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人魚姫  作者: 潮田 依梨
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「あ。」


 読んでいたマンガから目を上げて、聡流が転校生を見ていた。


「なに?聡流の知り合い?」


「いや、微妙だなって思って。」


「おっ前最っっ低だなっ!!」



 えー?、と俺の発言に疑問を抱いた返事をして、聡流はまたマンガを読み始め

た。聡流は残酷なことをさらっと言うから怖い。そこに悪気がないからまた怖い。



 俺は聡流の言った微妙の意味がわからない。微妙。むしろ、かわいい系じゃないかという感想を持っていたんだけども。


箱島が転校生に自己紹介を促した。



雨宮羽海(はすみ)です。よろしくお願いします。」


 緊張で、この短い言葉を言うだけでも精一杯という雰囲気で、転校生、雨宮羽海さんは顔を強ばらせ、顔を真っ赤にさせていた。これは単純な、例えばヒデみたいで、ヒデみたいなやつは簡単に惚れるだろうな。


 ちらりとヒデを見ると、さっきまで騒いでいたのに、黙ってそわそわしている。惚れたのか、トイレに行きたいのか。



 なんとなくいつもの癖で、窓の外を眺めてしまう。空は晴れた気持ちのいい青が広がっていた。春の風も心地よく、風に色があるなら桜色なのだろう。ちなみに桜が待っているため、そのように思ってしまう。ひねりもなにもないつ

まらない表現の仕方。



 とりあえず今言えることは、転校生が来て、テンションが上がって、ちょっとかこっつけたいってこと。


「あー、恥ずかしー。」


「なにが?カッコつけてること

?」


聡流が漫画から目を話さずに言った。俺の言葉漏れてたの。いやいや、まさか。っていうか。


「うっせーよ!!マンガ読んでろよ!!」


「はいはい。恐い恐い。」


怒鳴った後、チラッと聡流を見る。漫画が邪魔して聡流の顔を見ることができない。どんな、表情をしているかわからない。


 ヤバい。聡流に悪いことした気分になってきた。


 俺、こういうの不安になるタイプ。


「聡流?俺、怒ってないよ?」


 無視。


「聡流聞いてる?」


 無視。俺、不安。


「聡流?怒ってる?怒鳴ったりしてごめんね?俺怒ってるわけじゃないよ?ねー、さとーーー」


「うっせーよ!!今いいところなんだよ!!黙ってろよ!」



 聡流君、怖いです。


「ごめんなさい!」


 俺は思いっきりでかい声で叫んだ。今の教室の状況を全くわからないまま。しかも、立ち上がって聡流に頭を下げていた。


 え?冷や汗?出まくっていますけど何か?


 その時ヒデが立ち上がったのが視界に入った。


「はまー、お前なに立ち上がってーーー」


「うっせーよ!!黙れよ!」


 ヒデになんかに言わせない。絶対言わせない。


 教室にはヒデドンマイというかけ声と、笑い声。それと、涙目で席に座るヒデ。


 本当に仲のいいクラスだよね。




 俺は何気なく視線を前に戻した。雨宮さんも笑っている。




ーーーその笑顔に懐かしさを覚えたのはなぜだろう。



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