これからの異世界
「みんなごめん!家族のこととか、将来のこととか、色々と無意味なことを考え過ぎてた。そんな事今考えても結果は出ないし、僕がどうこうできる話でも無いのにね。だから僕はもう大丈夫だよ、本当に色々ありがとう。」
あの騎士もどきさんのおかげで僕は無意味な事を悩まなくていい事に気付かされた。そう言えばあのモドキさんの名前を聞いてなかったな、また会うことがあればその時は美味しい料理でも奢ろうかな。
「まことくん」
海が僕を抱きしめる。海には一番心配かけたな、海にも色々心配事があったに違いない。それなのに僕のことを優先してくれていたのだ。感謝してもしきれないとは正にこの事だ。
「ありがとう、海。」
僕も海を抱きしめる。そうすると背中が濡れる感触がしてくる。もしかしたら僕より不安だったかもしれない、僕と海は幼稚園の時からずっと一緒に居る、家族みたいなもんだ。そんな僕がこの世界に来てからずっとおかしかったんだ。海も不安だっただろう、本当にごめん。
強く、強く海を抱きしめる。
しばらく二人で抱きしめ合っていると悠斗と桜さん、怜衣さんが僕たちを見つめているのに気が付き海と離れる。
海の顔を見ると目が真っ赤だった。どんだけ泣いたんだ、僕の背中びしょびしょなんじゃないか?海が何か言いたげにしている事に気が付く、分かっている。
三人の方に体を向け、僕は改めて頭を下げる。
「みんなも迷惑かけてごめん。もう、大丈夫だから。本当にありがとう。」
「マコトくんこの世界に来た時中々起きなくて心配したし、やっと来た!と思ったらずっと暗くて、更に心配したんだからね?」
海が居ないとき手を引いてくれていたのは桜さんだった。側に居てくれて、僕のためを思ってくれる行動に僕はその優しさが染みていた。
「もう暗い顔はしないよ、心配をかけました。ありがとう桜さん。」
桜さんは満足そうにはにかんで居た。
「誠人、ありがとう。異世界に来て正直浮かれてた、さっきまで元の世界の事なんて少しも考えて無かったと思う。妹の事も忘れて、な。でも誠人の話を聞いて俺もこんな所で止まってられない元の世界に帰らないと!って思ったんだ。だからありがとう、誠人。」
悠斗らしいな、彼は優しく僕がかけた迷惑を迷惑とも思っていないのだろう。そんな悠斗に何度救われているのだろうか。
「ありがとう悠斗、妹の為にも絶対帰ろう!」
悠斗は決心したのかキリッとした表情をしていていつもよりカッコよく見えた。
「...誠人くん。私は別に迷惑を被ったりした訳じゃないから謝罪も感謝も必要ないわ。でも一つだけ聞かせて?あなたはこの世界をどう生きていくつもりなの?」
どう生きていくつもり、か。僕にはスキルもなくて能力も一般人と変わりがなくて、最前線で戦える自信はない。そうだな、
「僕は...このクラス転移を見届けようと思うよ!」