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012_支配者

 


「なぁ、人がいる町や村って近くにないのか?」

 そう言えば、と気になっていたことを聞いてみた。

『知っているが、もしかして人がいる町を目指していたのか?』

「もしかしなくてもそうだよ」

『ツクル……残念なお知らせがある』

「な、何だよ」

『今ツクルがいる場所はボルフ大森林のほぼ中央部だ……』

「へ?」

『私はてっきり中央部にいるこの森の主を倒しに行くのかと思っていたぞ』

「……そんなわけあるかぁぁぁぁぁっ!」

 何でだよ、川を下れば森から抜けられると思っていたのに何で中央部に到着しちゃうんだよ!

 しかもこの森の主がいるだと?そんな化け物と戦いたいわけじゃないんだよ!

 主って言うのだからヘルベアーやムスクレパードよりも強いんだろ?ゼッテー強いよね?

『あ、そんな大声を出すから……』

「何だよ……っ!」

 その瞬間、【野生の勘】が警鐘をならす。

 そして【気配感知】にとても強い魔物の存在を感じた。

 その魔物は明らかに俺を目指して進んできている。

 乱立する大木が倒れながらこちらに向かってくるので直ぐに分かった。

 ヤバい、逃げなければと思ったが、あっという間に俺の目の前にまでやってきたその魔物は鼻息荒く気が高ぶっているようだ。

 鼻息が当たるのだけど……生暖かい。


 種族:エンペラードラゴン レベル三百

 スキル:【帝王のブレス】【闘神】【覇動】【超再生】【物理攻撃耐性】【魔法攻撃耐性】

 能力:体力S、魔力S、腕力EX、知力B、俊敏A、器用C、幸運E

 称号:魔境の支配者


 まぁ、言わなくても分かるだろうけどドラゴンだ。

 完全にロックオンされているよ。

『くくく、やる気満々だぞ?』

「何で嬉しそうに話すんだよ?」

『ツクルなら勝てるだろ?』

「馬鹿か!アイツはレベル三百だぞ!」

 しかも『腕力EX』ですが?


 トカゲに翼を付けて巨大にした感じのドラゴン。

 巨大な体は体高で五メートル以上ありそうだし、全長は多分三十メートルはある。

 金色の鱗が綺麗で背中には蝙蝠のような皮膜の翼が折りたたまれているので飛べるのだろう。

 てか、翼があり飛べるのなら態々森の木を薙ぎ倒さなくても飛べば良いのに。

「なぁ、隠者のコート着ている俺を何で認識しているんだ?」

『隠者のコートにも弱点はある。それは装備者よりもレベルが高い相手には認識されやすいってことだな。今回の場合、レベル差は九十もあるのだから殆ど効果がないと思って良いだろう』

「……」

 つかえねぇぇぇぇぇぇっ!

 強い奴から認識されないようにする方が大事だろ!

『安心しろ、レベルが同じなら確実に認識阻害が有効だ』

「そうかよ。で、これどうするんだ?戦っても勝てる見込みはないぞ?」

『私がいるのだ、安心しろ!』

 黒霧は胸を張る。胸なんてないけどね。見た目は刀だし。


 それはそうと目の前のエンペラードラゴンは左の前足を大きく振り上げ俺に向かって振り下ろすところだ。

 それを俺は後方に飛びのき躱すが半端ない破壊力なので地面にクレーターができ破壊された地面の破片が俺の方に飛んできた。

 破片は大きなものから小さなものまで色々あるが、俺は黒霧を抜き一閃し破片を防ぐ。

「で、どうすればあんな化け物を倒せるんだ?」

『くくく、普通に戦えば良いではないか?』

「馬鹿野郎!俺は剣なんて持って戦ったことなんて殆どないんだぞ!」

『何を言っているのだ、【剣術】スキルを持っているではないか?』

「【剣術】はお前を拾った時に手に入れたスキルだよ!【剣術】なんて使って戦った経験なんてないの!」

『……マジ?』

「マジ!」

『どどどどどーーーするんだ!?』

「だからそれを聞いているんだよ!」

 俺と黒霧が口論している間にエンペラードラゴンは大きく息を吸い込む仕草を行っていた。

 これは、と思った瞬間、エンペラードラゴンの口から金色の息が吐きだされた!

『Guraaaaaaaaaaaaaaaaa!』

 言うまでもなく、それはエンペラードラゴンの【帝王のブレス】であり、【野生の勘】が警鐘を鳴らしていたので俺はそのブレスを大きく飛びのくことで回避しようとしたが、あまりにも広範囲にわたって吐き出されたブレスを回避できずに激痛の海に落ちる。

 数秒なのか、数十秒なのか、俺の視界はぐにゃりと歪み激痛に喘ぐ。

 ムスクレパードやヘルベアーに弄ばれたことなんて子供の遊びに思えるほどの苦痛が全身を襲う。

 俺だってレベルが上がり『体力B』になっているし、スキルを覚えているのでブレスを受ける寸前で【屈強】【頑丈】をダブルで発動させたので『体力S』相当になっているはずだけど満身創痍を通り越して瀕死状態だ。

 今更だが【鉄壁】を発動させておけばよかったと後悔する。

『おい、生きているか?』

 生きているか?って、言わなくても分かるだろ?生きているさ。

 生きているのが不思議なほどに体の感覚がないけどな。

 お陰で喋ることもできない。何とか目を開けるとエンペラードラゴンが勝ち誇った顔しやがってノッシノッシと俺の方に近づいてくるのが見えた。

『おい、何とか言え!?』

 今は黒霧の相手をしている余裕はない。

 逃げないとヤバい!

