10球 頼れる先輩、騒がしい先輩
同じSポジションである、世凪先輩と凪くんが朝からバチバチすることになってしまった。
副主将の月見里先輩が仲裁に入ってくれているみたいだけれど、なかなか落ち着かないみたい。う~ん……部員同士のいざこざっていうのは起こるものだし、でもこのままにしておくわけにもいかないよね……。
主に世凪先輩があれこれと愚痴やら文句を凪くんに飛ばしているなか。おもむろに体育館の床にしゃがみ込んでじぃっと床を眺めている雄馬くんの姿があった。?えっと、一体何をしているんだろう?
「……これ、もしかしてモップ掛けしてくれていたのか?」
彼の声は耳によく通る。そんな雄馬くんは、座り込んでいた凪くんに向かってたずねた。え、えっと、なんで凪くん?
「いち早く体育館に来ていたのは凪なんだろ。俺はストレッチしているところしか見ていなかったけれど……もしかしてストレッチする前には、既にモップ掛けしていたんじゃないか?」
え。
えっと、そういうのって見て分かるもの?やけに床を眺めているなぁとは思っていたけれど、そうなのかな。確かにゴミらしきもの、埃っぽくは無いけれど。
「……だったら何?」
「え、お前一人で!?つか、一体いつ学校来たんだよ」
「知らない。いちいち時計見ないし」
ゲームはしているのに時間は確認しないのか。それともゲームをしているからいちいち時間を確認している暇が無いのか……いずれにせよ、世凪先輩がこれ以上文句を凪くんに言うのはちょっとおかしいかな。
「凪くん。だったらそういうことはちゃんと言わないと。相手にだって通じるものも通じないよ?」
「早く来たからやることはやっただけ。……少しでも早く練習したいじゃん。でも、言った方が良いなら言うようにする……」
そう言うとゲームを終わらせ、スマホを長袖ジャージが置いてある場所に片付けた。世凪先輩と月見里先輩はお互いに目を見合わせるばかりで、『やれやれ』と肩を落としている。もう一人、背が高い先輩がいるんだけれど世凪先輩と凪くんの言い争いにはとてもじゃないけれど割って入る勇気が無かったみたいで体育館の隅であたふたしていた。
「……っ……ごめん」
それはとても小さな声だったけれど世凪先輩が凪くんに向けた言葉だった。それに対して凪くんは『別に……』と応えるばかりだったけれど、ひとまず落ち着いてくれた……?よ、良かったー……さすがに朝からバチバチしていたらまともな練習なんてできっこないもんね。
「おはよう、みんな!……っと、なんか……あったか?」
大きな声、それは何処にいても聞こえてきそうな声の主は体育館に入りながらきょとんとしていた。もしかして、この人が……男バレの主将?少なくとも他の先輩たちよりも主将っぽい気がする。
「お。さっそく一年坊主たちも加わったか!ようこそ、男バレへ。って、なんか頭数少なくねぇ?二年の連中は?一年も入部希望者まだいたはずだよな?」
まだ、来ていない?遅刻……だろうか。と考えていると、なんだか外が騒がしい。その騒がしさはどんどん体育館に近付いてきているようで、それに気付いたらしい世凪先輩が『アイツら、また……』と、大きな溜め息を吐いていた。
「俺が先だーっ!!!おはようございまーっす!」
騒がしい人が……まるでそれは台風だとか嵐って感じがした。その人が体育館に飛び込んでくるようにやって来た。そして、その後から……
「おはようございます。……そんで、莉央うるさい」
しっかりと挨拶をしてから、騒がしい人に文句を言っている人。
「おお、来た来た。あとはー……残りの一年か……」
ふむ……と、どうしたものかと考えているらしい主将っぽい人。
「あれ、二年ってもう一人いたよねぇ?アイツまだ部活来られないの?」
「あぁ、律のことか。まだ様子見らしくてな。来ると絶対俺も練習するー!って言いそうだろ?だから完全復活するまではなるべく体育館にも来ないように注意してるんだ」
「あー……そう」
世凪先輩と主将が話しているが、様子見?もしかして、バレーで怪我でもしたのだろうか。話の内容的には怪我で練習禁止を受けているような感じがするのだけれど。でも、二年か……どんな人なんだろう。
「お、遅れてすみません!はぁ、っはぁ!……おはようございますっ!」
「すんません、遅れました!」
