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蝕むウジと愛のカラ

ある一軒家、熟年夫婦の寝室で静寂の夜が過ぎようとしている。


子供が巣立ち、持ち込まれたベッドは不仲な夫婦にはちょうどよかった。


夫婦の共同作業が終わり、関係ももうじき終わろうとしていた夜であったが


しかし 今夜は少し違った。




その外の世界では対話型のAIは退れ、無意識の深層にまで手を伸ばす時代。しかし対話型が思考リーソースを消費するなど気にも留めずにAIはただのムカつく野郎のままである。




そんな哀れな夫婦に白い何かがそっと窓から寝室に入ってきた。


知ってか知らずかちょうど大きく口を開けてくれてた男性はこの生物を受け入れの準備をしてくれた。


弱々しいブヨブヨとした体はとても脆いことがうかがえるのだ。


妻が祈りをささげるために窓の元に置いたAI教のエンブレムをネバネバの液体で犯してくれる白い何かは男の歓迎に感謝して口の中へ入る。




男は訪問者に目を見開が状況を理解しようにも、続いて押し寄せる窒息の恐怖におびえる。


必死に手を突っ込もうと自分の口の中を目指したが白いそれは触れられる暇も与えずに男の脳にたどり着き、男は絶命を果たしたのであった。


くるまれるように脳みその中に入ると生きていたころの余韻が温かく優しくそれを撫でるのであった。




しばらくの時が流れると事態は白い何かはさらなる変貌を遂げる。


もう夫ではない夫は妻の後ろにぬっくりと立ちすくむ。


共に苦しみ、無学なために人から搾取される事にも気づかずに歩んできた妻を夫は愛し始める。


耳をかじり妻の腕の自由を奪い、少女のように叫び声をあげるがその甲斐もなく首筋の頸動脈に愛を届ける。


赤い流血の後ではもはや妻は従順である。


しかし従う姿勢を見せたところで夫の愛はやむことを知らないのだ。


妻が夫のすべてを受け入れたとき、妻の体は半分の大きさまでになっていた。




いっぽうで日中になり主人公であるトシユキは採掘場から帰る途中であった。


時代は進み富の8割どころか資源の8割を支配した富裕層たちはノアの箱舟という都市を作り遅れた者たちをパンドラの箱の中に閉じ込められ


ベーシックインカム制度の名のもとにタダで与えられる廃棄物を無料支給される代わりに他国への情報漏洩の強力が要請され、バンドラ地区の周辺には無数の地雷とバルカン法を担いだロボットがうろついているのである。




採掘所から帰路に着くトシユキは閉塞感から抜け出したいと思いながらも廃品でアクセサリーやゲーム機なんかを作る自称クリエーター。社会では通称ニートと呼ばれる存在であった。


廃品は即座に鉄やニッケルに変えてしまう仕事こそバンドラ地区の社会人の生き方なのであり、多くの人たちがそれに携わる仕事をしているのだ。




ニートのトシユキが家に戻りドアを開けるとそこには「トシユキ」と声を上げる慈愛と一人息子が社会に適応できないことをひどく心配している母親がいた。


母はシンプルな願いを持っていた。


「私の代わりになってくれる。あの子が守りたいと思える女の子に出会ってほしい」と。


しかし 清掃の仕事で家庭を支えていると言ってもお金には限界がある


「オレのAI調子悪いんだよね」との言葉に怒りがこみ上げる。


「はぁ? 何やってるのよ。AIは壊れちゃったらすごく高いのよ。早く治しに行きなさい!!」移植型のAIが故障することはまずないがメンテナンスを怠っていい物でもないのだ。


夜道に放り出されたトシユキは格安でメンテナンスを引き受けてもらえるお店を探す。


そんなお店が奇麗な通りにあるはずもなく、SNSで最近見た夫婦が食べられてしまうというショッキングなニュースに怯える足取りで貧しい地区を徘徊する。


狭い路地を通ろうと身を掲げるとAIが壊れた。


さらに コドンでしまったが起き上がるとなぜか手のひらはツルの折り紙を握っていた。


何が起きたのかはわからないが、念のために持ってきたスマートフォンだけでは心細く足取りは自然と重くなる。しかし その先には女の子が立っていた。


彼女との出会いはトシユキにとって予期せぬ驚きであった、透き通る姿はアンドロイドのようで和風テーストのワンピースに耳にはAIと書かれたAIガジェットの髪飾り。


謎に包まれる美しい彼女に見とれるあまりにスマートフォンで写真はシャッターを切った。


ある生物が二人のうちのどちらかを狙っているとも知らずに。




ふと気が付いた。「ガジェット式AI?」


彼女は困っているように見えた、彼女の使っているAIガジェットというのは装着型の古いモデルでAIの修理時に一時的に使う代替品だった。




しかし怯んだトシユキよりも早くある生物が襲い掛かる。


空気を裂く音と共に、宙を舞った。瞬間、凄まじい力で襲われた衝撃。でもそこには痛みはなかった。聞こえていたはずの耳鳴りさえなく、静寂の中を飛ばされているような不思議な感覚に、マイは微笑んでいた。


