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人魚姫  作者: 潮田 依梨
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  小学校の頃、父親と釣りに行った。



 その時俺は全然釣れなくて、親父ばかり釣れるのにだんだん嫌気がさしていた。まぁただ単に悔しかっただけだけど。

 それで父親が、デカい魚を釣りそうになったのを、何とか阻止したくて、でも、その魚俺の手で釣りたかったから横取りしようとしたんだよ。魚のあまりの重さに耐えきれなかった俺は、海に落ちてそのまま沈んじゃったし。泳げたんだけど、何だろう。ショックで体動かない。みたいな。死ぬんだろうなって思って怖くなったとき、なんと。海底から俺を持ち上げようとしてくれる何かがあってさ。俺は恐怖と息苦しさで、もうそれに身を任せようと決めようとして、ふと俺の腕を掴むそれを見たら人の腕なの。よーく見ると女の子っぽい感じもして。


   その時、俺は確信したね。


   俺は人魚に助けられたって。




 「その話もう何回も聞きすぎて正直うざい」


 聡流は俺の方を見もせずに冷たく言い放った。毎度のことですから全然かまいませんがね。高校生にもなったが、俺はいまだに人魚はいると信じている。全世界の人々に笑われようが構わない。むしろ、俺を笑う奴らが人魚に出会わなかったことが哀れでしょうがない。あぁ可哀想。人生損してる。ちなみに俺の夢は、もう一度彼女、俺の命の恩人である人魚に出会うこと。そして、お礼を言うこと。あの日、目覚めた時は近くの浜辺にいて結局彼女にお礼をすることも、顔を見ることさえ出来なかった。


 「海璃。まず、髪が長かった~だけじゃ女かどうかわかんないし、しかも人魚とかいないから。てか、いい加減うぜー」


 「なんと言われようと、俺は信じてるし、安心しろ。お前は親友だ。」


 「でたよ、うぜー」




 俺は、浜岡海璃。最近高校二年生になりました。

 今、俺にうぜーうぜー言ってたのが、川上聡流、小学生時代から続く俺の友達。いや、俺の親友。今年も同じクラスです。一緒にサッカー部に入ってます。聡流はサッカー本当にうまいんです。


 いやマジで。


 そして、俺が彼女のことを思い出すたびに、いつも話しを聞いてくれる。最近は漫画読みながら、または携帯読みながらだけど。それでも、毎回ちゃんと相槌をうってくれるんだ。だから、俺めちゃくちゃ聡流のこと好きなんだよねー、友達としてね。 




 これから、ホームルーム。 

 今日は転校生が来るらしく、教室にはいつもとは違う雰囲気が漂っている。女子は純粋なワクワク、だけど男子は違うな。ちょっとした下心が混ざっている。こういう雰囲気になると言うことは転校生は女子なのだろう。


「ヒデー。お前転校生可愛いらしいからって変なこと考えてんなよー」


 こういう事でテンション上がりそうなやつを適当にからかう。しかも大きい声で。


「浜、声でけーよ!マジうっせーし!」


「ヒデのがでかいから!」


 教室に笑いが起こる。

 うちのクラスは比較的に仲がいい。しかも、まとまりがある。なじめないのもごくごくわずかにいるけども、それもこれから文化祭とか修学旅行のイベントを通して仲良くなっていければいいなと思う。一年を同じメンツで過ごすんだったら、楽しい一年にしだいじゃん。


 って、思うのは俺だけかもしれないけど。




 担任の教師が、清潔感のかけらもない白衣を身にまとい教室に入ってた。



 うちのクラスの担任、箱島先生は化学の担当の教員で、一見30代半ばにも見えるが実際は20代だという。男の癖に耳まで隠れるほどの髪の長さと、今時のおしゃれさがないださメガネが特徴の先生である。



 箱島が猫背でずるずると教壇に進むのを合図に、みんな自分の席に着きに戻る。全員が席に着いたところで、箱島はホームルームを始めた。


「どこからか情報が漏れたのでみんなすでに知っていると思うけど、うちのクラスに転校生が今日から来ることになってまーす。」


 初めは箱島の声しかなかったのに、今は教室に色んな声がガヤガヤ動き回っている。


「ヒデー、興奮しすぎて鼻息荒いから気をつけろー?」


「え!?俺!?ハコジ俺だけ!!?」


「箱島大先生様だろ~?ちゃんと敬え~」


 そして、教室にはまた一体感のある笑い声が色々な方向から聞こえてきた。


「えーと、ではヒデの鼻息が落ち着いたので紹介すっぞー。入ってきていいよ~」


 静かに扉が開いてゆっくりと、髪がふわふわと長い、色白の転校生、女子が入ってきた。



 なんだろうね。無駄に教室全体が緊張している空気は。


 俺は緊張なんかしてないもん。




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