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クリスマスデッドオアアライブ

作者: 地下渓谷
掲載日:2025/12/27

クリスマスにサンタビキニの女を描いてたら(https://x.com/capten_bm/status/2004233098553344358?s=46&t=vrpLjpTW0eFv5gih7F4-kw)思いついたけど、漫画で描く気も起きなかったので。

推敲とか修正とかしてない書きなぐりです。多分健全。

問題が一個あって、クリスマスは二日前なんだよ、ね。

夕方18時、バイトの帰路。

世間はクリスマスに浮かれていた。どこへ行っても耳に入り込むクリスマスソングに俺は半ば辟易しながら家に帰りつき、ドアノブの鍵穴へと鍵を差し込む。

しかし鍵は俺の予想通りの働きをしなかった。


「やべ......、締め忘れてたかな」


雪も降らなけりゃケーキもチキンもない。都会の喧騒から離れて自分の家に辿り着けば、そこにクリスマスという日の気配は無いも同然だというのに、変なとこでケチがついた気分だ。

更に、扉を開けて家へ入ると、自室のドアの隙間から明かりが漏れていた。

聖夜だというのにとても穏やかな心持ちにはなれない状況に、ひとまず俺は荷物をその辺に置き、恐る恐る、自室のドアを開けた──。


「イェイイェイイェーーーーイ!!ハッピーメリクリ!!foooooo!!」


サンタ帽に赤いビキニの女が、エアコンで暖房つけながらコタツに入って缶チューハイ飲んでた。

というか幼馴染だった。

浦沢ニコ。幼少期から兄妹のように育ったせいで、この扇状的な風貌をとても「そういう目」で見られない。

テレビは勝手に付けられ、クリスマス特番のお笑い番組から出演者の笑い声が流れている。


「警察」


「ちょっ、ちょっ、ちょっ、待ちなって! 今捕まったらドスケベ罪で前科ついちゃうでしょ!」


ねぇよそんなもん。つくなら不法侵入と公然猥褻に決まってんだろ。

目のやり場に困る、とは思わない。こいつが勝手に俺の部屋でやってる事だ。何で俺がこいつの都合に合わせて目を逸らすなんてしてやらなきゃならねーんだ、という気持ちですらある。バイト終わりで気が立っているのだからそういう思考にもなる。


「どーーーせ暇だと思ったからさぁーーー遊びに来てやったって訳よーーー。あと金返すついでにクリスマス気分でも味合わせてやろうかと思って」


そう言って机の上に雑に置かれた封筒を指差し、ニコはまた缶をあおる。


「どこの国にビキニのサンタが酒飲んでるの見てクリスマスだなぁって気持ちになるんだよ。舐めてんのか。てかなに不法侵入してんだ」


「窓の鍵空いてたよ」


「マジか......」


だとしても不法侵入していい理由にはならねんだよ。いや、防犯的な意味では居てくれて良かったと言えるのだが。


「そんな事よりこれ見て!これ!」


ニコはそう言いながら立ち上がり、水着の全貌を見せようとする。

上がビキニなのだから、下も当然のようにビキニなのだろうと思っていたが、少し想像と違っていた。


「ほれほれ、超ミニスカ!水着だけどパンツ丸見え!超エロくないこれ!?」


スカートを捲し上げる仕草をするが、そもそもが異常に短いスカートを俺に見せつけ、ニコがケラケラ笑った。顔がほんのりと赤いのは恥じらいか、酒のせいか。まぁ十中八九後者だろう。

