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010_邂逅

 


 川を下り始めて早一ヶ月。

 歩きとは言え、未だ森が続く。

 このボルフ大森林はもしかして地球のアマゾン熱帯雨林よりも大きい森なのだろうか?

 もしそうなら俺はいつになったら人間世界に辿り着けるのだろうか?

 折れそうになる心をなんとか保ち今日も河原を進む。


 日がまた落ちる。

 最近は昼間でも寒さが身に染みるので、日が落ちると震えるほどに気温が下がる。

 もうすぐ冬がくるのだと感じるが、今の俺の格好は完全に原始人だ。

 髪の毛は伸びてボサボサだしボルフ大森林に飛ばされてすぐに俺の着ていた服は服の意味をなさなくなってしまったので、今は腰付近に括り付けて大事な箇所が見えないようにするだけで精一杯の存在となり下がった。

 ただ、救いは闇の中に入れば寒さも感じないので、最近は殆ど闇の中で暮らしている。

 一ヶ月も誰とも喋っていないので流石の俺も寂しさがこみ上げてくる。

 誰かいないかな……この際、魔物でも良いから俺を癒してくれる存在がほしい。

 ラノベではスライムとかフェンリルなどを主人公がテイムするイベントがあるのでそれを期待している今日この頃です。


 そう言えば、この世界には獣人はいるのだろうか?エルフやドワーフなどの種族はいるのだろうか?

 召喚された神殿では見た目は俺たち地球人と変わらないつまらない奴らばかりだったが、異世界だし魔法もある世界なので期待して良いと思うんだ。

 てか、絶対にケモミミをゲットするんだ!

 こんなに苦労しているんだからケモミミをモフモフするくらい許されると思う!


 闇の中は快適だ。

 眠くなったら寝て、体力があれば先に進む。

 魔物が出てきたら倒して腹が減ったら食事をする。

 先ほど、ヘルベアーと遭遇したので背中にタッチして【解体】してやった。

 俺も大分チートな奴になってしまったが、ヘルベアーに半殺しにされた時もあったと懐かしささえ覚える。


 そうそう、ソードリーパーをやっと倒したよ。

 闇の中で【俊足】を発動させ一気に距離を縮め【着火】で火だるまにする。

 ソードリーパーはその状態でも【転移術】を使って瞬間移動するが、奴が一回の【転移術】で移動する距離は百五十メートル程度なので俺の【気配感知】の範囲内だ。

 これは散々追いかけっこをしたので確実な情報だ。

 【着火】が成功しているのでソードリーパーとの距離を五十メートルほどに保ち様子を見る。

 俺の【着火】でつけた火は俺が消そうと思うか対象が倒れるまで燃え続けるので、ソードリーパーは火によって焼かれいつかは倒れるだろうと考えている。

 そしてその考えは正しく、ソードリーパーは三時間ほど焼かれた後に倒れた。

 なかなかにしぶとい魔物だったが、初討伐できた!

 そして【解体】するとソードリーパーが持っていた不気味な剣と漆黒のマント、そして食べることのできる部位として心臓が手に入った。

 まさか心臓がくるとは思っていなかったので驚いたが、ソウルイーターの目玉に比べるとまだましだ。

 ソードリーパーの心臓を【究極調理】で調理する。


 死神の心臓焼き ⇒ スキル【剣術】を覚えちゃって、病気や怪我、それに状態異常も治しちゃうから!


 う~ん、【剣術】は嬉しいけど……できれば【転移術】か【腐食魔法】がほしかった。

 【転移術】は普通に有用だし、【腐食魔法】はなんか使ってみたいな~なんて思ったからだ。

 贅沢は言わないけど……まぁ、いいや。

 パクリ。いつもの文章が視界に現れ【剣術】ゲットだ。


 そして、とうとう俺のこの体を覆うことのできるマントが手に入った!

 原始人的な見た目におさらばできる時がきたのだ!

 それと……不気味な剣が手に入る。

 これは俺に剣での戦闘をしろという天啓なのだろうか?【剣術】は手に入れているので戦闘力は確実に上がるだろうけど、銅の剣でちょっと戦っただけでほとんど戦ったことなんてないからな~。

 でもこの不気味な剣を装備したら呪われました!なんてことになったら洒落にならないし、【詳細鑑定】で確認しておこう。


 死神剣 ⇒ 剣聖が無念の最期を迎え生まれた神剣。剣聖の意思が造り出したこの剣は折れず、欠けず、曲がらず、決して切れ味が落ちることはない。所持者を選ぶと言われている。


 随分と長い説明だが、呪われるってことはなさそうだ。

 問題は俺に装備ができるか?ってことだけど、こればっかりは剣に選ばれる必要があるってことだよな?

 コートの方はどうかな?


 隠者のコート ⇒ またの名を死神のコートとも言われ、装備者よりレベルの低い生者には認識できなくなる。破れず、汚れず、魔法を完全に遮断する。


 ……これは……闇の中に隠れて移動できる俺には微妙なコートだな。

 しかしマントではなくコートなんだ……魔法を遮断するってあるけど【着火】は魔法じゃないから火がついたのかな?