 俺は【闇魔法】を発動させ闇の中に体を沈める。


 エンペラードラゴンは俺を逃がしたことに地団駄を踏み悔しがり、地団駄を踏むのを止めると俺がいたあたりの匂いを嗅ぎだした。

 【素材保管庫】から肉を口の中に放り込む。

 何度か経験のある咀嚼するのもつらい状況。

 十分ほどかかり唾で柔らかくした肉を噛みしめる。

 HPバーがあったら俺の残りHPは間違いなく一パーセント未満だったことだろう。

 美味しいはずの肉なのに味なんて伝わってこない。

 やっとのことで飲み込んで体の感覚が復活するのが分かる。

 そして感覚がなかったから痛みも感じていなかったのだが、ここで全身を襲う激痛。

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

『おい、大丈夫なのか?』

「……ぐっ、大丈夫の……ように……見える……のか?」

『瀕死から満身創痍にレベルアップした感じだな』

「……喋らすな、ぐっ、……辛いんだ」

 再び肉を咀嚼する。今回の肉も咀嚼するのに時間がかかる。しかも激痛付きだ。


 三つ目、四つ目……今回は五つ目を頬張ってやっと全回復した。

 エンペラードラゴンはまだ俺が闇に潜った場所付近でウロウロしている。

「あれをどうしたものかな?」

『再チャレンジしないのか?』

「やられっぱなしは気に入らないからやり返すけど、何をお見舞いしてやろうかな?先ずは無難に【湧き水】でいくか」

『私は使わないのか?』

「接近戦では勝てる気がしないからな、今度【剣術】を教えてくれよ」

『ふむ、仕方がないか。良いだろう、私の特訓はきついぞ!』

「OK~、んじゃアイツに先ずは【湧き水】っと」

 ゴーーーッと激流がエンペラードラゴンを捕らえるが、エンペラードラゴンの巨体に対しては【湧き水】の激流でも小川程度の感じらしくまったく意に介さない。

『効いてないようだが?』

「まぁ、予想はしていた」

 見えない俺から攻撃されたのが分かったのかエンペラードラゴンは怒りの表情で地面を掘る。

 しかし俺は地面の中にいるわけではないので、いくら地面を掘ろうと俺に辿り着くことはない。


「次は【着火】だ!」

 俺程度なら一飲みにできる巨大な口がある顔に火をつける。

 流石にこれは効いているのかのたうち回って火を消そうとするエンペラードラゴン。

 ソードリーパーの例もあるから数時間はこれで放置をしようと思った時だ、エンペラードラゴンの黄金色した体が光出す。

 【野生の勘】が警鐘を鳴らす。

「何だ?」

『嫌な予感がするな』

 俺は【俊足】を発動させその場から逃げだす。

 ある程度走ったところで逃げ切れたかと油断したのがいけなかった。

 物凄い衝撃が俺を襲う。

 どうやらエンペラードラゴンが光を全方位に放ったことによる衝撃波のようだ。

「ぐぁぁぁぁぁっ!」

 体勢を制御できずに闇の中を錐揉み状態で数十メートル吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされている時に【鉄壁】を発動したのでそこからの追加ダメージはなかったが、それでも相当なダメージを受けてしまった。

 錐揉み状態からやっと止まったは良いが全身に激痛が走る。

 何で闇の中に攻撃が届くのかと舌打ちをして肉を頬張り、三切れで完全回復する。

 エンペラードラゴンの巨体を視認するとかなり小さいので数百メートルは離れているだろう。

 その光景を見た俺は絶句した。

 別にエンペラードラゴンが翼を広げ空を飛んでいる光景を見て絶句したわけではない。

 エンペラードラゴンの真下、先ほどまで俺と奴がいたであろう場所に巨大な穴ができていたのを見て絶句したのだ。

 今の衝撃波で地面や川を抉り、広範囲にわたって森林を破壊したようだ。

 川の水がその巨大な穴に落ち、まるで滝のようになっている。

それほど深く巨大な穴が出来ているのだ。

 自然破壊反対!エンペラードラゴンは世界の敵だ!


 空中でホバリングしているエンペラードラゴンに再び視線を戻す。

「っ!」

 遠くてハッキリとは分からないが、エンペラードラゴンが俺の方を見ている気がした。

「なぁ、アイツは俺がどこにいるのか分かるのか?」

『さーな、しかし奴のしつこさは折り紙付きだぞ。過去に何体もの魔物が奴のテリトリーに侵入しては逃げまわったが、絶対に逃すことはなかった』

「……執念深いやっちゃなぁ~」

『もしかしたら森を抜けても追いかけてくるんじゃないか?』

「マジ?」

『マジだ』


 

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