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26球 愛情のお弁当

 練習初日は、いろいろなことがあり過ぎて……つまり、日記に何を書くか、情報が多すぎて悩むことになってしまった。

 取り敢えずは、これからが楽しみな選手たちがいる部活に入れて嬉しいってことを日記に書いておいた。

 改めて、森川学園の男子バレーボール部にマネージャーという形で入部することに決めたということをお世話になっている叔父さん叔母さんに伝えると決して二人とも悪い顔というものはしなかった。あくまでも私がしたいように、学生生活を過ごすことを許してくれるみたいで、こればかりは有難かったなあ。私が大変な目に遭ったってことは二人とも知っていたようだったし、もしかしたらマネージャーとしても『やめておいたら?』って言葉が向けられるかもしれないってことを覚悟していたんだけれど、それが全然。むしろ『頑張ってね』と応援してくれるほど。……二人って優しいんだなあ。あ、でもきちんと入部を決めたからには……。


『巴ちゃんにできること、途中で投げ出しちゃだめよ?あなたが自分で入部するって決めたことなのだからね?』


 それは、もちろん。中学時代にも部活に入ろうか入らないでいるか悩んでいたときには両親から……。


『もしも巴が決めたことなら入っても応援するし、部活に入らないからってどうこう言うつもりはないからね?』


 と両親からも優しい言葉を受けていたんだった。やっぱり私は周りの人たちに恵まれているのかもしれない。

 谷古宇やこう監督が書いたであろう、私の名前『千早巴』の名は、とても達筆で、とても重々しくも感じるようだった。真っ白なノートを開いて、明日提出するために本日からこのノートを使って日記を書いていくことになる。日記……他の部員にはなかなか話せないようなことでも、このノートを使うことで、いろいろため込むことがないようにでもしていくんだろうか。聞けば今の三年生たちも谷古宇監督が来てからこの日記の風習みたいなものがはじまったらしい。監督と部員たちの良い架け橋みたいなものになっているのかもしれない。


 『〇月〇日。待ちに待った練習初日。朝の練習では、一年生たちの様子に心配があったけれど、昼休みには自主的に練習をしている一年生がいてバレーが好きなのだという気持ちが素直に届いてきて嬉しく思った。午後の練習試合。結果は、下級生チームにとっては悔しいものになったかもしれないけれど、少しずつ良い点が見えてくる試合にもなったので驚きつつも久しぶりに目の前にできたバレーの試合に胸がドキドキしてしまった。一年生たちももちろんのこと、上級生たちはどんな人たちがいるのか……マネージャーとしてはもちろんのこと、選手でも監督でもマネージャーでもない、他の視点でアドバイスができればいいなと考えている』


 ……少し、長くなってしまっただろうか。でも、実を言うともっともっと書きたいことはたくさんあった。試合のこういうところが良かった!凄かった!とか。選手個人個人の名前をあげて、こうしていればもっと良いのかもしれない!といったことも書き記したいところだったもののさすがにそこまで書いてしまうと監督の困ったような顔が浮かんできてしまったのでやめておいた。

 入部届けは既にあぶみ先輩に渡してきたし、これからはきちんとした部員の一人として男バレを支えていかなければならない。時には、衝突することもあるかもしれないけれど、衝突した分だけさらに絆を高めていくぐらいの気持ちで、一年生とはもちろんのこと上級生とも積極的になって話ができれば良いと考えている。

 朝の部活開始時刻は教えてもらったから、遅すぎることもなく早すぎることもないように家を出なければ。あ、雄馬ゆうまくんと待ち合わせをして一緒に登校するのも良いかもしれない。雄馬くんは遅刻とかしそうなタイプには見えないけれど一応、連絡をしてもしも朝練に参加できなくなりそうだったら事前に連絡をもらうようにしておいた。その連絡は、一応一年生とは話し合い済み。取り敢えず鐙先輩、月見里やまなし先輩、杢代もくだい先輩とは連絡先の交換もしておいたし、一年生とは全員と連絡が取れるように連絡先を交換した。


