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013_決着

 


 結局、エンペラードラゴンは俺のいる場所を的確に把握し、俺がどこに移動しようと執拗に追い回してきた。

 闇の中にいる為に直接的な攻撃はうけないが、いつまたあの光で攻撃してくるか分からないので俺も腹をくくって奴を退治することに決めた。

 退治することに決めたはよいが、その方法が思い浮かばないのだけどね。

 しかし【着火】が消されるとは思っていなかった。

 恐らくだが、あの光はエンペラードラゴンのスキルにある【覇動】ではないかと考える。

 絶対に消えないと思っていた【着火】の火が消されたことで俺に残された手は言うまでもなく【解体】だ。

 しかし【解体】は俺自身がエンペラードラゴンの体に触れなければならず、一部分でも俺の体を闇から外に出さなければならない。

 巨体なので触るのは大したことはないだろうが、問題はエンペラードラゴンが俺の居場所をほぼ正確に把握していることだ。

 もし近づいてエンペラードラゴンの体に触ろうとした時に【覇動】を放たれてはまた大打撃を受けること間違いなしだ。

 しかも半径数キロメートルにわたって自然が破壊されるおまけ付きだ。


「なぁ、アイツに近づいても大丈夫かな?」

『流石に何とも言えぬな』

「だよなぁ~」

 考えていても良い考えは浮かばなかった。

 だから俺は有用なスキルを手に入れるために森の中を移動しながら初見の魔物を倒しては肉をゲットした。

 そして手に入れたのが【気配遮断】【偽装】【逃げ足】【絶対防御】だ。

 何といっても【気配遮断】を得たのは大きい。

 他の三つも非常に助かるスキルだ。


 夜を待つ。

 決戦は闇が世界を支配する夜に限る!

 俺にとって闇は正にホームグラウンドだから態々昼間に戦うなんて不利なことはしない。


 エンペラードラゴンは相変わらず俺が移動した先にやってくる。

 俺からエンペラードラゴンを探す手間が省ける。

 俺は漆黒に染まった夜空を仰ぎ見て決意をする。

 今夜、この場所で、俺はエンペラードラゴンを倒す!

 準備はした。これで届かなかったら俺の『幸運EX』がクソ能力でしかなかったのだと思うしかない。

 ゆっくりと歩いてエンペラードラゴンに近づく。

 エンペラードラゴンは俺が近づいてきているのが分かるのか、殺気を強め警戒する。


 闇の中ではあるが、エンペラードラゴンの顔の真ん前に到着した。

 空中に浮いているが、闇が支配する夜なら俺だって空中だろうが、川の中だろうが行けるのだ。

 日が照っていると影の及ぶ範囲しか行けないので決戦の場に夜を選んだのは当然と言えるだろう。


 先ずは【俊足】を発動させエンペラードラゴンの背中に瞬間的に移動し闇から手を出しエンペラードラゴンの体に触ろうとした。

 しかしエンペラードラゴンはその巨体に似合わない動きを見せ俺が触ろうとした瞬間に体を下降させて回避する。

 そして俺がいた場所を狙った尻尾での薙ぎ払いを放つ。

 俺も闇の中に手を引っ込めその攻撃を回避する。


 やはり奴は俺の気配を敏感に感じ取っているようだ。

 スキルにはないが気配感知に優れ、そして危機回避に優れるようだ。

 まったく面倒な相手だ。


 次は【気配遮断】を使う!

 エンペラードラゴンは俺の気配が消えたのを敏感に感じ、キョロキョロと周囲を見回す。

 どうやら【気配遮断】はかなり有効らしい。

 だから俺はエンペラードラゴンの腹の下に手を出して【解体】を発動させようとした。

 しかしエンペラードラゴンはこれにも敏感に反応し急上昇を行う。

 エンペラードラゴンの危機回避能力が素晴らしいことは理解できた。

 悔しいがやっぱりエンペラードラゴンはこのボルフ大森林の主なのだと、最強の敵なのだと認識を新たにした。

『殺気が強いのだ。だから奴に分かってしまうのだ』

「殺気?俺がか?」

『ああ、気配を消してもスキルを発動させる瞬間にツクルは殺気を放ってしまうのだ』

「しかし【気配遮断】で気配は消しているはずだ。殺気だって気配だろ?」

『普通は【気配遮断】で殺気も消せるが、ツクルは【気配遮断】を使った後で殺気を放つために効果がないのだ。【気配遮断】は使用したときの気配を消し、その状態を維持するスキルだ。発動の後でも多少の気配なら消してくれるが、強い殺気などを放てば相手に分かってしまうのも当然のことだ』

