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廃迷宮-ハイメイキュウ-  作者: 柚木 空音
4/11

カゲに生きる者


「近くね!?!?」

全力で突っ込んだ。

エデンから歩く事五分。松本がお世話になっているらしいスーパーの入り口で待機する。どうやら話によるとここのスーパーの店長に万引き犯の映像を見せて貰っているらしい。

暫くすると、中から松本とエプロンを着けた背の小さな髪の長い女の子が出てきた。

「またせたな」

「それよりその人誰?」

まず思っていたことを質問してみた。

「ああ!桜花ちゃんとリクたそ初対面だったねー」

横から雛子ちゃんが言う。

「リクたそ?」

「こいつは璃空。ここの店長。因みに能力は…」

て、店長…!?可愛い…!!

今度おかんにおつかい頼まれたら此処まで買いに行こうかな…!?

何と言うかファンシーな縫いぐるみみたいで抱き締めたくなる。

「やあやあそう思ってくれてボクは嬉しいよ」

「え!?」

心の中を見透かされた?てかボクっ子!?

「えっと…桜花、こいつは神なんだ。あとオスだ」

で、でた…厨ニ乙……。てかオスってもしかして男の娘?

「ってもボクは存在しないんだ」

「どういう意味ですか?男ってマジですか?」

「神に性別は存在しないのだよ」

もう意味分からない。私の頭の中でこの物語の終了のお知らせが流れた…ような気がした。

「お、桜花、そう顔を青くするなって!な、な!?璃空は男だよ、うん!」

「そうだよ桜花ちゃん、まずはリクたその話を最後まで聞いてからじゃないと」

「ま、俺も始めて聞かされた時はサツに通報しようかと思ったけどな」

「俺たちが狂ってるんじゃない!この世界が狂ってるんだ!!!」

周りのメンバーが熱い目で私を見つめてくる。とても暑苦しいです。しかも最後のセリフは某アニメのパクリですよね??

