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孤独を愛す。  作者: キオ


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彼女と出会った日


 私には愛している人がいる。


 彼女の名前は孤独という。


 思えば、彼女は生まれたときからそばにいてくれたのだろう。しかし一つの確立した存在と認識できたのは中学生のころだった。


 学校でいじめを受け、初めて独りで下校した日、部屋の扉を開けると彼女はそこにいた。


 最初はひどく恐ろしい人に思えた。


 暗く、静かで、寂しそうな人だとも。


 私は仕方なく彼女と部屋にいることにした。親にも学校の先生にも、街ゆく他人にさえも今の顔を見られたくなかったから、他に行ける場所がなかったのだ。


 しばらくして、私は彼女に害意がないのだと気付いた。


 何もしてこない。何も言ってこない。何も強制しない。ずっと待っていてくれた。


 何を? きっと何もかもを、だ。


 立ち上がって部屋を出ていくでもいい。


 声を殺して泣き出すでもいい。


 仮にカッターで首を切ろうとしても、彼女は止めはしなかっただろう。


 そうして、私は考えることにした。


 頭の中で言葉にする。


 いじめられたことを思い出す。


 何をされたのか。


 何が嫌だったのか。


 どうしたいのか。


 どうされたいのか。


 彼女は何も返してはくれなかったが、しっかりと話を聞いてくれているのはわかった。


 最初はゴミが混ざった濁流のようだったが、言葉にして吐き出すたびに彼女が一定の速さで円を描くようにかき混ぜてくれて、やがて排水溝の間を通って腑に落ちていった。


 一頻り話し終えると、彼女は私を優しく抱き込んでくれた。


 今までの人生にはずっと息苦しさがあったのだと教えてくれた。


 彼女の身体は温かくなかった。


 それでも安らぎを与えてくれて、そのまま眠りに落ちたのを覚えている。


 朝起きると、彼女の姿は見当たらなかった。


 いつでも部屋にいると思っていたが、私には見えないときもあるらしかった。




 その日から、彼女に恋をした。

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