やけに朝から息を上げている人と、明るい感じの人。雰囲気的にこの二人が残りの一年生っぽい。
「おお、来た来た。取り敢えず全員の顔が揃ったってことで……自己紹介でもするか!」
「え、ちょ……練習はどうすんのぉ!?」
「せっかく全員揃ってるんだから自己紹介した方が良くね?っつーことで俺からな!俺がこの男バレの主将をやってる、三年の鐙凌駕だ。昔はリベロやってたんだが今はポジションを変えてやってる。よろしく~!」
あ、やっぱり。この人が主将だった。元リベロ。だったら守備力も強いんだろうなぁと感じた。そして、
「同じく三年。九世凪。苗字呼びはあまり好きじゃないから世凪で良いからねぇ。ポジションはそこのゲーム小僧と同じくセッター」
ゲーム小僧って……それ、絶対凪くんのことだよね……。
「ほら、次ィ!アンタでしょぉ!」
バシバシと背中を叩いて背が高い人を促す世凪先輩。い、痛そうだ……。
「は、はい!三年の毒島琉生ですっ!あー、あんまり……その、な、仲良くやって、いこうな……?」
ちょっと……というか、かなり気弱なタイプかな。こういうタイプはコートに立つとガラリと変わるか、もしくは同じままかってタイプが分かれたりするんだけれど、毒島先輩はどっちなんだろう?
「そして、副主将をやっているのが、俺。月見里蒼葉だ。ウチは主将がすげぇ頼りになるから俺はあくまでサポート役な?ま、よろしく」
以上が三年の先輩……っと、いけないいけない。大事な人を忘れている!
「杢代先輩、杢代先輩!先輩も!」
「え、私も?」
「当然ですよ!この部には欠かせない人なんですから!」
こそこそと近くにいた杢代先輩にも自己紹介をするように促す。マネージャーだから自己紹介を省いていいなんて理由にはならない。マネージャーだって大切な部員の一人なのだから。
「三年の杢代瑠璃。マネージャー。注意するけれど、くれぐれも怪我には気を付けて」
今度こそ!以上が三年のメンバーらしい。ふむふむ、と自分なりにではあるが三年生の特徴などを頭に叩き込んでいるとじっと主将が私を見ていた。私が視線に気付き首を傾げると苦笑しつつ流されてしまったのだけれど……な、なんだったんだろう?
そして次に二年生の自己紹介がはじまった。
「二年の五十木眞央。MB。うるさい騒がしい弟がいつも世話になってます。一年の面々はこれからよろしく」
……兄弟でバレーをやっているんだ。
「同じく二年の、五十木莉央っす!って、だーれがうるさいんだよ!これぐらい普通じゃねぇか!!」
あー……あれ、でも二人とも二年ってことは双子?……に、似てないなあ。背丈もそうだし、性格も……。ここまで似てない双子っていうのも珍しいかもしれない。
「っと、二年にはもう一人部員がいるんだが、ワケあって今は部活に来られないんだ。来たらまた紹介するよ。それからわざわざ自分で言ってくれた世凪と眞央以外は取り敢えずスパイカー候補だ。」
主将の鐙先輩が追加で申し訳なさそうに説明してくれるが、この双子に加わる二年の先輩か……なんていうか、二年の先輩は独特というか、特徴的というか……三年生よりも凄い個性がはっきりしているような気がした。
「さて、じゃあ一年。希望するポジションがあったら教えてくれ。参考にさせてもらう」
主将がきちんと言うべきところを求めて話してくれるから自己紹介がやりやすいだろう。私もポジションを考えたり、練習を見るなかで参考になるかもしれないから特に注意して聞いていくことにしないと!
名前難しいよーっ!!!って言わないで、じっくりじっくり覚えていきましょう!慣れるまではルビもふっていくので安心ね!私もゆっくりじっくり覚えていきます(覚えていないんかいって突っ込まないで!!)それぞれの性格とかいろいろ考えていくと、あれもしたいこれもしたい!って思っちゃうんで、名前はじっくり覚えていきます!え、もちろん覚えてるよ!覚えてますけれど!話し方だとか性格とかも、考えていくからそれに合わせて名前も覚えるから頑張るの!作者も!
取り敢えず、三年・二年(一部除き)の自己紹介は終わり。さて、いよいよ一年です。まだ名前があがっていない顔ぶれもいるので次回で一年ズの珍妙字も明らかになります!!
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