プロローグ
「はぁ…はぁ…!!」
気だるい夏の日の7月22日 午前10時13分。
パニックになっている町のど真ん中。
発狂する人、天に祈る人、恋人との最後の逢瀬を味わう者の中に俺は居た。
痛む足を叱咤してその地獄を走り抜ける。
全てを追い越してしまう景色の中、誰もが絶望に泣き喚き、涙し、それでも生きることを諦められず声を上げる。
俺だってそうだ。
せっかく高校を卒業した後、俺は有名な会社の営業に配属され、これからという時期の中、あんなことが起きるなんて、それこそ夢にも思わなかったんだから。
ーーそれは唐突にやってきた。
気だるい夏の日の7月21日 午後1時34分。
地球に住むすべての人たちがおそらくその放送に注目したことだろう。
テレビに映し出されるのはNASU宇宙センターによる全国へ向けた放送。
そこに映し出された最高責任者と名乗った中年の男性が放った一言に俺は息を止めた。
『これを見ている方は、落ち着いて聞いてください』
『ただいま、NASU宇宙センターの人工衛星さくら21号より観測した情報です』
『現在、地球に向けて大量の大型飛来物が第三宇宙速度で接近中、太陽が起こす衛星軌道上を真っ直ぐに移動する軌道でこのままでは地球へ直撃します』
『NASUが計測した衝突確率は97%で、明日、21日正午で衝突するとの計測を出しました』
『結論を述べますーー』
『明日の正午、地球に大量の隕石が衝突し、地球は消滅します』
俺の後ろに居た父も、台所で食器を洗っていた母も、俺の膝でゲームをしていた妹も、耳元に当てた携帯の向こうにいた親友も、その放送を見ていた誰かも。
誰もが耳を疑った。
嘘ではないのかと勘繰った。
これはイタズラなのではないかと考えた。
頭がいい人間から先に時計が動く。
時計の針が刻一刻と回る。
俺の中で止まっていた時間が、動く。
世界が、動く。
それは小さな星が消える22時間 26分前の出来事だった。
よろしくお願いします。




