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023_儲け

 


「スメラギ様!」

「そんなに大声を出さなくても聞こえているぞ、サイドル」

「おお、そうでしたな。私としたことが、失礼しました」

 サイドルの店に朝一で赴いたら待ってましたと言わんばかりに近づいてきた。

「カナン、今日も綺麗だね」

「有難う御座います」

 サイドルは上機嫌でカナンにも声をかける。

 相当良いことがあったのだろう。


 サイドルに連れられて応接室のような部屋でソファーに腰を下ろす。

 紅茶のような赤茶色の飲み物を出してもらったので口に近づけると良い香りが鼻をくすぐる。

 少しの間、香りを楽しむと口に含む。

 味の方も非常に上品で良い。

「早速ですが、明日からあのおにぎりを卸すことになりました。ですから作成をお願いします!」

「随分と気合が入っているな。良い取引ができたようだな」

「はい、あのおにぎりは冒険者ギルドに販売することにしました。何と一個二万ゴールドですぞ!」

「ほう、随分と高値で売りつけたな」

「二時間限定といえど食べることで能力向上が期待できる食べ物ですぞ、二万ゴールドでも安いくらいです!」

 二万ゴールドとなれば俺の取り分は半額の一万ゴールドだ。

 一日で百万ゴールド、三十日で三千万ゴールドもの大金となる。

 やべ~バブリーだわ。


「全部冒険者ギルドに売るのか?」

「はい、毎日百個、三十日間、冒険者ギルドへ独占的に卸す契約です」

「毎日百個も冒険者が消費できるのか?」

「できますとも、それに仮に余っても冒険者ギルドには大容量のアイテムボックスがありますから」

「なるほど、百個完売できなくても時間経過は気にしなくても良いわけだ」

「その通りです」

「傭兵ギルドは問題ないのか?」

「私のような商人は冒険者ギルドよりも傭兵ギルドとの繋がりが強いので冒険者ギルドよりも先に傭兵ギルドに伺いました。しかし傭兵ギルドは態度を保留しましたので冒険者ギルドに話を持ち込みました」

「なるほど、傭兵ギルドへの仁義は果たしたが、向こうが乗ってこなかったというわけか」

「その通りです。こういうことは即断即決が重要なのです」

 傭兵ギルドはおにぎりの独占購入の権利を得るチャンスを不意にし、冒険者ギルドはそのチャンスをものにしたわけか。

 あのおにぎりの効果で冒険者と傭兵に差が出たら悔しがるだろうな。


 俺は明日からの百個生産を了承し店を出ようとした。

「ご主人様、あのことをお伝えしなくても宜しいのですか?」

「おっと、そうだった」

「あのこと?どのようなことでしょうか?」

「ああ、俺とカナンは昨日からエイバス伯爵の館で世話になっている」

 口をあんぐり開け放心するサイドル。

「……本気ですか?」

 俺は首肯する。

「しかし、かな……」

「私なら大丈夫です。今はご主人様がいますから」

 エイバス伯爵の息子を殺したカナンが俺の奴隷となり、その俺がカナンを連れてエイバス伯爵の館でデカい顔をして泊まっている。

 事情を知らない者からすればカナンへの憎しみが実力行使として暴発する可能性もある。

 そのことは俺も最悪の事態として考えているが、エイバス伯爵の館は色々と真犯人を探すのに都合が良さそうなので逗留することにした。

 尤も、エイバス伯爵自身が俺たちに館に逗留し捜査をしてほしいと強く要望してきたという経緯があるがな。


 エイバス伯爵の館に戻る。

 廊下を歩いていると前方から見た顔が歩いてくる。

「何故貴様がここに居るのだ!?」

「……」

「ここは貴様のような下賤の者がいて良い場所ではない!」

「こんなところで大声を出している奴の方がよほど下品だな」

「なっ!」

 目の前で真っ赤な顔に変わるドックム。

 俺とカナンを先導していたメイドはどうしようといった感じでアタフタしているが、こういう時はメイドがこのドックム(馬鹿)を抑えるものだと思うのは俺だけかな?