 そんなこと言われれも殺気なんて出してる気はないし、無意識で放ってしまう殺気を消すなんて芸当は俺にはできないぞ。

 まいったな、どうすれば殺気を消せるのだろうか?

 と考え込んでいたのがいけなかった。

 エンペラードラゴンの体が金色に輝いたと同時に【野生の勘】の警鐘がなるが、考え込んでいたので反応が遅れたのだ。

 そしてその瞬間にエンペラードラゴンは【覇動】を放つ。

 俺は同時に【絶対防御】を発動させることで衝撃波によって弾き飛ばされはしたが【絶対防御】の効果でダメージはない。

「あっぶね~」

『戦闘中に考え事をするのはダメだぞ』

 黒霧が何もなかったかのように俺に注意をするが、そもそも黒霧の一言で俺が考え込んでしまったのだ。

 俺は黒霧の柄にデコピンをかます。

 抗議してくる黒霧を無視して再び自然破壊をしたエンペラードラゴンを見る。

 エンペラードラゴンは悠然と自然破壊した森の上を飛び俺の方に近づいてくる。

 そんなエンペラードラゴンのドヤ顔を見るとぶっ飛ばしてやりてーと思うのだが、今のところ手詰まりの感がある。

 さて、どうしたものか……


 悠然と俺の周囲を周回するエンペラードラゴン。

 鬱陶しいことこの上ない。

 そしてそんな時、俺はあることを思いついた。

 もしかするといけるかも知れないと嬉しくなる。


 地上に降りるとエンペラードラゴンも地上に降りると思ったら地上数メートルの空中でホバリングをする。

 地上に降りてくれば地面がある下側には逃げられないのにと舌打ちをするが、その程度のことは些細なことだ。

 先ほどと同じように【気配遮断】を発動させる。

 そしてエンペラードラゴンがキョロキョロする間に奴の背中の上に移動し闇から手を出す。

 ここまでは問題ない。

 【気配遮断】が仕事をしているのでエンペラードラゴンはまだ俺に気づいていない。

 エンペラードラゴンの鱗に触る。反応はない。

 体が無駄にデカいし、硬い鱗に守られているから感覚が鈍いのだろう。

 そして俺は【解体】を発動する。

 ズッゴーン、ドコドコ、ボッガーン!

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

『おお、やったな!』

 目の前にはエンペラードラゴンの肉や鱗や骨などの素材が山のように落ちている。

『しかしあんな使い方があるとはな、面白いことを考えるものだ』

 俺は殺気を消せない。訓練も何もしていないのに殺気を消すことなんてできない。

 だけどエンペラードラゴンは俺の殺気に反応しなかった。

 種を明かせば簡単なことだが、それを思いついた俺を褒めてやりたいぜ。

 ぼくちゃんよくやったね!

『【偽装】で殺気を偽装するなんて聞いたこともないぞ』

 もう、何で言うかな!

 これから俺が種明かしをしようとしていたのに!

 まぁ、良い。

 黒霧が言ったように俺は自分の殺気を【偽装】でエンペラードラゴンに対する愛情に偽装したのだ。

 愛情なら危機を覚えることはないだろうし、反応されても反撃されるようなことはないと思ったからだ。

 俺の作戦は成功し、殺気は見事に愛情に偽装されエンペラードラゴンは俺の【解体】を回避することはなかった。

 そして今に至るわけだ。

『レベルが上がりました』

 おっと、いつものように大物食いしたらレベルアップロールが止まらないぜ!

