表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
最終章 本物の恋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/68

第66話 本物の恋2・ちょっとだけ勇気の湧いた日

 風華と二人で初詣(はつもうで)に行こうとした日。その日は雪だった。


 思ったよりも吹雪(ふぶ)いていて、今後も強まる予定なので初詣は中止になった。


 正直、助かったと思った。風華の顔を見るだけでも辛いのに、会ってしまったら心が壊れてしまいそうだから。


 代わりに風華とリモート通話をしている。


「ホワイトクリスマスですね」


「クリスマスじゃないけどな」


「そうでしたね。それは昨日でした」


「うん、昨年だな」


 このくだらないやり取りが楽しい。


 でもやっぱり辛い。苦しい。


 このまま終わりたい。でも終わらせたくない。


 戻ることも進むことも出来ない。


 『もう連絡を取らない方がいい』の一言がいえない。


 相手を傷つけるから? まさか。自分が傷つきたくないだけだ。


 俺はいつだって情けなくて優柔不断でどうしようもない弱男だ。


 出来れば向こうから言って欲しい。いや、言われたくない。何事もなかったように自然に消滅したい。


「空雄さん?」


「ん? どうした?」


「最近、なんだか上の空ですね」


「そんなことない」


「……私のこと、嫌いになりましたか?」


「そ、そんなわけない! むしろ俺は、いや、その」


 言葉に詰まる。


「今日はあれだ、寒いから頭が回らないんだ。だから、その、また連絡する」


「……分かりました。風邪をひかないようにしてくださいね」


 通話を切った。


 ベッドに寝転がる。くそ、どうしたらいいんだ。


 終わりにしないと、お互いにとって良くない。


 何を怖がる必要があるんだ。何もなかった日々に戻るだけじゃないか。


 仕事場と家を往復するだけの毎日。それこそが俺みたいな無能にはふさわしい。


 そうだ、それでいいんだ。言おう。


 さよなら、と。


 少しだけ決心した、その時だった。スマホから通知音が聞こえてきた。


 誰だよ。って言っても空子か風華か職場の人間か、あるいはゲームアプリからのクソ通知くらいだよな。


 重たい腕を動かしてスマホを取る。


 そこには風華の名前が表示されていて、たった一言。


『会いたい、です』


「……ッ!」


 心臓が高なった。たった一言、それだけなのになぜだろう。体が熱を帯び、脳が覚醒する。


 なぜだか勇気が湧いてきた。いや、なぜもなにも無いだろ。風華の言葉が嬉しかったからに決まってるだろ。


 胸が苦しい。だけど、メールをくれて嬉しい。


 俺は、俺は本当にバカだ。何を迷っているんだ。このまま終わっていいわけがない。ガキじゃねぇんだぞ。勇気を出せ。


 伝えろよ。俺の気持ちを。いつまで誤魔化してんだよ。好きなんだろ、風華が。


『俺も会いたい、今すぐに』


 そう返信して俺は家から飛び出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