 何にしろ、剣とコートは装備決定だ。

 マイナス効果や呪いがないのだから問題ない。


 俺はコートを身に纏い剣の鞘の付属されているベルトを腰に巻き付けた。

 今まで腰蓑以下のボロ布を腰に巻いていただけだったから少し人間的に進化した気がした。

 今はこんな格好だけど必ず文明を取り戻してみせる!

 そんなことを思って未来を渇望していた俺に異変が、いや、俺じゃなくて俺の腰に携えている剣に異変が起きた!

 細かく剣が振動してカタカタ音を立てているのだ。

「何だよこれ!?」

 俺は剣の振動を抑え込もうと剣の鞘と柄を持ち必死に力を込める。

 今の俺の力はボアグノン程度の魔物なら殴って爆散させるほどの力があるのに振動は抑え込むことができず、逆に酷くなっていく。

 そしてとうとう剣が鞘から飛び出し眩しく光る。

「うわっ!」

 俺はその光を直視できずに目を覆う。

『貴殿が強者か?』

 どこからか声がしたような気がした。

 眩しくて眩暈でも起こしたのだろう、こんなところに人がいるわけがない。

 何と言ってもここはボルフ大森林の中で魔物は闊歩するけど人間は誰もいない魔境なんだ。

 俺もとうとう精神的に追い込まれてきたようだ。

 こんなところで空耳が聞こえるなんて……そろそろ限界なのかもしれないな。

『無視をするなっ!?』

「へ?……」

 怒鳴られ目を開けると目の前にはあの不気味な剣が空中に浮いていた。

 俺はキョロキョロと周囲を見回し声の主を探す。

『目の前の剣だ!』

「……やっぱり……そうだよねぇ~」

 目の前に浮かぶ剣が喋っていることは想像がついた。

 でもここはテンプレとして周囲を確認しなければと本能が訴えたのだ。

 あの説明を読んでいたからこの不気味な剣には意思があると思っていたけど、まさか喋るとは思っていなかったよ。

『ツンツンするな!』

 思わず指で剣をツンツンしてみたが、どうやらツンツンはお気に召さなかったようだ。

 一通り観察する。見た目は不気味な剣にしか見えない。

 喋る剣だからインテリジェンスソードというものなのだろうか?

『ジロジロ見るでない!まったく、貴殿は私を何だと思っているのだ!?』

「……何って、剣じゃないの?」

『剣は剣でも神剣なんだぞ!』

 あ~そう言えば説明に神剣って書いてあったわ。

『これから貴殿が私の持ち主として相応しいか質問をする。嘘を答えても分かるからな』

「……質問ですか?魔力をよこせ!わ~って流れじゃないんだ?」

『だから私を何だと思っているのだ!?』

「不気味な剣?」

『キィィィィッ!』

 ヒステリックな剣だな。てか声は若い女性のようだからあの日なのか?

『……もういい。質問するぞ』

「その質問に答えると君をゲットできるの?」

『私を所持する資質があるのであれば私の力を貸そう。しかし所持者として不適格と判断したなら私は次の所持者を探す旅に出る!』

「次の所持者を探すって……見た目呪われていそうな不気味な剣になんて誰も手を出さないとおもうけどなぁ~」

『ふ、この姿は仮の姿だ。私の姿は持ち主次第でいかようにでも変わるのだ!』

「ほ~。と言うと刀にもなれるの?」

『所持者と認めた者が心に思い描く剣となろう!』

「おおお~それは凄いな!」

『私の凄さが分かったか!?ならば質問をするぞ!』

「はい!」

 どんな質問なんだろう?ちょっとドキドキするな。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 氏名:ツクル・スメラギ

 ジョブ:調理師・レベル二百八

 スキル一:【究極調理】【着火】【解体】【詳細鑑定】【素材保管庫】【湧き水】【道具整備】【食材探知】

 スキル二:【暗視】【俊足】【投擲】【気配感知】【臭覚強化】【野生の勘】【連携】【集団行動】【囁き】【怪力】【屈強】【剛腕】【頑丈】【鉄壁】【格闘術】【直感】【剣術】

 スキル三:【木魔法】【風魔法】【影縫い】【闇魔法】【死霊召喚術】【土魔法】

 能力:体力B、魔力B、腕力A、知力A、俊敏A、器用EX、幸運EX

 称号:変出者


 頑丈 ⇒ え~っと……頑丈です。

 鉄壁 ⇒ 一時的にどんな攻撃を受けてもダメージはないけど、それでいいの?

 格闘術 ⇒ おのれの拳で語るのみ!

 直感 ⇒ 勘が良くなるけど、【野生の勘】の方が上位だから……

 死霊召喚術 ⇒ わーい、友達が一杯だ~。これでボッチは卒業だね!

 土魔法 ⇒ 土を操る魔法が使えちゃうよ。これで君の家でも建ててみる?

 剣術 ⇒ 切り捨て御免!切り裂き魔とならないでね?


 

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