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016_散策

 


 アルグリアで一晩明かした。

 勿論、野宿などするわけがない!

 宿を取ったのだ、久しぶりのベッドは寝心地が悪かったがそれでも枝の上や木の穴の中より遥かに良い。

 宿代は一泊二食付きで三千ゴールド。金には余裕がある。

 あのクソジジイは一応は本物の金を俺に渡し、その価値もそこそこある。

 廃棄する予定の俺にこんな大金を態々渡す理由が分からないが、使えるのであればクソジジイに感謝することなく使おう。


 さて、あまり美味しくもない宿の朝食を摂ってから町中を散策する。

 金には余裕があるが、町中にいればいつかは無くなるので散策ついでに俺の職探しもしようと思う。

「なぁ、黒霧と喋るのに小声とは言え声を出すのは町中では変な奴と思われるんじゃないか?」

 広場の噴水の縁に座り町行く人を観察しながら黒霧に話かける。

『ならば念話系のスキルを得れば良いのではないか?』

「念話系のスキルか。よし、やってみるか」

 俺は【等価交換】を発動させ【念話】を創る。

 魔力が消費されるのが分かる。

 以前、元の世界に帰ることができないかと時空を移動できるようなスキルを創ろうとしたが、あまりにも魔力を消費したので俺がぶっ倒れるというハプニングがあった。

 その時に【詳細鑑定】の説明で命を大事にという文があったのを思い出した。

 もし黒霧が途中で『キャンセル』するように言わなかったらそのまま意識が飛び今頃俺は死んでいたかもしれない。

 本当にあの時は大変だった。

 それ以来、スキルの作成には着手していないが、【念話】程度なら大丈夫だろうと勝手に思うわけだ。

『スキル【念話】を覚えました』

 よし!

(お~い、黒霧、聞こえるか?)

『……聞こえるが、私にも【念話】がないと意味がないのでは?』

(む、……それなら付与系のスキルを創るか!)

 再び【等価交換】を発動し、スキルを付与できるスキルを創る。

 先ほどと同じように魔力が消費される。

 しかしまだ余裕がある感じの消費量だ。

 流石に時空を超えるようなスキルは消費魔力が半端ないのだと改めて思う。

『スキル【スキル付与】を覚えました』

 よし、早速【スキル付与】を発動させ【念話】を黒霧に付与する。

(おお、スキルを覚えたぞ!)

(よし、これで危ない人ではなくなるぞ!)


 頭の中で黒霧と話ができるようになったので今度は噴水の周りで商売をしている露店を見て回ることにした。

 露店は野菜や肉のような食糧から剣や槍などの武器まで色々な物を売る店が所狭しと出ていた。

 そう言えば宿屋の不味い料理で少しの野菜を食べただけでこの数ヶ月は野菜なんて食べてなかったな、と思い至る。

「若いの、うちの野菜は新鮮で美味しいぞ!」

「へ~、じゃぁ、その赤いのを十個とその葉っぱ系のを五玉もらえるかな」

「よっしゃ、トマトが一個五十ゴールドだから十個で五百ゴールドに、キャベツが一玉七十ゴールドなんで五玉で三百五十ゴールド、合わせて八百五十ゴールドだ」

 随分と安いし、野菜のネーミングが微妙だなと思いながら俺は銀貨を出して渡す。

 そしておつりと野菜を受け取るとトマトを一個手に取りガブリと頬張る。

「お、甘いね。美味しいよ、おっちゃん」

「嬉しいこと言ってくれるね~俺の兄貴の農場で収穫したトマトだぜ!」

 胸をはる野菜売りのおっちゃん。

 綺麗なお姉さんなら見ていたいが、おっちゃんではな。

 また買いにくると言い残し次の店に。

 今度は調味料系の店だ。

 塩に胡椒、他にも色々な調味料があるのだが、醤油や味噌などの日本的な調味料は見当たらないのでちょっと残念だ。

 しかし塩や胡椒などの調味料を買い込む。

 店主は恰幅の良いおばちゃんだったので娘はいないのかと聞きたかったが、我慢した。

 武器の店では剣を手に取って見る。

 鉄の剣や鋼鉄の剣がメインであまりぱっとする剣はなかったので冷やかしで終わってしまった。

 まぁ、俺には黒霧があるし、黒霧以上の剣は存在しないだろう。

(ふふふ)

 ん、何故か黒霧の嬉しそうな笑い声が聞こえたような?


