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026_パワーレベリング1

 


 装備を纏ったカナンは俺と同じ黒装備となった。

 但し、手に持っている杖は先端についている大きなルビーのおかげでとても高価で豪華な杖に見える。

 しかも真紅のルビーと燃えるようなカナンの赤毛がマッチしており、とても良い。

「ん~カナンの綺麗な赤毛とマッチして良いのだけど杖が目立つな」

「き、きれ……い…… (ポッ)」

 ん、何かカナンがモジモジしているが、取り敢えず杖に【偽装】を施すか。

 たんなる木の杖に見えるように【偽装】した杖をカナンに持たせる。

 そして館を出ようとしたところで伯爵が昼を一緒に摂ろう誘ってきた。

 断っても良いがその誘いを了承し食堂へ足を運ぶ。


「スメラギ殿、急にすまなかったな」

「いや、大丈夫だ」

「スメラギ様、先ほどは有難う御座いました」

「ああ、美味しいお茶だったよ」

「ほう、アリーとお茶を?」

 伯爵の目がキランと光ったような気がした。

「ゴホン、お茶だけだろうね?」

「父上、何を仰っておいでですか?」

「茶をもらっただけだ」

「それなら良いのだが……」

 何が良いのだか?これが親バカというやつなのだろうか?


 会話をしながらの食事は楽しいものだった。

 だが、ここでも俺の料理だけに毒が仕込まれていた。

 まぁ、だから何だ?といった感じなのだが、普通の人ならとっくに倒れているだろう。

 この時も俺の給仕は紅茶の時のメイドだった。

 犬耳ならぬ狼耳を生やしており顔は非常に整っているのだが、どうやら彼女が俺を殺そうとしているのは間違いないだろう。綺麗とかは関係ないけどな。

 真っ青な顔をしたメイドが最後まで給仕をした。

 彼女もドルチェ殺害犯の仲間なのだろうか?分からん。だが、分からんものは調べるまでだ。


 昼食を終え、やっと屋敷から出た俺とカナンはそのまま町も出る。

 追跡者は三人、館をでてからずっとつけてくる。

「あの、どこへ向かっているのでしょうか?」

「ボルフ大森林に行くつもりだ」

「え?」

 固まるカナン。俺はカナンに近づき隠者のマントを羽織ると彼女をお姫様抱っこする。

「ひゃ!?」

 そして走る!

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 やろうと思えばマッハを超えられる気がする。

 それほど今の俺は高速で走れるが、それだとカナンは間違いなく耐えられないだろう。

 だから【風魔法】を発動させ風圧を抑え、徐々に加速するように調整した。

 最高速は分からないが、マッハはでていない。

 十分ほどでボルフ大森林の入り口に到着した。

 こういう時に移動系のスキルがあればと思うけど、無い物ねだりだな。

 カナンは俺が走っている間、ズーっと俺の首にしがみ付いていたが今もそのままだ。

 胸が当たって嬉しい感触が伝わってくる。

「よし、行くぞ」

 ズーっとその感触を味わっていたいが、カナンを降ろして森の中に入っていく。

「え、あ、待って下さい!」

 暫く進むと魔物が現れる。

 オーガ、レベルは八十、これじゃない。シャッ。オーガを黒霧で一刀両断する。

「え、えぇぇぇぇぇぇっ!?」

 カナンが五月蠅い。これでは雑魚魔物を呼び寄せてしまう。

「カナン、五月蠅いぞ」

「でも、でも、オーガですよ!一体で村を壊滅させ、町なら大きな被害がでるほどの魔物ですよ!それをご主人様は」

「何を言っている。このボルフ大森林であんなのは雑魚中の雑魚、カナンには少なくともあのオーガの倍以上のレベルの魔物を倒してもらう」

「そそそそ、そんなことできませんよ!?」

「強くなりたくないのか?死ぬほどつらくても我慢すると言ったのは嘘か?」

「っ!?」

 俺はカナンに向き直り真っすぐ彼女の目を見る。

「いまなら引き返すことができる。引き返すか?」

「……やります!」

「分かった。安心しろ、俺は必ずカナンを守る」

「はいっ!」


 奥に進むのに魔物を避けるために【闇魔法】で闇の中にカナンを入れようとしたが、入らなかった。

 俺以外は入れない仕様のようだ。

 だからまたカナンをお姫様抱っこして森の中を駆ける。

 お姫様抱っこをするのは決してカナンの柔らかい胸が押し付けられるからではない!