 明日から、どんな練習をはじめていくんだろう……。朝練の時間は、後に授業もあるっていうことだからそこまで激しい練習にはならないのかもしれないが、午後の練習は何をしていくんだろう。楽しみだなあ。私は、もちろん直接練習に参加するってわけじゃないし、第一にはマネージャーの仕事をきちんとしてから、雄馬くんの練習にあれこれとアドバイスをしていく予定でいる。

 他に上手い人はいるし、同じ男の子ならではの体の動かし方で分かることもあるんじゃないかと思うのだけれど、雄馬くん的には私に教えてもらいたいらしい。ほぼバレーに関しての知識がほとんど無い雄馬くんだけれど、そこに知力も技術も備わるようになっていけば……もしかしたら、一番化ける可能性があるのは雄馬くんなのではないだろうか……って、これはさすがに考えすぎかな。

 ちょっとヒヤヒヤするところもあったけれど、一年生たちは取り敢えず問題無く、コミュニケーションは出来ている……と思う。ただ、やっぱり上級生と話したり、コミュニケーションを取ろうとすると緊張してしまうものだ。私だって人見知りってほどまでは言わないけれど、知り合ったばかりの人とあれこれと相談したり、話し合ったりするのはなかなかに難しいところがあるからこれから頑張っていかないと!それに三年生たちは、あと一年しかいない。下手をしたら、約あと半年ほどで男バレから姿を消してしまう人だっているかもしれないのだ。そうするとどんなに時間があるように見えても、決して長い時間が用意されているというわけではない。だったら、今いるうちにいろいろなことを学んでいかないと。


 起床時間は少し早めに、スマホのアラームをセットするとベッドに横になった。いろいろと考えてしまうことが多くて、なかなかすぐには寝付くことができなかった。目の前で飛び交うバレーボールに目で追うことしかできない自分に少し悔しい気持ちもあったけれど、私が教えられることがあれば何でも教えてアドバイスをしていくから、どうか……良い高校生活を過ごしてもらいたい。

 そんなことを考えながらいつの間にか眠りについてしまうとスマホのアラームが鳴る朝を迎えるまで一度も目を覚ましてしまうことはなく、朝までぐっすりと眠ることができた。特に嫌な夢を見るようなこともなく、かと言って寝苦しい夜になることもなく過ごせたように思う。


 ピピピピッ


 起床時間を迎えたらしくスマホのアラームが鳴った。急いで体を起こすと未だに鳴り続けているスマホのアラームを止めた。

 体の伸びをしながらカーテンを開けるとまだ朝特有の静けさのようなものがあって、周りの住宅街も寝静まっているようだった。でも、私は……私たち森川学園の男バレ部員は、朝早くから行動を開始していく。

 もちろん叔父さん叔母さんもまだ寝静まっているだろうから静かに部屋を出て、お昼ご飯のためのお弁当の準備をするために台所に立ったのだけれど、そこには可愛らしいお弁当箱とメッセージがあった。


『巴ちゃんへ。せめて、お弁当ぐらいは用意させてね?気を付けて、行ってらっしゃい。叔母より』


 叔母さん……。昨晩は、やけに夜遅くまで起きているんだなあと思っていたけれど昨日の夜……もしくは、かなり朝早い時間帯に起きてお弁当を用意してくれたんだろうか。これには、感謝しかない。


『ありがとうございます。行ってきます!!巴』


 お弁当を手にすると、メッセージを残して家を出た。

 朝の少しばかり冷たい空気は目覚めた体にちょうど良く、頭もスッキリとさせてくれた。今のところ雄馬くんからは朝練を休むような連絡は入っていない。なら、待ち合わせ場所に行かないと!

 お弁当!!有難い!!お弁当を用意しただけ!?いえいえ、お弁当を用意してくれるのはとてもとーっても嬉しいことです!感謝して、ありがたく食べないとね!!

 さて、改めて練習の日々が進んでいきます。このなかで、一年生とも上級生とも交流を持って絆を育んでいくぞーっ!!!


 良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!

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