19球 派手なリベロ参戦!
まさか、部室を使ってのサプライズ!
これにはびっくり!
そして、用意されていた練習用のジャージも嬉しかった!!
よぉし!これで気合いはじゅうぶん!!
「お。はは!なかなかに似合ってんじゃねえか、お前ら!」
体育館に改めてやってきた一年生組を見た鐙先輩は、うんうんと頷きながら満足そうにニカッと笑っていた。その笑顔は、『どうだ、サプライズ驚いたか!?』にも見えるし、『おお!ジャージ似合ってる似合ってる!今年の連中はたくましいな!』と期待を込められているようにも見えるものだった。
「……先輩、気を付けないと、千早に着替えを覗かれるところでしたよ」
凪くんが、鐙先輩に向かってコソッと呟いたらしかったけれど、その声はこっちにまできちんと届いているから!っていうか、わざと聞こえるぐらいの声で言ったよね!?
「なに!?千早チャンってそういう趣味があったのか!?やだ~、これからはお前ら男子全員気を付けろよ!!」
って、なーにノリノリでふざけているんですか、鐙先輩!
「このバカ。……バカなことやってないで、ウチらも着替えに行くよぉ!あ、ネットはまだあの状態のままで良いからねぇ。走ってきたいヤツは走ってきても良いし、ストレッチでもしておいてよ」
全力でふざけている様子の鐙先輩を背中からバシン!(もの凄い音がした!)と叩いた九世凪先輩は、まだ、しっかりと張り切っていないネットの状態を指差しつつ、このままで良いと言いながらさくさくと着替えに部室に向かってしまった。
「……監督、まだ来ねえなぁ……監督が来ないとイマイチ気合いが入らん……そう思わねぇ?」
う~ん……と唸っているのは、確か二年生の五十木莉央先輩の方だったはず。今朝はめちゃくちゃテンションが高そうな先輩だなと思っていたけれど放課後はやる気が落ちてしまったんだろうか?
「こぉら!監督はそろそろ来るっつーの!……ったく。ほら、行くぞ」
テンションが下がりかけている莉央先輩に喝を入れたのは、同じく五十木……眞央先輩。外見とか性格もめちゃくちゃ似ていない双子兄弟だ。
眞央先輩は莉央先輩の首根っこを掴むような形でずるずると莉央先輩の足が床に引きずっているのもお構いなしに着替えに行ったみたい。……莉央先輩のテンションの違いにもびっくりするけれど、眞央先輩の莉央先輩に対する扱いというものも凄いな……。
「か、監督かぁ……きょ、今日は、機嫌良いんだろうか……不安、だなぁ……」
「まあまあ!監督は厳しいのが当たり前っしょ?はは!どんまいどんまい!」
相変わらず良い体格をしているはずなのに、猫背とその弱腰さは変わらない毒島琉生先輩を宥めながら声をかけつつ背中をぽんぽんと押しているのは褒め上手の月見里蒼葉先輩だった。
「……驚かせちゃった?……うん、でもジャージ、サイズ大丈夫みたいだね。良かった」
制服姿だからだろうか、まだ長い黒髪を垂らしたままの杢代瑠璃先輩は私の恰好を上から下まで眺めると、うんと大きく頷いて微笑みかけてくれてから更衣室に向かって行った。……美人ですね。
そんな杢代先輩の微笑みに目を奪われたのは私だけではなかったらしい。
「!美人でマネージャーですか……この部ってレベルが高いのでは?」
と言うのは一年生の御法川凛空くん。レベルとは……?
「こりゃあ美人マネージャーのためにも、練習試合に気合い入れねえとな!」
「おうよ!!」
な、なんだか昼神陽介くんと薬袋一輝くんは一緒になって気合いを入れているし……なんか、こういうところを見ると男子って単純。
「はは!まあ、キツイ練習の合間には目の保養も必要ってな。……もちろん、千早チャンもそのうちの一人に入ってるから。これから、よろしく~!」
大きな声で笑いながらゆっくりとした足取りで部室に向かって行く鐙凌駕先輩。いや、私はそういう立ち位置ではないと思うので……目の保養は、是非、杢代先輩だけでお願いします。実際、杢代先輩は美人なので。
「うぎゃ、来た!!!」
「?」
突然、雲英雄馬くんが悲鳴にも似た声をあげたものだから、なんだ?と顔を向けると、そこにいたのは谷古宇監督。ちょっとだけ……ほんの、ちょーっとだけ気まずいんだけれど、まあ自分にやれることをやるって決めたんだから私も気合いを入れないとね!