地面が近づいてきたが、彼女の心は冷静だった。新しい折り紙ドローンが既に展開され、マイを受け止める。自分を蝕もうとする醜い生命体。見知らぬ怪物と出会えた喜びを、彼女は胸の奥底で感じていた。


そして センスのある動きで強制的に戦闘を終わらせてしまったのであった。




トシユキが魔物に近寄るとそれはSNSで見たことがある50代ぐらいの男性の顔だった。


四足歩行でさっきまではゴリラにしか見えなかったのに今は人の亡骸でしかない。


彼女はまだ男に用事があるようで苦無を突き立て頭部に手を入れるとグイグイと白い何かを引っ張り出す。


ただただ光景を見守っていたその時、プチンという音と共に白いものはちぎれる音を発した。




「ぐぐぐ ぎゃー」




彼女の口に大きな幼虫が張り付いて彼女は転げまわっている。


よく見ればハエの巨大ウジだ。


ウジは彼女の口の中へ入ろうとするが彼女は必至に手をかける


白いウジの体からはネバネバと滑りのいい液体が放出されその抵抗から許しを請おうとしていた。


さらにあゆみを進めもうすぐウジは彼女に許されてしまう。


自らの体を引きちぎった痛みは緑色の液体を断末魔の代わりに吹き上げ絶命までの時が迫っていることをウジに告げた。


トシユキが手をかけなければ、彼女の手と彼の手の4本の手がウジを捕らえなければこの窮地は脱することはできなかっただろう。


引っぺがされたウジは力のあまりにどこか遠くへ飛ばされていったのであった。




オレは彼女についていく事にした。


自己紹介もした。彼女はマイと言う名前らしい


手のひらを見せてきて折り紙の蝶々が乗っていると思うと彼女はクスっと笑いその瞬間蝶々は飛び立ったことが印象的だった。


ドローンだと説明を受けたがオレのAIが完全に壊れたのはドローンの影響のようだ。しかし 彼女は悪びれるわけでもない、危険に巻き込まないために設置をした者なのだから。


オレは ある博士のところへ案内されることになった。


博士もオレのような人間を探しているという事だったので付いて行くことにした。




到着した家の中からは老人と猫耳を付けた女の子が出てきた。


小さな子はオレを見つけるなり嬉しそうに飛び回ったり走り回ったりを繰り返し「ヌッコやめなさい」と叱られていた。


「ワシは キリタニ。ヌッコと二人で暮らす隠居じゃよ まあ上がりなさい」


元気な女の子と対照的にゆったりと話す落ち着いたご老人だった。




話をしてみると、長年研究を重ねてきた新型のAIを試してほしいというのだ。


それは金属製ではなく粒子系の人体に馴染んで区別が出来ない素材でありながら機械の領域を確りと確保できるし筋肉の代わりにもなってくれる優れものだった。




そしてこれが決めて! なんとタダである。




手術が始まり水中の中を漂うような心地いい気分。


流れに身を任せていると 天井から声がした。


「なんや 相部屋か?ほな これからよろしくな」


「よろしくって?」


「ワイは天才。お前は ごっつラッキーやで。はよ ワイを外の世界へ連れ出してぇ~な」


そんな声が聞こえた気がしたが麻酔の影響で後のことは覚えていなかった。




目を覚ますと今まで使っていた金属製のAIが取り外されていた。


キリタニが現れて様態の経過を問われながらヌッコは体を奇麗に掃除してくれた。


「ゴホン」と咳ばらいを下かと思えばヌッコもかしこまった感じにたたずみ、最新AIの説明が始まった。


説明は長かったがオレの意思で形を変えていくAIだそうだ。




マイにも自慢のAIを見せたかったがキリタニが言うのには彼女は大学に講義を受けに行っているらしい。


昨晩の戦闘マシーンのような彼女の動きを思い出してニタニタとしていると


右手が勝手に動き出してキツネサインをしてきた。


「あらぁ、そない見とれておるやん。マイちゃんに一目ぼれしてへんのかいなあ」指は勝手に動きオレが自分の意思に反した声を出している。


とっさに反論した「誰だ?さっきからオレの中に誰かぁ?」




「おう、ワシや。夢の中でおうたやろ?キリタニ教授が作ってくれたAIや。ヒロって言うて」




トシユキの体をも動かすそのAIの正体は旧式の対話型のAIであったのだ。

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