1日目
1日目
寒い日の夜だった。ひとりぼっちで大学からの帰宅途中、身を震わせながら夜空を見上げていたら、おかしな、星にも月にも似つかない金平糖のようなものが低く空に浮かんでいるのが見えた。何だろう?とじっと首を上に傾げていたら、それは唐突にも私の元へと落ちてきた。
小さく見えた金平糖のようなものも、近くで見てみると子猫くらいのサイズの紫色をした隕石のようだった。
相当な勢いで落ちてきたためか、湯気がもうもうと出ている。私はそれを茫然と見ていた。
何だろう、これは。
2分くらい見とれていただろうか。
それは、湯気をあげるのを止め、もにょもにょと何かに変化しつつあるように見えた。
もにょり、ぐにゃり、バキバキバキ!!と最後に派手な音を鳴らして出来上がった形、それは人型で。ついでに羽根も生えていて…。しかもちょっとゆるキャラみたいで可愛くって…。
「・・・宇宙人?」思わず呟いた彼女にその宇宙人は答えた。
「gじgんjふkつxhs…えっと日本語はこれだ!・・・あ、ぼくは妖精だよ!」
「え?」
「え?って、僕は妖精だよ!君に会いに来たんだよ!」
理解が追い付かない。空から降ってくるなんて、ラピュタの亜種?
なんで妖精?なんで此処に?なんで私の所に?
相当な量の疑問が脳内をかき混ぜるけれど、今起きていることが夢じゃないのは確認できた。
だって、こんなリアルな夢がある訳ないもの!!
「ねぇミツバちゃん、僕に名前をつけて!」
「良いけど…ていうかなんで私の名前を知ってるんですか!?」
「当たり前だよ!僕は君に呼ばれて此処地球まで来たんだもん!」
「え?」
またも理解が出来ない。私が、呼んだ?いつ?どうやって妖精を?
「うん。昨日の晩、泣きながら僕を呼んだのは紛れもなくミツバちゃんだよ。」
ああそっか、思い出した。昨晩泣きながら腕を切り刻んでいた時、
お友達が欲しい、独りぼっちはもう嫌だと泣き叫んでいたことを。
私は大学に馴染めず講習も独り、移動も独り、ご飯も独り、
あげくには根暗女と嘲笑されている。
つらくて、つらくて独りトイレで過呼吸を起こすことも多くて。
精神科で貰ったお薬を飲んで頑張って登校していたけれど、
最近は物を捨てられたりといじめもあって、
お陰で最近は学校から足が遠のいているんだ。
そっか。うん。これが天の助けなのかなぁ。
不可思議なことを目前にすると、人間って意外と適応が早いらしい。
「来てくれてありがとう。君が元気だから私まで楽しくなっちゃうな。で、名前、何にしよっか。」
「ぼく響きの良い名前が良いな!」
「あはは、そっか、そしたらとりあえず寒いからお家に帰りながら考えよっか。」
そうして手を繋ぎながらお家へ向かう二人(?)。
「わぁい!!ミツバちゃんに名前を付けて貰えるなんて僕しあわせ!」
「そんなに?ふふふ、そういえばその姿じゃ他の人に見つかったら大変だよ?」
「ううん、大丈夫!僕は他人には普通の人間の男に見えるようになってるから!」
「そっか、ちょっと安心したよ(笑)さて、名前だけど、要なんてどうかな?」
「わぁ素敵な名前!ミツバちゃんありがとう僕すっごく嬉しい!要、要…えへへ、良い名前だね。」
そういって繋いだ方の手を振り振りする要はとても可愛くって、私まで嬉しくなっちゃうな。
「お家着いたよ。マンションの201号室が私の家だから、覚えておいてね。」
「はーい!!」
そう元気よく妖精の要はお家へお邪魔しますと言って入るのでした。
「はぁぁ、宇宙から飛んで来たから僕ちょっと疲れちゃった!」
「お布団セミダブルだから二人で眠れるよ。私お風呂に入るから先に寝てて良いからね。」
「ふわぁぁあい!」眠そうな返事。
お風呂から上がると、すぅすぅと寝息を立てている要に微笑みながら、
ミツバもお布団へ入りこむのでした。