「……雄馬?お前、バレー部に入ったのか」
驚いたような、意外だったかのような低い声をもらす監督。
「……っ、と、巴に!コイツに!いろいろ教わって上手くなるから!今に見てろよ!」
うわ!私の背をぐいぐい押しながら監督と対峙しないで!私だって監督と対峙することになるじゃない!
「ほぉ?だったら楽しみにしている。千早、昨日はすまなかったな。だが、こうして体育館に来てくれて嬉しく思う。このバカを相手にするのは骨が折れるだろうが、どうか面倒をみてやってもらいたい」
「!は、はい!私の方こそ、これからよろしくお願いします!」
監督がわざわざ頭を下げてまでくれるから、私もつられて頭を下げて挨拶をすることになってしまった。雄馬くんは、監督に喧嘩を売っているかのようにジーッと見ていたものの、すぐにぷいっとそっぽを向いてしまった。……そんなに苦手なのかな。
「それから放課後の練習試合についてだが、二年のリベロを今日から復帰させる予定だ。声は既にかけてある、主将にも了承済みだ。俺の代わりに二年が一年のチームに加わることになるから事前に挨拶だけは済ませておいてくれ」
!そうなの!?
確か、鐙先輩の話ではまだ様子見とかって話じゃなかったっけ?でも、少しでも調子が悪そうだと思えば無理にでも外させてもらう気ではいるのだけれど、まだその本人と顔を合わせていないんだよね。一体どんな人なんだろ。
二年生、そしてリベロか……。
やっぱりポジション的にも守備は上手そう……だと思う。あ、いや、上手いんだろう。三年生、そして二年生の顔ぶれを頭の中で浮かべていくと、どっちかって言ったら真面目な感じの先輩になるかな?とこの時点では考えていた。が、その私の考えは、その二年生の先輩が来た途端にぶち壊されてしまうことになる。
「ちぃーっす!あ、先に来ちまったか?……って、あれ?もしかして、お前ら一年か?」
姿をあらわしたのは、例の二年生だと思う。思うのだけれど……その見た目にびっくりしてしまった。ほとんどの先輩たちが自毛の黒髪だったり、こげ茶に近い髪色をしているのに対して(世凪先輩はきっと生まれとかかな?髪色は薄いけれど特に自分でイジったりはしてなさそう)、この人は明らかに染めたであろう明るい髪色。そして、耳にはいくつものピアスを付けていた。
いやいや、見た目だけでどうこう決めつけてはいけない!そういうことっていけないことだって分かってはいても……どうしても……本当にこの人が?と思ってしまう。
「律樹、本当に平気なんだろうな?」
ほ、ほら!監督だってごくごく当たり前のように話している人だし、この人だったんだよ、残りの二年生……。
「うぃっす!万全っすよ!もう、早く来たくて来たくてウズウズしてましたからね!」
「コイツが、二年のリベロ。夫馬律樹だ。挨拶とポジションなんかの相談は今のうちにしておいてくれ」
「ちっす!二年の夫馬律樹!あ、律で良いぜ!よろしくな!一年ども!それと……キミは、マネ?よろしくー!」
「あ、よ、よろしくお願いします。千早巴です」
あ、明るい。……髪色とか見た目の意味だけじゃなくて、場が明るくなるような人だ。背丈はそこまで高い!って方でもなさそうだけれど、ポジションがリベロだからだろうか、主将の鐙先輩とはまた違った頼もしさみたいなものは感じられた。
残りの部員を出せました!(ちょこっとだけだけれどね……)
よし!これで、チームが組めますね!!さてさて、どうなるやら……ちゃんと試合になるのかな?(汗)
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