 まぁ、若い女性だからそこまでのスキルがないのだろう。

「貴様!」

 ドックムは拳を振り上げ俺に向けてきた。

「ご主人様!?」

 ガッ、バキッ。

 俺はドックムの拳を顔で受けた。

 避けても良かったが、避ける価値もないヘロヘロな拳だ。

「ウガッ!?」

 レベル三百以上、『体力S』の俺と雑魚区分のドックム。

 殴られた方と殴った方、どちらがダメージを負うか言うまでもない。


 氏名:ドックム

 ジョブ:魔術師 レベル三十

 スキル:【風魔法】【魔力操作】【魔力ブースト】【魔力感知】

 能力:体力G、魔力D、腕力F、知力E、俊敏F、器用E、幸運G


 獣人は魔法の才が低いとされているらしいので、獣人の多いこの国で『魔術師』は貴重だ。

 このドックムは人族だが『魔術師』ということもあり増長しているようで、我慢をすることができない性格らしい。

 ドックムは真っ青に変色してしまった自分の拳を抑え苦痛に歪む顔で額には脂汗が浮かぶ。

 どう考えても物理的なダメージを俺に負わせる力などない。

 そこに騒ぎを聞きつけてきた数人の兵士が現れる。

「こ、こいつを捕まえろ!」

 ドックムが命じると兵士たちは剣を抜き俺に向ける。

 カナンが俺を庇おうとして俺の前に出るが、寧ろ邪魔なので押しのけ俺が前に出る。

「俺を捕らえる理由を聞こうか?」

「フザケルナッ!この私に怪我をさせたのだ、ただでは済まんぞ!?」

「で、俺はアンタに何をしたんだ?」

「こ、この拳を見ろ!骨が折れているぞ!」

「だから、俺はアンタに何をしたんだ?と聞いているんだ」

「ええい、こいつを早く捕らえろ!」

 俺を殴ったけど拳が潰れましたなんて恥ずかしくて言えるはずはないわな。

「何をしておるか!?」

 そこに現れたのはロッテンだ。

「貴様たち、御館様のお客人に剣を向けてタダですむと思っているのか!?」

「ロッテン!こいつは私の拳を潰したのだ、捕らえて牢に入れろ!?」

 難しい顔をしてロッテンは俺に事実確認をする。

 だから俺は殴られただけで何もしていないと言う。

 まぁ、普通は殴った方よりも殴られた方が怪我をするのだが、現状はドックムの方が怪我をしているのだからなかなか面倒な場面だ。

 ドックムはドックムで好きなように話を盛りロッテンに自分が被害者だと主張する。

 メイドやカナンには聞き取りをしなかったのはカナンは奴隷だし因縁深いようなので除外し、メイドは本当のことを言えばドックムの恨みを買うからだろう。

「二人の話は理解した。そのうえでドックムに聞く」

「何だ!?」

「そこのスメラギ殿が殴りかかってきたので拳で受け止めたというのは間違いないのだな?」

「そうだ!」

 無理のある言い訳だな。もう少しましな言い訳をすれば良いのに。

「その拳を見せて頂きたい」

「……」

 ドックムはシブシブといった感でロッテンに拳を見せる。

 それを見たロッテンは苦笑いをする。

「ドックム、この拳が本当にスメラギ殿の拳を受けたとは到底思えないぞ」

「な、なにを!?」

「そもそも私よりも遥かに強者であるスメラギ殿がドックムを殴ればその腕など吹き飛んでいるからだ」

「そんな馬鹿なことがあるか!?」

「ドックムは知らぬのだ。他の者のようにスメラギ殿を御し得ると思うとその程度の怪我ではすまぬぞ。素直に詫び、立ち去れ」

 ドックムは納得できない表情で抗議を繰り返す。

 ロッテンは何とか穏便に済ませようとドックムを宥めすかすしながら、俺に抑えてほしいと視線で訴えてくる。

 面倒だが、それ以上に面白そうだから俺はドックムを放置することに決めた。

 俺にチンピラをけしかけてきたのもコイツだろうから、コイツにはその行動に相応しい処罰を受けてもらわないとな。

 こんなところで斬り捨てるよりももっと面白い結末をコイツには用意してやろう。


 ごねるドックムを帰らせたロッテンは疲れた表情で俺に謝罪の意を表してきた。

「申し訳ない。今後はこのようなことがないように対策をすることを誓う」

「今回はロッテンの顔を立てて収めてやる」

 嘘ぴょ~ん。内心はドックムにどんな嫌がらせをしようかと考えてま~す!

「ああ、分かっている。すまなかった」

 生真面目な奴だ。俺の内心をしったら怒るだろうな~。言わないけど。


 

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