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第七話 新章「著者カーシュ・ギルフォイル後日談」

正直言って、困惑どころの問題じゃない。

――俺は怒っている。“騙された”って気分だ。

やられたんだ、……ブラッドのヤツに。

その後、ブラッドから聞いたことを教えよう。




「あの時だ。……ほら、ベルナーガスに攻め込んでさ。国王が倒れて……。……その時に、現れたのさ」

「意地悪ババァが!!」

「……。冥界の王が現れたんだ」









 ――クレアは静かに目を開けた。すると、その視線の先、少し離れたそこにボンヤリと黒い渦が浮かび上がる。

 ブラッドはそれを見て、ゆっくりとクレアに目を戻した。

「……ありがとう、……クラウディア……」

 クレアは寂しげにか細く微笑んで、首を振った。

「……これから大変だね。……ゴメンね、傍にいてあげれなくて……」

「……ずっと一緒だったろ? ……これからも、変わらない」

「……そっか、……そうだね……」

 少し笑うと、ジョージを見下ろし、遠く横たわったままのピートとスコットを見た。

 ……もう二度と動くことのない彼ら――。

 次第に顔が赤くなり、軽く鼻をすする。息を詰まらせながら、こぼれた涙を懸命に拭った。

「……む、向こうで会えるかな……っ、……会えると……いいなっ……」

 ブラッドは視線を落とし、それでも目を上げて笑顔でクレアの頭を撫でた。

「……会えるさ。……待ってるよ、きっと……」

「……うん……」

 クレアは頷いて、涙を拭い切ると顔を上げ、渦の方を見た。

 ――奥が全く見えない、本当の暗闇が広がっている……。そこを見つめていると、なんだか吸い込まれそうで、段々と恐怖心が沸き上がり、心音が速まっていくが、それを押し隠して赤い目でブラッドを見上げた。