 最後は穀物を売っている店だ。

 小麦や大麦、ライ麦などの麦類とそれらを粉にした物を売っている。

「お姉さん、米はないの?」

「あら、米を知っているの?この辺では滅多に出回らないからここには置いてないわ。ゴメンね」

 ウサミミの綺麗なお姉さんが店主のようだから聞いてみたけど、やっぱり米はないのか。

「でも、あの店なら置いていると思うわよ」

「あの店?」

「サイドル総合商店っていう店よ」

 ウサミミのお姉さんの店で情報料として小麦粉十袋とライ麦粉五袋を購入して、お礼を言ってサイドル総合商店に向かう。

 聞いた道を歩くと俺の後をつけてくる気配を感じる。

 殺気は感じないので放置するが、何者だ?

 暫く歩く。追跡者もそのままついてくる。

「ここがサイドル総合商店か、デカいな」

 ウサミミのお姉さんに教えてもらった店は五階建てのビルだった。

 他の建物よりも二回りほどデカいそのビルに入る。

「いらっしゃいニャン!サイドル総合商店にようこそニャン!」

 む、猫耳少女だと!しかもニャンだ!その容姿で語尾ニャンは反則だと思う!

「どうしたニャン?」

「う、あ、こ、……この店に米があると聞いてきたんだが?」

「米ニャンね、こっちニャン」

(なんだ、その猫人族に一目惚れか?)

(なっ!そそそそそんなわけあるか!?)

(ははは、その猫人族は奴隷だからもしかしたら購入できるぞ?)

(な、奴隷……だと?)

(首に奴隷の首輪が嵌っているだろ)

 確かに猫少女には首輪が嵌っているが、それが奴隷の首輪なのか?

「ここニャン」

 猫耳少女が案内してくれた場所には大量の袋が山積みになっていた。

「こっちが長細い品種ニャン、それでこっちが卵型の品種ニャン」

「長細いのはタイ米ぽいな……こっちの卵型の品種はジャポニカ米だ!」

「どうしたニャン?」

「いや……こっちの卵型の品種は一袋いくらかな?」

「それは六千ゴールドニャン」

 小麦粉が一袋二千ゴールドだったのに対し、同じ大きさのジャポニカ米が三倍の六千ゴールドとは中々に高価だな。

 だが、買う!

「卵型を十袋くれ」

「有難うニャン!」

「おやおや、これは有難う御座います」

 ダンディーなおじ様がニコニコと笑顔で話しかけてきた。

「ん、アンタは?」

「私は当サイドル総合商店の商会長をしております、サイドルと申します」

「その商会長さんが俺に何か用か?」

「いえいえ、米を購入頂きましたのでご挨拶と思ったまでで御座います。ところでお客様は初めてのご来店でしょうか?」

「ああ、昨日この町に着いたばかりだ」

「それはそれは、これからも当店を宜しくお願い致します」

(敵意は感じないが商人の笑顔には気を付けることだ)

(ああ、分かっている)

「米が美味かったらまた来るよ」

「はい、お待ちしております。プリルや、商品の用意を」

「はいニャン!」

 プリルと呼ばれた猫耳少女は重そうな米の袋を持ち上げようとする。

「大丈夫だ、ここからここまでの十袋をもらっていく」

 俺は【素材保管庫】を発動させ十袋を収納する。

「おや、お客様はアイテムボックス持ちでいらっしゃいましたか」

 アイテムボックス……【素材保管庫】と同機能のスキルだろう。

「そんなもんだ。会計を頼む」


 サイドルとプリルに付いて行く。

 プリルの尻尾がフリフリしている。

 掴んだら怒られるだろうか?ちょっとで良いから触らせてくれないかな……

 カウンターについた。カウンター越しに六万ゴールドを支払う。

 金貨を出したら普通に大銀貨四枚が返ってきた。

 これだけ大規模の店なら金貨も普通に使えるようだ。


 

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