 少し走ると丁度良い魔物を発見した。

 エルダートレント、レベルは二百三十でカナンが三段階目の限界突破をするのに丁度良いレベルだ。

 こいつを弱らせてトドメをカナンに刺させれば良いだろう。

 俺はカナンを降ろし黒霧を鞘から引き抜く。

 右足に力を込め一足飛びでエルダートレントに接敵し黒霧を横薙ぎする。

 そうするとエルダートレントは胴体が分かれそのまま横倒しになる。

「……しまった。手加減したつもりだが倒してしまった」

(おい、手加減ってどうすれば良いんだ?)

 今更ながら手加減できない自分に気が付いてしまった。

(……考えていなかったのか……『剣士』ならスキルで【手加減】を覚える可能性もあるが、『調理師』ではな……)

(スキルで【手加減】なんてあるのか?)

(あるぞ、ツクルも創ったらどうだ?)

 黒霧の提案通り俺は【手加減】を創ることにした。

 しかしここはボルフ大森林の中だ。

 スキルを創ったは良いが気絶したら洒落にならん。

 だが、今はそんなことを言っているといつまでたってもカナンのパワーレベリングができない。

 多分大丈夫だろと思ってやるしかない。

『スキル【手加減】を覚えました』

 それほど倦怠感を感じることなく【手加減】を手に入れた。

 この【手加減】のコストはそれほど多くなかったようだ。

 こうして考えると創るスキルには魔力の消費にかなりの差があるようだ。

 取り敢えずは気絶しなかったことに感謝しておこう。


 気持ちを切り替え再びエルダートレントを探すと一キロメートルほど離れたところにいたのでそこに向かう。

「カナン、俺の合図で一番威力のある【火魔法】を撃てるように準備をしておけ」

「はい!」

 カナンが何やら詠唱を始める。

 ……考えてみたら今まで詠唱なんてしたことがない。

 もしかして詠唱するのが一般的?

 カナンのパワーレベリングが終わったら聞いてみよう。

 再び黒霧を抜くと俺はエルダートレントに一瞬で接敵する。

 今度は【手加減】を発動させ黒霧を横に薙ぐと何やら今までと違った不完全燃焼のような感じがした。

 エルダートレントは【手加減】のおかげでまだ倒れておらず俺に向かって鞭のように枝を放つ。

 それを俺は軽く横に移動し躱すとカナンに合図をする。

「カナン、撃て!」

「はい。行け、ファイアジャベリン!」

 俺に気を取られていたエルダートレントはカナンの放ったファイアジャベリンの直撃を受けボワッと炎をあげて焼かれる。

 エルダートレントは火に弱いし元々ギリギリまで弱らせていたので絶叫のような奇妙な声をあげて倒れる。

「え、私……倒したのですか?」

 その次の瞬間、カナンはビクンと体を強張らせた。

 恐らく大量のレベルアップ文章が視界を埋め尽くしているのだろう。

 さて、これでカナンの第一関門は終わった。

 今回のエルダートレント討伐でカナンのレベル上限はなくなったはずだ。

 後は次から次と魔物を倒し、更に生死をかけた戦いを経験すればカナンはきっと強くなるだろう。

 そろそろ良いかな、ステータスを見てみるか。


 氏名:カナン

 ジョブ:魔術師 レベル九十二

 スキル:【火魔法】【魔力操作II】【魔力ブーストII】【風魔法】【木魔法】【魔力感知】【土魔法】【雷魔法】【氷魔法】

 能力:体力E、魔力C、腕力E、知力D、俊敏D、器用C、幸運D


 NEW ⇒ 【魔力感知】【土魔法】【魔力操作II】【雷魔法】【氷魔法】【魔力ブーストII】



 意外とレベルが上がらなかったな。

 俺の時は一気に百を超えたがあれはムスクレバードとのレベル差がもっとあったからか?

 違うか、今回は俺が手を貸しているから上がらなかったのかもしれないな。

 まぁ、レベルはこれから気合を入れて上げていけばよいだろう。

「ご主人様……私のレベルが九十二になってしまいました……」

「レベルが上がったのはついでだ。これからは自力で魔物を倒してもらうぞ」

「はい、頑張ります!」

「それと覚えた魔法を試す前に一つ聞きたい」

「何でしょうか?」

「魔法に詠唱は必要なのか?」

「え?……詠唱をするのが普通だと思いますが……まさかご主人様は」

「ああ、俺は詠唱したことがないな」

「その前に魔法も使えるのですかっ!?」

「俺は『調理師』だが、戦いも得意分野だ。メインは剣だが魔法もいくつか使えるぞ。それに【死霊召喚術】も魔法の一種だろ?」

「そ、そう言えば召喚をされていました……」

 驚愕の事実を突きつけられたような表情のカナン。

 そう言えば俺のことを全然話してなかったな。

 異世界人って言ったら驚くかな?驚くだろうな~。


 

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