「……じゃあね、……お兄ちゃん……」

「……、……ああ……」

 互いに寂しそうに微笑み合う。と、その時――

「ヒー!! やっとかぃ!! どうなってんだ一体!!」

 突然、渦の中から「よっこらしょ!」と言わんばかりに誰かが出てきて、驚いたブラッドとクレアは「!?」と肩をビクつかせて目を見開きそちらを振り返った。

 老婆は、黒くて大きなスカートを払いながら不愉快っぽく二人を見た。

「なんだいなんだいこのザマは! まったく頼りないったらありゃしないね! こんなメチャクチャな解決法しかないなんて! これだから人間ってヤツは成長しないんだよ!」

 聞いたことのある声にクレアは顔をしかめ、「……あ!!」と目を見開き指差した。

「意地悪ババァ!!」

「お黙り小娘っ」

 と、老婆に睨み付けられたが、クレアは眉を吊り上げて身を乗り出した。

「遅い!! 今頃現れるなんて!! ……今頃!!」

「何を言ってんだい、あたしがいつ現れるって約束した?」

「呪い士だろ!!」

「誰がだよ。勝手に決めつけンじゃない」

 呆れるように答えると、周りを見て「……やれやれ」とため息を吐き、どこか遠くに視線を向けた。

「……アンデッドもいるようだね。……まったく、人間ってのはコレだから嫌いなんだよ。ホントいつまで経っても自分勝手な奴らだね」

 そう文句を呟き、スカートの下に手を突っ込んで何かのノートを取り出しページを捲る。

 クレアとブラッドは顔を見合わせ、何がなんだか訳がわからないまま、ブラッドが「……誰だ?」と小さく訊いた。

「誰? ……あたしも廃れたもンだね……」

 呆れ気味に深く息を吐きつつ、ページを捲る手を止めて二人を見た。

「あたしは冥界の王だよ」

 二人は顔をしかめただけ。そんな彼らを無視し、老婆はまず、国王を見てノートの文字を目で追った。

「……ふむ、こいつは……ベルナーガスの王か。……十年以上も待たせて。……ったく。……ま、これはこれでいいさ。終わったんならね。……予定変更、若干の遅れ、と」

 言いながらハーベイを見て、同じようにノートに目を戻す。

「……あいつは……。……ふむ、予定通り、と」

「あ、あの」

 一人で何かを進める老婆にブラッドは戸惑った。

「……なんなのかがわからない。冥界の王って……、なぜここに……」

 老婆はノートを閉じてため息を吐き、面倒臭そうに顔を上げた。

「いちから説明させる気かい?」

「……、できれば」

「年寄りの扱いを知らない子だね」

 こんな時だけ年寄り扱いか――。

 鼻であしらわれ、ブラッドは少し不愉快そうに目を据わらせるが、

「そもそも、お前たちは勘違いしているんだよ」

 そう言われてブラッドは小首を傾げ、顔をしかめた。

「この国の王がお前を殺そうとした。そうだったね?」

「……、ああ」

「冥界の予定じゃ、その時期に国王も自害していたはずなんだ」

「……。……え?」

「あの時、予定じゃお前は死なずに昏睡状態を続けていた。お前を殺しかけた罪に苛まれた国王は自害し、冥界にやってくるはずだった。なのに……」

 老婆は眉を吊り上げ、クレアに向かってノートを振った。

「この小娘のおかげでメチャクチャだよ。お前がここに現れたことで全ての予定が狂っちまった」

 クレアは、分が悪そうに、そろっと上目遣いで老婆を見た。

「……ボクは何もしてないのに」

「してないだと? 覚えてないと言いな」

「……。覚えてない」

「お前は、あたしとの約束を破ってこのボウズに会いに行ってただろ」

「……、約束?」

「生きている者には決して接触してはいけないっていうルールだ。その掟を破れば世界が繋がっちまう。なのに、お前はこっそりこのボウズに会っていた」

「ボクが……?」

 顔をしかめるクレアを見て老婆はため息混じりに頭を振った。

「ホントに何も覚えてないのか。……全く、お前は困った子だねぇ」

 呆れながらも、次に、倒れているピートとスコットを見てノートに目を移した。

「……、あの二人はまだまだ先じゃないか」

 その言葉にクレアは「……?」と眉を寄せて首を傾げる。

 老婆は次にジョージを見て、

「……、ん? ……なんだい、こいつまで。……何を勝手に死んでんだ」

 そう呆れるように言いながら訝しげにノートを捲っていたが、ため息を吐いてノートを閉じ、鋭い目でクレアを睨み付けた。

「お前のおかげで予定もヘッタクレもありゃしないよっ!!」

 怒鳴られて、クレアはショボンと俯くが、ブラッドは不可解そうに顔をしかめた。

「ま、待ってくれ。つまり……、ジョージも、ピートもスコットも……死ぬ予定じゃない?」

「ああ、違うよ。後で御霊を追い出してやる」

「……、生き返るのか?」

「当たり前じゃないか。予約の入ってない者は冥界にゃ立ち入り禁止だよ」

 吐き捨てるように睨み言われたが、ブラッドとクレアはパッ! と嬉しそうに顔を見合わせた。

「……他にもいるね、予約を入れていない者が。……こりゃ、帰ったら一騒動だ……」

 ガックリと頭を落とし、ため息を吐いて恨めしそうにクレアを睨んだ。

「これで懲りただろ、もう約束を破るんじゃないよ」

「……ボク……、よくわからない。……どうなるの?」

 老婆は更にため息を吐き、腰に手を置いた。

「お前は一度戻るんだ。教育し直しだよ」

「……、そうだね。……うん、戻るよ」

「……クレアを闇の世界に?」

 ブラッドが不安げに聞くと、老婆は顔をしかめた。

「闇の世界? おいおい、お前は何を言ってんだい」

「……え?」

「闇の世界だって? ……よく見てごらん、この小娘はアンデッドと同じかぃ?」

「……、いや……」

「冥界にも二通りあるんだよ。お前たち人間が俗に言う天国と地獄ってトコさ。アンデッドは地獄で苦痛を与えられた亡者が化けた姿、小娘は天国で生まれ変わりを待ってた天使だ。あたしゃぁ、その天使共の大本締めだよ」

