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孤独を愛す。  作者: キオ


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16/18

この物語を書くにあたって 下

 そして嫌われた。当然のことだった。


 同じ小学校出身で、同じテニス部に入った四人グループに私は属していた。リーダーの子が取り仕切り、他二人は私と同じ後ろを歩く人たちだった。

 リーダーとは言ったが、所詮は私のような小物の集まりで上に立っているだけの、四十人一クラスに居るときは有象無象に成り下がる程度のリーダーだった。何度か家に招かれたことがあり、毎度のこと「自分の家だから自分の言うことは絶対」と高圧的な態度を取ってみせた。しかし対外的に関わりを持つと、いつも調子のいい舌は途端に油を刺し忘れたチェーンのように苦しそうに小さな悲鳴を上げていた。


 他二人、と言うと私と同等のように思えるが、そうであったのなら、何故私一人が排斥されたのか未だに納得できず、恨みを磨き続けては新鮮なままにしていただろう。

 実際、一人は可愛げがあり小学校の頃からマスコットのような存在で、一人は常にいじられる側の人であっても笑いに変えられる胆力を持っていた。そして私には何もなかった。


 最初は部活終わりの帰り道だった。午後六時でまだ明るかったから、夏ごろだったと思う。

 突然リーダーの子から「どっちで帰る?」と聞かれたのだ。大通りを使って帰り道と、長い階段を下って帰る道と、神社の裏手を抜けて帰る道があった。理由がさっぱり分からないままよく使う階段の道を答えると、リーダーの子は、「じゃあおれらはこっちで帰るから」と二人を連れて私に背を向けた。


 理解が及ばないと頭が真っ白になるということを、そのとき初めて知った。いじめられていると実感したのはその後に置いてけぼりや無視を何度か経験してからで、その日は夕方から寝るまで頭の中は真っ白なままだった。


 それからの話は早い。当時はいじめられていることに納得はできなかったが、その現状を理解することはできた。他の居場所がなかった私は彼らとの距離を離しながらついていくようにしたが、「もうついてこないでくれる? 気持ち悪いから」という明確な拒絶を最後に孤立した。


 知らずのうちにすり減っていた心はその言葉でついに折れ、私は一ヶ月ばかり学校を休んだ。教師からの『優秀』の判押しも、親の期待も、そのときばかりは私を後押ししてはくれなかった。


 彼女の存在を知ったのも、その日からだ。

 本当に独りになってしまった帰り道から、薄々と背後に誰かいるのを感じていた。知らない人が後ろをついてきたら誰だってそうだろう、恐ろしくなった私は振り返らず朦朧とした頭で部屋に戻る。そして彼女がいた。


 恐ろしく、そして悲しい人だと思った。

 そのどちらも、今思い返すと彼女に投影された私の感情だった。彼女という存在は初めて知るには恐ろしく、悲しい。


 なにかを考えるにはあまりにも頭の中が混乱していた。煮え滾ったような害意。凍えるような恐怖。救済を求める先を知らない迷子の手。

 そんな中で彼女は同じ体温を保っていた。おかげで私は時間を経るごとに冷まされ、温まり、落ち着きを取り戻すことができた。


 あとは、今まで語ってきたとおりだ。

 この一連の流れを、今よりずっと拙い言葉を使って理解しようと努めた。完全ではなくとも、せめて現実の音を聞けるくらいにノイズを減らすまでは頑張った。


 頭の中を最低限度片付け、睡眠と食事を取り、背伸びをすればプラスマイナスゼロの地点に手が届くくらいまで回復した。


 担任からの保健室登校の勧めに逡巡していたとき、リーダーの子が不登校になったという風の便りを聞いた。経緯も理由もそこには書かれていなかった。ただ私の少し後から長く休んでいるという事実だけがあった。私の不登校によっていじめの噂が広がり、重圧に負けたのだろうと勝手に思っている。所詮は自分がサル山の大将だと甚だしい勘違いをした子ザル。調子に乗って皆に嫌われでもしたのだ。


 呆気ない、という言葉がしっくりときた。むしろその程度の小物に人生を狂わされたと思うと、あの厭味ったらしい面を別れ際に一発殴っておけばよかったと後悔している。


 棘を知らぬ間に取り除かれた私は中学生に戻り、他人の境界線の外で生きる人間になった。

 最初は声も届かないほど遠くから人々を眺め、害意を向けられない距離感をつかめたとき、ようやくゼロ地点に足の裏をつける実感を得た。


 それ以降、私は近くにいていいと思える友人を二人ほど作り、他では変わらず怯えて生きている。


 変わらず要領がよく、飲み込みが早く、いつも広い視野で周りを見て、大きく嫌われることなく生きている。


 せめて自分で自分を非凡だと思える『言葉を使えること』が実を結んでほしいと思いながらこれを書いている。

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