 アクラマカンが回復魔法を詠唱破棄で発動できれば状況も安定するのだが、アクラマカンはまだ詠唱破棄できない。


 オーガがまた一体倒れた、これで残るオーガは九体だ。

 ここでフリンが前線に近づき踊りを発動する。

 その踊りでエーデルの回復をするようだ。

 もしオーガの攻撃を一撃でも食らったらフリンには致命傷となりかねないので最前線のすぐ傍で踊るのはフリンにとって非常にリスキーなことだ。


 その光景を見て大粒の汗を流すアクラマカン。

 そして同じく魔法を放てないでいる『魔導士』のジャマラン。

 オブリの【精霊魔法】でまた一体オーガが倒れた。残りは八体。

 そしてゴリアテの大剣が二体のオーガを吹き飛ばし倒す。残り六体。

 ロッテンの右手に持つ剣がオーガの首を撥ねる。残り五体。

 シュバルツの矢がオーガの喉に刺さったが、まだ生きているところにファルケンが追い打ちをかけトドメを刺す。残り四体。


 ここでエーデルの【鉄壁】の効果が切れた。

 そして四体中、三体のヘイトが他の前衛に移り、ゴリアテに二体、ロッテンに一体が攻撃しだす。

 フリンの踊りの効果で少し回復していたエーデルが再び【アンガーロック】を発動すると剥がれていたオーガが再びエーデルに攻撃を開始する。

 オーガが標的を変える隙を突いてロッテンが一体のオーガを倒す。

 ゴリアテも負けじと一体の左手を切り落としトドメとばかりに大剣を胸に突き刺す。


 残りは二体。この二体のオーガも満身創痍でシュバルツが複射(三本の矢を一度に撃つ技)を行うと三本の矢が刺さりオーガが地面に片膝を付く。

 そしてそのオーガの喉にブルガの槍が突き刺さりオーガが倒れる。

 残った一体は執拗にエーデルに攻撃を加えるが、エーデルも相手が一体なので攻撃に転じ、オーガが棍棒を振りかぶったその隙を突きシールドバッシュでオーガの動きを止めると持っていた片手斧をオーガの胴体に打ち付ける。

 しかし弱っているとは言えオーガの胸板は厚く防御特化のエーデルの攻撃は分厚い筋肉によって阻まれる。

 逆に隙を作ってしまったエーデルに棍棒を打ち下ろすオーガだったが、ファルケンの短剣がオーガの右腕を切り落とす。

「グギャァァァァァァァァッ!」

「トドメだ!」

 ゴリアテが大剣を振り抜きオーガの首を飛ばす。

 身長が二.五メートルほどありゴリアテよりも大きなオーガでもゴリアテと大剣のコンビであれば首を切り飛ばすのはできるし、胴体を切るよりも首の方が細いので刃がよく通る。


 片膝を付いて肩で息をするエーデル。

 その周囲に集まり周辺の警戒をするゴリアテたち前衛陣。

「教官殿、せめて回復だけでも」

 バチコーンとゴリアテをぶっ飛ばす。

 オーガよりも俺の方が凶悪だな。


「許可なく喋るな!」

 ゴリアテの言いたいことは分かるが、だからと言って例外は認めない。

 俺がいるうちに詠唱破棄ができるようにならなければ、結局こいつらは中途半端な役立たずのままだ。

「いいか、戦闘中でも喋るな!誰がどこにいるか、気配で感じろ!」

 難しいことを言っているのはわかるが、対人戦だと掛け声で相手に行動がばれることだってあるだろう。

「強くなりたければ常識に囚われるな、敵よりも狡猾に、素早く、力強く、そして気付かれずに動け!分かったか!?」

「Yes,sir」


 俺が前衛の訓練生と話しているとフラフラの足取りで『治癒士』のアクラマカンと『魔導士』のジャマランがやってきた。

 そしてアクラマカンが地面に両膝を付き土下座状態になると嗚咽を漏らす。

 同時にジャマランも土下座状態になるが、こっちは泣いてはいない。

「わ、私には無理です!ううぅ」

「詠唱なしに魔法を発動だなんて難し過ぎます!」

 目がうつろでかなり参っているようだ。

 アクラマカンは涙と鼻水で酷い顔だし、ジャマランは涙こそ流していないが鼻水を垂らしグッと唇を噛み涙を堪えている。


 俺は二人と目線を合わせるために腰を深く降ろすと交互に二人の顔を見る。

 アクラマカンとジャマラン以外の訓練生は俺たちのことを固唾を飲んで見守っているのが分かる。

 そして俺は二人に声をかける……前にパチコーン、パチコーンとデコピンをかます。

 二人はオデコを抑え「ぐわぁぁっ」などと言いながら地面の上で苦痛に呻く。


「誰が喋って良いと言った!?貴様らの言い訳など聞く耳などもたぬわ!」

 容赦なく罵声を浴びせてやる。

「泣き言をいう暇があるのなら詠唱をしなくても魔法を使えるように訓練したらどうだ!?」

 訓練生の白い目を意に介さず俺は初志貫徹する。


 問題児となりつつある二人の戦闘への関与がないままオーガの群れをいくつか潰していって、ボルフ大森林に入ってから五日目を迎えた。

 今日一日オーガの群れを潰して回れば全員のレベルが八十オーバーとなるだろう。

 それまでにあの二人が詠唱破棄できればよいのだが。


 昼食を摂る。今日の昼食はちゃんこ鍋だ。

 昆布出汁に野菜を煮込んだスープをベースにして味噌を加える。

 そこにヘルベアーの肉を薄く切って投入して野菜も沢山入れる。

 ちゃんこだけど熊鍋でもある。


 最後は俺の愛情を入れて完成だ。

 ここで注意が必要なのだが、入れた愛情は決してあのむさ苦しい男どもへの愛情ではない。

 一人愛くるしい容姿の幼児がいるが、それも違うから、俺はあっちの気はない!これは料理に対する愛情なのだ!


「美味すぎる!」

 一口食べたゴリアテが叫ぶ。五月蠅いやつだ。

「本当です!深みのあるスープにコクのある肉、それに野菜も柔らかくて美味しいです!このスープはどうやって……そうか、野菜のうま味か!?」

 お前は料理評論家かと言いそうになったが、犬獣人のブルガは鼻が良いのでスープのうま味の秘密を嗅ぎ分けたようだ。

 一般人なら軽く四十人前はあったのに鍋が空になった。

 完食してくれるのは嬉しいがコイツらどんだけ食うのだ!?

 レベルが上がると胃袋の容量も増えるのかと思ったが、俺は普通だから関係はないだろう。


 昼食の時間も終わり再び獲物を探してボルフ大森林内を歩く。

 因みに俺の作った料理で訓練生たちの疲労や精神的な回復を図っているので体力も精神も回復している。

 俺の食事がなかったら今頃アクラマカンとジャマランの二人は精神崩壊を起こしているかもしれない。

 俺は優しいのでそこまで追い込まないけど、適度な精神的負担はかけ続ける。

 それと全員のレベル八十が超えたので次は今までのような小規模な群れではなくそこそこ大きめの群れを潰そうと思う。


 

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