「意地悪ババァなのに?」

 クレアが訝しげに言うと、

「お前の生まれ変わり予定日を延期してやろうか?」

 と睨まれて「……う、ううん」と首を振った。

 ブラッドは、「……じゃあ……」とクレアに目を向けた。

「クラウディアは……生まれ変わって、もう一度誕生するのか?」

「その通り」

 老婆が頷くと、ブラッドは嬉しそうに目を見開くが、クレアは浮かない表情をしている。

「ボク、生まれ変わったら……、みんなのことを忘れちゃうの……?」

 寂しげに聞くと、老婆は何度目かわからないため息を吐き、諭すように切り出した。

「元々の記憶を持って生まれ変わる者はいないよ。……この世に誕生するということを幸せだと言う者もいるが、そりゃ大きな間違いさ。生まれた者は過酷な旅を続けなくちゃいけないんだ。その旅に耐えられるかどうか、……この世に命を持つということは大きな試練でもあるし、様々な苦難を乗り越えられるだけの力を備えた者の特権でもあるんだよ。そんな世界で前世の自分がわかってごらん。何をしていたのか、どう過ごしていたのかわかって楽しいかい? ……波乱に満ちた人生であるからこそ、大いに楽しむべきだ。だから、前世での記憶は全て消去されるんだ」

「……けど、ボク……、みんなのことを忘れたくないよ……」

 視線を落としながら悲しげに言って、老婆を見上げた。

「みんなのことを忘れて、また生まれるくらいなら……、ボク……ずっと天使でいい」

「何を言ってんだい。大体だね」

「湖の中から、またブラッドに会う。……楽しいお話しをする。……歌も歌う。……ボク、それでいい。……その方がいい」

 老婆の言葉を遮り、悲しげに、訴えるように言うクレアを見てブラッドは小さく頭を振った。

「……駄目だ、クラウディア」

「なんで? ……ボク、みんなを忘れたくないよっ」

 泣き出しそうな顔で倒れたままのジョージたちを見回した。

「忘れたくない……、イヤだ……」

「……クラウディア」

 ブラッドは真顔で彼女の肩を掴んだ。

「俺も、……俺のことを忘れてしまったらすごく寂しいよ……」

 本当にもの悲しげに視線を落とす。しかし、その目を上げて真っ直ぐクレアを見た。

「でも俺、もう一度キミに会いたいんだ。こうして触れて、……こうして普通に話せるようになりたい。……水面に映るキミに話しかけて……、それじゃ満足行かない」

「……けど、ボク……」

 ウロウロと視線を泳がす、戸惑うクレアにブラッドは小さく微笑んで見せた。

「……みんなが覚えてるよ」

 クレアは顔を上げて彼を見た。

「記憶をなくして生まれ変わったとしても、……俺たちみんながキミを捜す。……そしてキミの記憶を呼び起こす。……きっとできる。……今度は、俺がキミの名前を呼んであげるよ。……キミを忘れないから」

「……」

 クレアは顔を歪ませて涙をこぼし、ブラッドにしがみついた。ブラッドもクレアを抱き返し、優しく背中を撫でる。

「……早く生まれ変わっておいで。……待ってるよ、俺。……一緒にたくさん遊ぼう……」

 クレアは何度も何度も頷く。

 老婆は二人をただじっと見ていたが、間を置いて呆れるように深く息を吐いた。

「お前たちには参ったね。人間ってのはコレだからイヤなんだよ。被害妄想をどんどん勝手に膨らませて、悲劇のヒロインにでもなったつもりかい? いい加減にしなよ、悪寒が走る」

