8020E列車 バトンタッチ
お昼を食べると結構眠くなった。でも、駅の近くで食べたわけではないので、駅まで寝るわけにはいかなかった。それに駅までの道のりは結構あった。
「雪姉ちゃん。まだ駅着かないの。」
「それは智ちゃんが行く時に楽したからでしょ。」
雪姉ちゃんはそう言った。
「・・・。」
「智ちゃん。学校には慣れた。」
前にお同じような質問をされたような気がするけど・・・。
「・・・。」
すぐに答えれない。
「まだ一人ぼっち・・・。」
「・・・。」
小さくうなずいた。
「そう・・・。早く友達ができるといいね。」
「ねぇ。友達の中にはさぁ、電車のこと好きな人もいるかなぁ。」
「いるかもね。でも、そこまで電車のことにこだわらなくてもいいんじゃない。そんなこと言ってたら好きな子もできないよ。」
「・・・。好きな子なんていないもん・・・。」
「まぁ、まだいないかもね。でも、お姉ちゃんぐらいの齢になったら絶対に一人ぐらいはできるよ。自分が心から好きだって思える人がね。」
「・・・じゃあ、雪姉ちゃんには好きな人がいるの。」
「・・・。」
雪姉ちゃんはほっぺたが赤くなっただけで、そこから先をこたえようとはしてくれなかった。しばらく遠くの山を見ていた。
「智ちゃん。そういうことあんまり聞いちゃいけないよ。」
「どうして・・・。秘密にすることっていけないことじゃないの。」
(そこそうついてくるか・・・。)
「確かに。秘密にすることはあんまりよくないけど、秘密にしたいことだってあるの。智ちゃんだって、女の子には秘密にしたいことだってあるでしょ。ああ。女の子だけじゃなくて、お母さんやお父さんにも知られたくないことって。」
「ないよ。」
「そうか・・・。ないか。でも、大きくなったらそういうことってたくさん出てくると思うんだ。そのうち分かるわ。」
「・・・。」
結局雪姉ちゃんが誰かのこと好きなのかってことは分からなかった。そう言えば、女の子(雪姉ちゃん限定)は好きな人の話になるとよくほっぺたが赤くなるけど、どうしてだろう・・・。熱でもあるのかなぁ・・・。
この後駅に戻って電車に乗ったら、僕はすぐに寝てしまったらしい。乗り換えるたんびに肩のあたりがくすぐったかった。
家に着いたら、模型部屋に雪姉ちゃんと直行した。僕はこのとき駿兄ちゃんがいるかもしれないと思っていたからだ。でも、駿兄ちゃんはいなかった。代わりに淳兄ちゃんがいた。
「あっ。淳兄ちゃん。僕にも遊ばせてよ。」
「・・・どうしようかなぁ・・・。」
どうしようかなぁってどういうこと。遊ばせてくれないの。
「相変わらず。淳は小さい子をいじめるのが好きだねぇ。」
「なっ。どういう意味だよ。別にいじめてなんかないぞ。」
「そうかしら。」
と言ってから、雪姉ちゃんは意地悪そうな顔をした。
「智ちゃん。智ちゃんは覚えてないと思うけどね、智ちゃんが赤ちゃんの時に、智ちゃんのことたたいてたからね。」
「別にたたいてないってば。」
「それって本当・・・。」
「うん。」
「おい、コラ。なにウソばらまいてるんだよ。」
そう言って、淳兄ちゃんは僕に近づいてきて、
「智。こんなお姉ちゃんの言うこと信じちゃいけないぞ。」
えっ。どっちが本当なの。ていうか、僕は模型で遊びたいのに・・・。
「まぁ、それはいいとして。早く遊ばせてあげれば、智ちゃん遊びたいみたいだし。」
「分かった。外から帰ってきたら、今度は俺の番なのね。」
そのあと夕食の時間まで模型部屋に二人でいた。淳兄ちゃんは駿兄ちゃんと違って、僕が行き過ぎたことをしなければ何も言わなかった。