 今のうちに素材を全部回収してしまおう。

 しかし【素材保管庫】もチートだよな。

 生き物は収納することはできないけど、死体なら問題ないし上限があるようには思えない収納力だ。

 そしてその最後、俺はこんな場所にあるのは絶対にオカシイと言える物の前で立ち尽くす。

「これは……」

『ほう、こんなところにも出るのか』

「これのことを知っているのか?」

『ああ、知っているぞ。それはダンジョンを踏破した者の前に現れるクリアボーナスガチャだ!』

「……ガチャってこの世界にもあるんだ」

『ツクルの世界にもガチャがあるのか?』

「ああ、俺たちの世界では遊びだったけどな。これはクリアボーナスって言うのだから出てくるのは良いものなんだろ?」

『ほう、遊びか……このクリアボーナスガチャも遊びと言えばそうだが、出てくるものは良いものだぞ!』

「取り敢えずハンドルを回せばいいのか?」

『そうだ。ハンドルを回すと球が出てくる。その球の色でランクがあるのだ』

「ランク?で、そのランクとは?」

『球の色が幾つかあってな、赤色、黄色、青色、銀色、金色とあるのだ。赤色が一番低いランクで金色が一番高いランクとなる。出てくるものはスキルだったりアイテムだったりと色々だな。しかしこのボルフ大森林はダンジョンだったのだな、今初めて知ったぞ』

「そうか、ならハンドルを回すとするか」

『何が出るか楽しみだな』


 ダンジョンのクリアボーナスガチャのハンドルを回す。

 二回転ほどハンドルを回すとガチャリと球が落ちる音がして俺の目に球が映る。

「……」

『……』

「なぁ、これ黒色なんだけど?」

『私の知っているガチャは赤色から金色しかなかったが……数百年の間にダンジョンの仕様が変わったのか?』

 どうやら黒霧でも黒色の球が出てくることは知らなかったようだ。

 昔の剣聖だったとは聞いていたが、まさか死んで数百年も経っているとは思わなかったぞ。

 それは良いのだが、この黒色の球をどうしよう……

 黒色で一番最初に思い浮かべるのは呪い。他にも良いものが思い浮かばないのだけど?

『どうした、開けないのか?』

「何か呪われそうで躊躇する色だからな……」

『ははは、あのエンペラードラゴンを倒した英雄とも思えない弱気な発言だな』

「え、英雄って……」

『ツクルは誰もできなかったエンペラードラゴンを倒したのだ。誇ってよいのだ!』

「ま、まぁ、そうなんだけど……」

『こういったことは勢いだ!さぁ、開けるがよい!』

「お、おう……」

 パカ、ボフン!

 黒色の球を開けた瞬間、煙が出て俺は煙で咽てしまう。

「ゲホッ、ゲホッ」

『スキル【等価交換】を覚えました』

「ゲホッ、ほえ?」

 スキルの【等価交換】を覚えたようだ。

 等価交換と言えば某錬金系アニメで有名なフレーズだが……まぁ、良い、確認は後からにしよう。


 次はお馴染みの【究極調理】をする。

 今回は肉の塊が沢山あったし、一つの肉が物凄く大きいのでテール肉の塊を黒霧で切り分ける。

『私を包丁代わりに使うのは止めてくれないか?』

 だって銅の剣ではドラゴンの肉なんて切れないかな、って思ったんだよ。

「良いじゃないか、死んでいるとは言え、ドラゴンの肉を切るのだ、黒霧にはこれ以上の快感はないだろ?」

『ツクルは私を何だと思っているのだ!?』

「ん、剣?」

『ぐ、剣には変わりないが、私は神剣だぞ!』

「はいはい」

 俺は黒霧の抗議を受け流し切り分けたテール肉の一つを【究極調理】で調理する。

 出来上がった焼肉を一切れ口に放り込む。

 噛み噛み……うっ、美味い!何だこれ、メッチャ美味いんですけど!

『スキル【覇動】を覚えました』

 なにっ!?

 あの金色に光る【覇動】を覚えたと言うのか!?


 

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