 ブラッドもクレアも不愉快そうに老婆を見るが、彼女は腕を組んで目を細めた。

「勘違いも甚だしいね、お前たちは」

「……何がだよっ」

 クレアはブラッドから離れて眉を吊り上げるが、老婆は更に負けじと目を据わらせた。

「お前は自分がいつ生まれ変わる予定だったのかも忘れたのかい?」

「……。……忘れてる」

「呆れたヤツだね、あんなに楽しみにしてたじゃないか」

「知るか!! 意地悪ババァ!!」

「死んだままにしてやろうか?」

「……嘘です」

「いいかい?」

 老婆は腕を組んで上目遣いのクレアにノートを振った。

「お前がどうやって生まれ変わるか、まずはそこだよ。……そこの小僧を殺しかけ、国王は自害した。独り身になった妃を救ったのは……この男だ」

 そう言って、倒れたままのジョージをノートで差す。

 クレアはジョージを見下ろしたまましばらく考え込んでいたが、不意に目を見開いて、ノートを捲る老婆を見た。

「……、……ボク……」

「お前は妃とこの男の間に生まれるはずの子なんだよ。全てが上手く流れていたら、お前は現在……十一才だ」

「……ボク……、……ジョージの……」

「この小僧が昏睡から目覚めるまでの間、妃とこの男の手で国を支えた。お前が生まれ、この小僧も目覚め、小僧が十八になったとき、正式に王位継承が行われる。……こんなとこかね」

「……、ジョージが、ボクの……」

「ここで、だ」

 老婆はパタン、とノートを閉じた。

「お前は勝手にこの世界に出ちまった。この男は勝手に死んでくれているしね。何もかも全てが狂っちまった。この状態を元に戻さねばならない、ということはだよ? 生きるべき者を生かす、こいつが再び息を吹き返したら……現在、こいつの娘として十一才のお前が誕生していなくちゃそれもおかしな話しになるのさ」

「……、……」

「わからないのかい?」

「……ごめん」

「お前はもう、この世界に現在生きている人間なんだよ、馬鹿だね」

 呆れる気味に首を振られ、クレアとブラッドは目を見合わせた。

 ……つまり……。……。

 二人は次第に目を見開き、笑みをこぼして老婆に身を乗り出した。

「クラウディアは消えなくていい!!」

「ボク、ここに残れる!!」

 二人は喜んで抱きしめ合うが、「お待ち」と老婆が手を挙げてストップをかけた。

「そんな都合のいい話しがあるかい」

「……、え?」

「元はと言えばお前が約束を破るからこんなややこしいことになっちまったんだよ。……死ぬ予定に入ってなかったヤツも、灰になっちまったら生き返らせやしないじゃないか。この罪は大きいよ」