しかし、捲し上げなどせずとも鼠蹊部の始まりが常に見えているスカートは、衣服というより腰布と呼んだ方がいい気がする。


俺はニコを無視して上着を適当に脱ぎ捨て、自身もコタツに入り込んでニコが用意していたであろう酒の缶を開けてあおった。

レモン酎ハイのほろ苦さと炭酸がバイトの疲れを微かに忘れさせてくれる──。


「いやいやいやいや!!こんなにエロい女を差し置いて酒を選ぶの!?どうなってんのあんた!?死んだ目よりエロい目を向けてよ!!」


「うるさ。厄介な痴女ごっこやめろよ。つかなんだよその格好はよ。もしかしてこれやる為だけに買ったのか?だとしたらイカれ過ぎてて付き合いきれんし早く帰れカス」


「んなわけねーだろ!仕事で使ったやつだよ!!」


「え......イメクラ......?幼馴染が風俗嬢やってんのちょっと複雑な気持ちになるからやってるにしても黙っててほしいんだけど......」


「やってねーよ!!動画配信だよ!!至って健全な!!」


「エロい目を向けろとか言ってた格好で健全な動画配信は無理があるだろ......」


「それは......そうかもしれない......」


納得したような顔でいそいそとコタツに入り、ツマミのゲソ足を口に咥える。

思ったより硬かったのか、眉を顰めながら口をモゴモゴと動かしている。


エロくない。本当に。


「つか寒くねえの?暖房つけてるにしても水着は冷えると思うんだが......」


「心配してくれてるの?うれちい⭐︎」


「死ねカス」


「因みに普通に寒いよ⭐︎」


「頭おかしいんかお前」


「愛しのボクくんのために我慢して家で待ってたんだゾ⭐︎」


「死ねカス」


可愛こぶるニコを雑にあしらって封筒の中身を確認して財布に数枚のお札をしまう。

家に帰ったらさっさと飯でも食おうと思っていたが、外が寒かったからコタツに一度捕まると中々出るのを躊躇ってしまう。

冷え冷えのコタツが暖まるまで待つ時間をカット出来たのは不本意ながら助かった。俺の家の電気代は犠牲になっているが。


「で、動画配信って何やってんだよ」


「ん、気になっちゃう?可愛い幼馴染がいかがわしい配信をして顔も知らない男たちに媚びてるかもって不安になっちゃう?」


「いや全然。炎上とかしてうちにとばっちり来たりしたら嫌だなって思ってるけど」


「しねーよ!ほらあれだよ、ASMRってやつ。マイクに向かって囁きながら色々するのが流行ってんのよ」


「ふーん......その格好で?」


「うん。あ、顔は映してないよ。この美しい身体だけ!」


「何が楽しいんそれ」


「え......なんかみんな褒めてくれる......」


「承認欲求に身を任せるなよ......」


「あとたくさん再生されるとお金が入る......」


「脱いで人気取って金稼ぐのを軽々しくやるなよ......」


「別に良いだろー!生で見せてやってるのアンタだけなんだし!」


「そういう問題じゃねえ......え、なに、今のもしかして俺喜ぶとこだった?」


「アンタその調子だと一生彼女できないわよ......」


ため息を吐きつつ、適当に口をつけていた缶チューハイを一気に飲み干してから俺は意を決して立ち上がり───自分用に買っていた、少し高価なウイスキーの角瓶と、冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを引っ張り出した。

それを見たニコが目を細めてニヤリと口角を上げる。


「ハイボール!ハイボール!!」


「お前ほんと胸ねえよな」


「今言う事じゃなくない!?」


こんな女でもいつかは誰かが嫁にもらってくれるのだろうか。いらぬ心配をしながら自分の分のハイボールをそそくさと作ってグビと飲んだ。薄い。

つか美しい身体とか自称してはいるが、人より痩せているだけだ。ロクに運動もしない割に食も細く、そのくせ酒はよく飲む。不健康な痩せ方そのものだ。


「私のも作ってよー!」


ニコが起こりながらウイスキーと炭酸水のペットボトルをひったくって、自分のコップに注ぎ始める。

高めの酒だから何となくやりたくなかっただけだったのだが......まあ言ってもやめないだろうし、したいようにさせる。

......いや、濃いなあ!!


「ウイスキー入れ過ぎだろ」


「あー?これくらいが良いんじゃん!ていうかアンタは入れな過ぎ!雑魚乙!」


「酒の量で偉ぶれるのは学生までだぞ引きこもり」


「ヘイトスピーチやめてくださ〜い」


最後にコップをなみなみにするくらい炭酸水を注ぎ、端からズズズと啜って......苦い顔をする。


「度数高くね?」


「確認してから飲めよ......」


やっぱアホなんだなあ。

言いつつも、ちびちびズルズルと酒を飲み進めている。


「いやでも結構......イケる!ずぞぞ!!」


「イケるな!!高いんだぞそれ!!」


こうして騒ぎつつも二人で何をするでもなく、酒を飲み、ツマミを食い、テレビ番組のチャンネルを何度か変えたりして、俺のバイトやニコの動画配信とやらの話をしながら過ごした。