「分かったわ、話し続けてください」

「そのセリフを待っていたのだ…っ!」

璃空さんは咳払いをすると一枚の印刷された紙をポケットから出した。

「犯人だ」

「…早くしないと遠くへ逃げちゃうわよ?」

一応ツッコんだ。ツッコミ不在程の恐怖はないからね。

「えっと、まあ…それは問題無い…?」

「疑問形!?」

「とりあえず話を進めよう。奴は(ゴースト)というものに憑かれている。人の精神が黒く濁ったものと表現するべきかな?」

「は、はあ…」

いきなり非日常性をぶち込んできて驚きました。

「ボクは能力を持つだけで実体を持たない、(ゴースト)の一種だ。唯、ちょいと特殊でこの世界を支配する神の力をランダムに落とした」

「え、じゃあ松本が言ってた“偉い人”って…?」

「ああ、こいつだ」

「なるほどね…」

納得がいった。

「実体を持たない、ってことは…」

私はそう呟き璃空さんに手を伸ばした。しかし、私の右手は璃空さんをすり抜けず何にもなかったようにその体に触れた。

「触れられる?」

「実体持たないままじゃスーパーの店長なんて出来ないよ。これはボク自身の入れ物さ」

「…なるほど?」

「大丈夫!?桜花混乱してない!?!?」

正直ついていけてません。

「まあまあ慣れだよ。じゃ話は此処までにして仕事に行って来てもらおう。ボクは激しい運動は出来ないから」

璃空さんはトランシーバーを人数分出し、そして松本に渡した。

「ご武運を」

「任せろって。僕たちに出来ない事はない」

「無理したら隣町のパンケーキ奢りだよ」

「大丈夫だ、無理なんてしないよ」

「あ、そうだ桜花」

璃空さんが唐突に私に声をかけた。

「何でしょうか?」

「君の能力は未完成だよ」

何の事を言っているか私には分からなかった。


✳︎


「で、いつもは皆どうやって探しているの?」

近くにした風見さんに尋ねた。

「勘ですよ」

「はぁ!?勘!?!?」

「桜花ちゃん…驚きすぎ…」

「まあまあ見てなって」

松本が先程璃空さんから渡された紙を広げ、私の前に突き出した。

「な、何よ…」

「見えますか?」

「人を霊能力者みたいに呼ばないでよ。心霊写真?」

どう見ても真っ白な紙にしか見えない。

「違いますよ!犯人像です!」

風見さんが溜息をついた。すまない、私の頭では現状を把握しきれない。

「まず、ひとつ。璃空の能力は能力のコピーだ。お前は騙されている」

松本が指を立てながらガードレールに腰掛けた。

「あれがコピーならあの時心を読んだのは誰の能力なのよ。まさか松本?」

「いや、それはありえない。何せ僕の能力は」

「コイツバカなので俺が話しますね」

「おっいてっめぇ人がこれから能力自慢するのに邪魔を」

「人の心を読んだのは貴方自身の能力のコピーです」

「僕の話を聞けッ!!!」

何だか物凄いカオスな空間の中、突如視界が空気を切った気がした。

軽い風圧を瞼の裏に感じ、目を開けると、ついさっきまでガードレールに腰掛けていた彼が風見さんを腕ひししていた。

「痛いです。離してください松本」

「絶対嫌だ」

「桜花ちゃん、そんな目で見ないでください。コイツの能力は」

「時間停止だ!」

ドヤ顔で叫ばれても私困るよ。だってほら…近所のおばさんがゴミを見る目で私たちを見ているし。なにせこの人たちの仲間だと思われるのが嫌だ。

チクチク刺さる視線が痛いです…。

「そんな訳で俺たちが無理やり君の能力を覚醒させたい」

男2人が歩道に横たわって腕ひしをしているシュールな光景の中松本が言った。

「無理矢理?覚醒?」

「大丈夫」

横から雛子ちゃんが入って笑顔を咲かせた。

「私もこの能力に困ってひとりでいた所をこの人たちに助けてもらったし、能力が覚醒してからは世界は随分変わったけど変人パワーでちっとも怖くも痛くもなかったよ!」

「貶されてる!?」

いつの間に背後に立たれたのか、目を手で隠された。手の形からして風見さんだろうか。その両手をはひんやりと冷たかった。

「23秒だけ目を瞑ってください」

「何故そんなに中途半端なの…?」

「素数を数えると落ち着くと偉い人が」

「いやいやそれ違くないですか!?」

刹那、どこか遠いところへ引きづりこまれる様な

感覚と共にまたあの急降下が闇に染めて私を包む。

走馬灯のようにノイズ混じりの映像が脳裏を焦がしていく。重力が私の三半規管を弄び、視界が捻れた。

やばい…吐く…。

体が限界を感じた時、夢の中にでてきたあの黒マントのおじさんが現れた。

「あ、あの…」

私が声を出すと影の罹った闇色の視界は白へと移っていった。

黒マントのおじさんが私の方へ歩み寄る。てかおじさんおじさん言ってたけど皺は無く、顔は20代に見えた。

「誰がおじさんだ」

「話した!?」

「口があるんだから話すよ!?」

マントのフードを取り、膝に手をつき私の顔を覗き込みながら言った。

「な、何ですか…顔近いですよ?貴方の死相なんか見ても誰も得しませんし」

「うるせえ、俺は目が悪いんだ」

「老眼!?」

そう言ったらチョップされた。痛い。

思いついた。これをオジチョップと命名しよう。

「で、貴方は誰なのよ」

「俺は混沌の支配…」

「もしもし警察ですか!?」

「ケータイ出すな!ここは圏外だ!演技でも傷付くからやめてください!」

「で、貴方誰?」

「お前の親戚って言ったら分かるか?」

「こんな変な人と血縁関係なんて嫌です」

「そう言わずに聞いてくれ。お前…桜花が力を得たのはとある理由があるんだ。今は言えない。この力は永久では無くある日を過ぎると記憶ごと消えて別次元の桜花の記憶が上書きされる。辛いのは今だけだ」

「ちょっと待ってください、何を言ってるか分からないです。1文が長いです。日本語でお願いします」

「え、ちょ、分からないか!?じゃ、あれだ!そうそう。エデン、あの人たちと協力して“世界消失”から皆を救ってくれ」

「は、はあっ…!?」

黒マントはそして私を抱き締めた。

「ちょっ、破廉恥なっ…!ほぼ初対面の女にハグするなんてどんな神経しているのよ!?離しなさい!」

「桜花は人を殺してない、むしろ窮地を救った英雄だ。俺が保証する」

腕の中でもがくたび、服から伝わる温かさが染みて胸が苦しくなっていくような気がした。

「この世界から目を覚ますとき、見たくないものを見るだろう。だけど安心して。それはエデンの皆にだって見えてるから」

「…?う、うん」

「さあ、時間だ。」

「やっと時間ですか、23秒長いっすね」

「酷いよ!?じゃ、最後に俺の名前は」

黒マントは耳もとで言うと灰の様に散った。僅かに耳に残る“音葉”という彼の名は古い記憶を溶かしていくようだった。

そして意識は再び23秒後へと繋ぐ。


あと六話ぐらいしたら面白くなります(多分)

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