8018E列車 新幹線ホーム
僕たちが降りた駅はとっても大きかった。浜松駅をよく見てきたからこの駅の大きさは比べ物にならないものだということがよく分かる。
「ねぇ。雪姉ちゃん。ここからどこに行くの。」
「んっ。まぁ、どこかに行こうとは思ってるけど、まずはここでおやつでも食べたいでしょ。何がいい。」
「・・・。」
僕は今まで見たことのない電車のほうにどうしても目が行ってしまう。そういう食べ物のことを考えられる頭じゃないって・・・。えーっと確か駿兄ちゃんと新幹線を見に行った時に入ったお店はなんていう名前だったっけ。新幹線とは関係ないからひかりとかそんな名前じゃないし・・・。
「どこでもいい。」
と答えた。
「どこでもいい・・・。答えに困るなぁ・・・。」
雪姉ちゃんはそう言った。えっ。もっとはっきりしてたほうがいいのかなぁ・・・。
「どこでもいいの。」
「本当にどこでもいいのね。後で文句言わない。」
「・・・う・・・うん。」
「怪しいなぁ・・・。」
雪姉ちゃんはそう言ってから僕に顔を近づけてきた。何かされるのかなぁ・・・。
「じゃあ、マックスはどう。」
あっ。名前それだ。
「そこでいい。」
マックスでおやつを食べたあとまたホームに戻ってくる。戻ったホームは新幹線のホームだ。
「ねえ。雪姉ちゃん。500系新幹線来ないかなぁ・・・。」
僕はちょっとした期待をした。駿兄ちゃんと一緒に行った時は必ず500系が走って行く。多分この時間にも来るのだろう。
「どうかなぁ・・・。お姉ちゃん電車のことは詳しくないからなぁ。でも、智ちゃんの好きな100系新幹線は分かるよ。」
100系新幹線が分かってくれるっていうのがなんか嬉しかった。
「智ちゃん。500系新幹線が来なくても起こらないでね。あたしは駿兄ちゃんとは違うから。新幹線の時刻表が頭の中に入ってるわけじゃないんだからね。」
「えっ。」
いつも新幹線を見に行くと好きな車両に合えるが当たり前になっている僕としてはショック。
「ヤダ、500系みたい。」
「わがまま言っちゃダメ。500系が来なくても、新幹線はそれだけじゃないでしょ。100系だって、300系だって、700系だってあるんだよ。我慢しなさい。」
「ぷぅ・・・。」
「すねないの。あたしそんな顔してる智ちゃんは嫌いだなぁ・・・。」
そうこうしていると真ん中の線路に100系新幹線が入って来た。行先はこう書いてあった。「新大阪」。
「雪姉ちゃん。100系だよ。100系。」
「本当だ。智ちゃんの好きな100系新幹線だねぇ。」
「ねぇ。雪姉ちゃん。乗りたい。」
「えっ。」
「100系に乗りたいよ。」
「ちょっ・・・。智ちゃん。あたしたちはいま入場券で入ってるんだよ。入場券っていうのはホームには入れても電車の中には入れないの。」
「切符買って乗ろうよ。」
「ダメ。今あたしいくら持ってると思ってるのよ。それに智ちゃん。新幹線に乗ってどこに行くつもり。」
「あすこ。」
僕はこのとき新大阪を何て読むのかは理解していない。行先を言っていても僕は平仮名の理解でしかないのだ。
「ダメ。新大阪なんか行ってたら、お金がなくなっちゃう。」
「乗りたいよ。」
「ダメなものはダメ。あんまりわがまま言ってるとお姉ちゃん智ちゃんおいて一人で帰っちゃうよ。本当にそれでもいい。智ちゃん一人でここから浜松に帰ってこれるの。」
「・・・。」
雪姉ちゃんの怒った顔は怖いんだ・・・。
「フッ。ヒッ・・・。」
「泣かないの。お姉ちゃん本気で怒ってるわけじゃないからね。ほら、泣いてないで100系のことちゃんと見ときなさい。」
雪姉ちゃんは僕の身体をひょいと持ち上げる。100系がホームから離れていくと乗りたかったなぁと思っていても、あの雪姉ちゃんの顔を思いだしちゃっていた。
「智ちゃん。ちゃんと100系のことは見てた。」
「・・・。雪姉ちゃんのイジワル・・・。」
雪姉ちゃんの顔に自分の手を当てて、頬を引っ張る。
「イタッ。・・・別にいじわるしてたわけじゃないって・・・イツッ・・・。智ちゃん。」
「?」
雪姉ちゃんは僕をホームにおろす。僕は何か嫌な予感がして、雪姉ちゃんからちょっとだけ離れようとする。そうしたら、雪姉ちゃんは僕にちょっとだけ近づいてきた。これ本当にまずいんじゃない・・・。僕が今の足で一番早い走りで逃げようとすると雪姉ちゃんの長い腕が逃げようとする僕を捕まえる。
「はっ。」
「そんなにイジワルされたいなら、家に帰った後でたっぷりくすぐってあげるからね。」
「えっ・・・。ごっ・・・ごめんなさい。」
「ダメ。許してあげないからね。」
これで夜どうなるんだろう・・・。
どうなるかって。それはふつうに小さい子どもとしていじられるんですねぇ。いやぁ。永島をいじることになるとなんかパソコンで文字を打つのが止まらないですねぇ・・・。