その間もニコはサンタビキニの装いのままだった。本当に何のつもりなんだこいつは。


「眠くなってきちゃった」


「ほんとに何のつもりなんだよ。帰れよ」


人んちに勝手に入って、真冬に水着で酒飲んで、普通に寝そうな自由人を心底呆れ果てた目で睨む。

俺の視線を無視して机に項垂れるニコ。

俺は何度目かわからないため息をついてから、放り出した鞄の中から電子タバコを取り出して、スティックを詰めて電源を入れた。

数秒もせずに器具が短く振動する。

スティックを咥え、吸って、煙を吐く。メンソールが鼻を突き抜けると同時に、ニコチンと酔いが合わさって頭が少しクラクラした。


「くっせ!タバコやめろ!」


突っ伏していたニコが顔を上げて抗議してきた。


「ここは俺の部屋。論破終了」


「ん〜〜〜それなら仕方ないかぁ〜〜〜」


顔を真っ赤にしてへらへらと笑うニコ。相当酔っ払っているのは目に明らかだった。

と言いつつ俺もそれなりに酔っている。普段ならこいつ相手とは言え、人前でタバコは吸わない様にしているのに。気が緩んでいる。


「あたしも吸ってみよっかな〜〜」


そういうとニコがじりじりと距離を詰め、俺の隣にまでやってくる。

サンタビキニの女が真隣で酒を片手にいる光景、コタツで無ければ立派ないかがわしい店である。


「貸して貸して」


「ん」


俺の電子タバコに手を伸ばしてきたので、素直に渡してやる。

それを慣れたように口に咥えて吸い込み、細い煙を吐き出した。


「あ〜〜久々に吸ったけどやっぱ不味いねタバコってもんは!うひゃひゃ!」


「あれ、お前吸ってた事あんの?」


「うん。前の彼氏の影響でね」


「彼氏いた事ねーだろ」


「無いよ〜〜〜ん!!イェイイェイ!!」


テンションがおかしい女から電子タバコを取り返して無視して吸う。

俺もそろそろ眠くなってきたかもしれない。ぼんやりとした思考でそう思っていると、ニコが「どーーーん!」と言いながら抱きついてきた。


「あたしはぁ〜、昔からお兄ちゃん一筋なのらぁ〜〜〜⭐︎」


「やめろ気色悪りぃ!何がお兄ちゃんだよ、昔の呼び方やめろよ!酔いすぎだろお前!もう泊まってって良いから早く上着て寝ろよ!」


流石に俺も面くらって狼狽える。なんとか引き剥がそうと肩に手をかけると、ニコが顔をこちらに向けた。


「いや、酔い過ぎてるからって女がこんなカッコで好きでもない男に抱きつく訳なくねー?」


「............」


それを言うなよ、とは言えなかった。

そういう女もいるだろうが、少なくとも今こいつがこれを言った事で、俺に何の慕情も抱かずにやってる訳では無いのが明白となった。


「あー......何、どうしたいんだよ」


あくまでも誤魔化すための、その場しのぎのセリフを口走る。

俺も酔いで頭の回転が鈍い。だからこんなわかり切った事を聞いてしまった。


「ん〜、クリスマスプレゼント交換の要求でもしよっかな」


「あ?俺何ももらってねえじゃん」


「ほい」


ニコがビキニの紐をくいっと引っ張ると、薄い胸が露わになった。

この頭の緩さにこの距離感だ、こいつの乳なんか何度も見てしまった事がある。しかしいつもとは違う、事故ではなく、ニコから自主的に見せつけてきたのは初めてであった。

俺は咄嗟に目を逸らしてしまう。


「バカがよ」


「ニコちゃんのおっぱい、初めて自分から男の人に見せちゃった〜⭐︎」


「やめろよほんと......」


「やめないよ〜ん⭐︎」


抱きつかれた腕を強く引かれ、並んで横たわりながら見つめ合う形にされる。

そのせいか、ニコのビキニは完全にはだけて胸が露わになってしまっていた。


「まだお兄ちゃんからのプレゼント貰ってないよ」


「......何が欲しいんだよ」


「うーん、そうだなぁ」


目を細め、わざとらしく悩むそぶりを見せつけてから、静かに俺の目の前まで顔を近付け、距離を詰めてくる。

その顔は、俺の耳元に来て───


「赤ちゃん、ほしいな〜」


蠱惑的な声色でそう囁く。

この瞬間、生まれて初めて......いや、それは語弊がある。俺も男である以上、距離の近い幼馴染であるこいつをそういう目で見た事はある。

しかしいつからか、その感情は潮の様に引いていき、ぱたりと見なくなった。

そう、その時ぶりに、こいつの事をエロいと感じた。


「............ゴムなんか持ってねえぞ」


「ゴムなんてあったら出来ないじゃん、あ、か、ちゃ、ん♡ ニコちゃんが欲しいのは〜......」


そう言って、ぎゅっと俺の身体を強く抱きしめながら耳元で再び囁く。


「お兄ちゃんとの、赤ちゃん♡」


クリスマス、恋人達の聖なる夜。

俺には関係無いと家に帰ってきたら、絶対にそういう関係にならないと思っていたこいつと、こんな事になるなんて予想もしていなかった。

予想もしてなかった事で人生の岐路に立たされるとは。

先程はこいつもああは言ったが、酒の勢いはあるだろう。あるにしても、この展開に持ち込まれると男としては参ったものだ。

酒を理由に突き放せば、失望されるだけならまだしもこいつはショックを受けて何をするかわからない。水着で動画配信なんて個人でやってるくらいだ。本当にいかがわしい事をしでかすかもしれない。

とは言え、受け入れて本当に赤ちゃんなんぞ作ってしまったら俺もこいつの人生もままならない事になる。

こちとら成人越えて人生の目標も特になくバイト生活してる近代のダメな若者代表だ。


そして、本当に面倒な事に。

俺は、実際のところ、こいつの事を悪く思っていない。思っているなら家が近いとは言え、大人になって一緒にこうやって酒を飲んだらしてやってない。サンタビキニなんて素っ頓狂な姿を放置してやってもいないだろう。

つまりのところ───


と、ここまで頭の中で考えるのに5秒くらい意識を飛ばしていたら、どうやらニコとずっと見つめあっていた様だ。

もうニコの顔からふざけた様な笑みは消えており、そこには一人の女が頬を紅潮させ、目を閉じて唇をキュッと結び、明らかに次に起きる事を待っていた。


クリスマスデッドオアアライブ。

この選択がどちらに転ぶかは、俺にはもうどうでも良かった。

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