「……、……」

 クレアは笑顔を消して悲しげに俯いた。

「お前は罰を受けなくちゃいけない」

「……どんな?」

 ブラッドが真顔で聞くと、「……そうだねぇ……」と老婆は考え、ニヤつかせた顔でクレアを見た。

「……お前はとりあえず冥界に戻す」

「……、……うん……」

「お前がこの小僧を呼んだように誰かに呼ばれたら、その時はお前をちゃんとした人間としてこの大地に堕としてやろう」

 ブラッドは笑顔でクレアを見た。

「じゃあ、俺がすぐ!」

「そりゃ無しだよ」

「……、何がっ?」

「フェアじゃないじゃないか」

「そんなこと言ってられないだろっ!」

 ブラッドは不愉快そうに眉を吊り上げるが、老婆は頭を振ってクレアを見た。

「こいつ以外の誰か、だ」

「……」

「こいつ以外の誰かに名前を呼ばれたら、その時、お前を人間として再びここに戻そうじゃないか。わかったね?」 

「……、……わかった」

「じゃあ……誰に呼ばれたい? お前と意思の疎通ができるのは誰だ?」

 クレアはしばらく考えた。その間にジョージを見、ピートとスコットを見る。

 ――そして、「……うん」と頷き、顔を上げて言った。

「……カーシュ。……カーシュならボクの名前を呼んでくれる。……絶対に」

「よし、いいだろう」

 老婆はニッと笑ってブラッドへ目を向けた。

「お前はこのことを誰にも喋っちゃいけないよ。喋ったら……その時はこの小娘を地獄に送ってやるからね」

「……、……」

 ブラッドは何も言えずに不安そうに目を泳がせる。

「ふふふ、楽しみだねぇ? お前の名前を呼んでくれるかどうか……」

 不敵に笑う老婆に、クレアは力強い眼差しを向けた。

「ボクはカーシュを信じてる。……カーシュは勇気があるから、きっとボクを呼んでくれる」

「そう上手く行くと思うかい? ……扉を開ける恐ろしさを見た者が、お前の名を呼ぶと?」

 クレアはボー然と、イヤらしく笑う老婆を見、ブラッドは身を乗り出して睨み付けた。

「最初からクレアをここに戻すつもりはなかったんだろ!?」

「馬鹿言うんじゃないよ。……これは試練さ。……お前がこの世界と繋がっていられるか、本当に必要とされるのかどうかだ」

 ブラッドは納得いかなそうにまだ老婆を睨み続けるが、クレアは真っ直ぐ老婆を見つめ、大きく頷いた。

「……わかった。……ボク、その試練を受ける」

「……よし」

 老婆は笑顔で頷くと、ノートをスカートに仕舞った。

「話しはお終いだ。……早くアンデッドたちを連れて行かなくちゃね。お前も戻るよ、おいで」

 老婆が黒い穴に向かい、クレアはその背中を見て、ブラッドを見上げた。

「……、ほんの少しのお別れ、だね……」

「……ああ。……早く戻ってこれるように、俺がカーシュの背中を押すから。……城に呼んで、常にキミのことを話しておくから」

「……また、会おうね」

「……、待ってるよ」

 互いに抱きしめ合い、離れると、クレアは倒れているジョージを見て微笑んだ。

「……やっぱり、ボク、ジョージの子どもだったね。……、またね、……お父さん」

 そう告げてピートとスコットの方へ目を向ける。

「……また遊んでね……、楽しみにしてるから……」

 そう呟き言って、間を置いてブラッドを見上げた。

「……じゃあね、お兄ちゃん」

「……、ああ」

 頷くと、クレアは背を向けて老婆の方へと歩いていった。

 老婆はクレアを振り返り、「……あ」と、何かを思い出したのか、クレアに「先にお行き」と言ってブラッドに近寄った。

 ブラッドは不愉快そうに老婆を見る。

「……、もしもの時は……俺が扉を開けてやるからな」

「恐ろしいことを言うもンじゃないよ」

 苦笑して、背伸びをすると彼に何かを囁く。

 ブラッドは老婆が小声で言う話しを聞くと、瞬きをしてキョトンとした。

 老婆は、愉快げに笑いながらブラッドから離れた。

「――そういうことだ。まぁ、それまで大人しく待つことだね」

 笑顔でそう言って、待っているクレアの元に行くと、「ほら、行くよ、小娘」と、先に穴の中に入って消えてしまった。……そして、その後にクレアも……――









「クレアは元々戻ってくる予定だったんだ。……お前に呼んでもらうのを待っていたんだよ、わかったか?」




――「わかったか?」って言われて「そうだったんだ!?」って……言える訳ないだろ!!

無性に腹が立って……。

けど、それと同時に、早く呼んでやれなかった俺自身にも腹が立って。

でも、みんなと嬉しそうに抱き合ってる姿を見てたら「……もういいや」って思えたり……。

途中で、段々嬉しさが込み上げてきた。


戻ってきた。俺が呼んだ。……その事がすごく嬉しかった。


もう会えないと思っていたのに。

呼んじゃいけないと思っていたのに。

……ずっと、待ってたんだな……。

弱い心ではなく、強い心で立ち向かうことを俺は忘れていた。……ごめんな。


俺も待ってたよ、戻ってくるのを。

親友と呼ぶにはあまりにも偉大な騎士……。

……いや、……愛する人。



――おかえり。

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