2
「あ。」
読んでいたマンガから目を上げて、聡流が転校生を見ていた。
「なに?聡流の知り合い?」
「いや、微妙だなって思って。」
「おっ前最っっ低だなっ!!」
えー?、と俺の発言に疑問を抱いた返事をして、聡流はまたマンガを読み始め
た。聡流は残酷なことをさらっと言うから怖い。そこに悪気がないからまた怖い。
俺は聡流の言った微妙の意味がわからない。微妙。むしろ、かわいい系じゃないかという感想を持っていたんだけども。
箱島が転校生に自己紹介を促した。
「雨宮羽海です。よろしくお願いします。」
緊張で、この短い言葉を言うだけでも精一杯という雰囲気で、転校生、雨宮羽海さんは顔を強ばらせ、顔を真っ赤にさせていた。これは単純な、例えばヒデみたいで、ヒデみたいなやつは簡単に惚れるだろうな。
ちらりとヒデを見ると、さっきまで騒いでいたのに、黙ってそわそわしている。惚れたのか、トイレに行きたいのか。
なんとなくいつもの癖で、窓の外を眺めてしまう。空は晴れた気持ちのいい青が広がっていた。春の風も心地よく、風に色があるなら桜色なのだろう。ちなみに桜が待っているため、そのように思ってしまう。ひねりもなにもないつ
まらない表現の仕方。
とりあえず今言えることは、転校生が来て、テンションが上がって、ちょっとかこっつけたいってこと。
「あー、恥ずかしー。」
「なにが?カッコつけてること
?」
聡流が漫画から目を話さずに言った。俺の言葉漏れてたの。いやいや、まさか。っていうか。
「うっせーよ!!マンガ読んでろよ!!」
「はいはい。恐い恐い。」
怒鳴った後、チラッと聡流を見る。漫画が邪魔して聡流の顔を見ることができない。どんな、表情をしているかわからない。
ヤバい。聡流に悪いことした気分になってきた。
俺、こういうの不安になるタイプ。
「聡流?俺、怒ってないよ?」
無視。
「聡流聞いてる?」
無視。俺、不安。
「聡流?怒ってる?怒鳴ったりしてごめんね?俺怒ってるわけじゃないよ?ねー、さとーーー」
「うっせーよ!!今いいところなんだよ!!黙ってろよ!」
聡流君、怖いです。
「ごめんなさい!」
俺は思いっきりでかい声で叫んだ。今の教室の状況を全くわからないまま。しかも、立ち上がって聡流に頭を下げていた。
え?冷や汗?出まくっていますけど何か?
その時ヒデが立ち上がったのが視界に入った。
「はまー、お前なに立ち上がってーーー」
「うっせーよ!!黙れよ!」
ヒデになんかに言わせない。絶対言わせない。
教室にはヒデドンマイというかけ声と、笑い声。それと、涙目で席に座るヒデ。
本当に仲のいいクラスだよね。
俺は何気なく視線を前に戻した。雨宮さんも笑っている。
ーーーその笑顔に懐かしさを覚えたのはなぜだろう。