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【完結】弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件
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第6話 一問一答3・鳴神響とLIVE

 生放送当日。


 俺はパソコンの前で乃和木風華の出るお天気番組を見ていた。


 今は、つり目気味で黒髪ショートカットのお姉さんがお天気を伝えている。


 名前は鳴神響(なるかみひびき)。あだ名はビッキー。三十五歳人妻。俺の最推しだ。前にも言ったが脳を破壊され続けた俺は、人妻を応援したら良くね? ということに気がついたのだ。初めから男がいると分かっていたらダメージはないという逆転の発想だ。


 彼女は清楚系アナウンサーが着がちなギョーザのヒダみたいなシャツに、調理したキクラゲみたいな黒いロングスカートを履いている。美味しそう、じゃなかった相変わらずお美しいでございます。


「今日はなんとですね、新人キャスターさんが来ておりますわ。少し前に一度出演はしていたのですけど、トラブルでですね、あまり紹介できなかったので今回改めて登場してもらおうということですわ。それではどうぞー!」


「ど、どもどもー、乃和木風華でございますー」


 腰を低くして手をパチパチしながら出てきた。お笑い芸人の出方だろ。


「こんにちは。風華ちゃん、よろしくお願いしますね」


「まず初めに謝罪させてください。前回初めて出演させていただいた時にですね、緊張して眠れなかったせいでアクビをしてしまったんです。申し訳ありませんでした」


 コイツの辞書に謝罪なんて言葉あったのか。


「生放送にトラブルは付き物ですものね。今日は頑張りましょう」


 はい、ビッキー優しい。マジ天使。


「では気を取り直しまして。実は今回、視聴者の方に風華ちゃんのことを知ってもらうべく特別企画を用意したのですわー!」


「エーナンダロナー」


 乃和木の棒読み。知らないていの演技しろよ。


「その名も“一問一答で丸裸にしちゃおうぜ”のコーナー! ぱちぱちぱち」


 ローカル番組にありがちなクソみたいな企画名だな。だがそこがいい。


「晴れやかな空を見つつ、風華ちゃんのことを知ろうという企画でございますわー」


 二人の背後の大型スクリーンに東京の空が映し出された。晴れやかな空——ではなく、曇ってんじゃねぇか!


「あはは、ちょっと曇っちゃってますけども風華ちゃんの笑顔で吹き飛ばしていただけたらなと思いますわー」


「わーい」


 何がわーいだよ。小学生かよ。


「あ、でも見てくださいな。天使のハシゴが見えてていい感じです。天使のハシゴというのはですね、太陽光が雲の切間から筋状にのぞくことをいうんですね。神秘的でいいですわね」


 へぇー。確かに綺麗だなぁ。


「へぇ〜」


 アホヅラで感心している乃和木。お前は知っとけよ。


「それではですね、さっそくやっていきましょうか。それでは第一問。デデン! デデンとか言っちゃったフフッ」


 はい、ビッキーかわいい。


「じゃあまずお名前を教えてくださいな」


「の、乃和木風華ですっ、ふがふがの風華ちゃんですっ!」


 ふかふかだったろ。入れ歯の外れた老人かよ。緊張してんなー。


「あはは、かわいいですわね。それじゃあ次、血液型は?」


「ビィ型ですっ」


 ブレイブ忘れてるけど、まぁいい感じだな。ただ、目がメトロノームみたいに高速で泳いでいるのが気になるけど。


「どんどんいきますよー。年齢は?」


「六月一日」


 それ誕生日だろ!


 ビッキー苦笑い。


「じ、じゃあ身長は?」


「22センチ」


 妖精さんかな? いや、デカめの蛾だな。てかそれ年齢だろ。やばいやばい、回答がズレてるぞ。


「あはは、体重は?」


「160キロ」


 密度どうなってんだよ! 中までぎっしりかよ!


「……誕生日は?」


「黄昏時」


 中二病かよ。


「ご自身の性格を一言でいうと?」


「カバ」


 バカだろ。


「好きな食べ物は?」


「魔導書」


 中二病のヤギかよ。


「好きな飲み物は?」


「雨」


 ワイルドかよ。


「好きなお菓子は?」


「ピラティス」


 ティラミスの親戚ではございません。


「趣味は?」


「茶漬け」


 だから武士かよ。せめて“お”を付けろよ。武士みが増してんじゃねぇか!


「好きな本は?」


「羊の乳」


 意識高めのエロ小説かな?


「好きな音楽は?」


「まじめ」


 ヒップホップのカウンターカルチャーから生まれた若者音楽かな?


「好きな季節は?」


「リンゴ三個分の愛」


 ポエマーかな?


「好きな天気は?」


「マカロン」


 そんなの降ってきたらヘンゼルとグレーテルも魔女の家行かなくなるわ。


「好きな花は?」


「お天気お姉さん」


 うんうん、笑顔の花を咲かせるもんね。やかましいわ。


「好きな異性のタイプは?」


「草タイプ」


 ゲームの属性かよ! せめて草食系って言えよ!


「好きな動物は?」


「メロス」


 邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王視点かよ。


「じゃあ飼いたいペットは?」


「父、母、姉」


 サイコパスゥゥー!


「最近のマイブームは?」


「脳を持って宇宙旅行」


 マッドサイエンティストォォー!


「家族構成は?」


「漫画アニメゲーム」


 二次元から帰ってこい!


「犬派? 猫派?」


「父、母、姉」


 サイコパスゥゥー再びー!


「ごはん派? パン派?」


「父、母、姉」


 カニバリズムゥゥー!


「外食派? 自炊派?」


「じ、自首派」


 噛んでんじゃねぇぞ。前の回答群のせいでミステリーの解決編に突入したみたいになってんじゃねぇか!


「生まれ変わったら何になりたい?」


「めだかの学校」


 あらかわいい。箸休め的な回答きたな。もう遅いけどな!


「明日地球が滅亡するとしたら最後に何をやりたい?」


「……あ! 元気溌剌に犬をパンに挟んで自炊したい!」


 残酷ホットドッグの完成だね! うるせぇよ! 最後に思い出したように使ってない回答全部ぶっ込んで闇鍋にしてんじゃねぇぞ! あ、でも“桜”使ってねぇな。爪が甘いやつ!


「あはは、以上になりますわー……。何というか風華ちゃんはユーモアのある方ですわねぇー」


 目が笑ってない。こりゃビッキービキビキにお怒りだぞ。


 あんまり見たくないけど動画サイトのチャット欄を見てみる。


『ふざけてる?』

『冗談にしてはやり過ぎ』


 普段穏やかなチャット欄もザワつくってよっぽどだぞ。コイツ番組に出しちゃいけない人だわ。こりゃあクビ確定だな。


 ……無駄だろうけどチャット欄で擁護しといてやるか。ハンドルネームは、ヨワオでいっか。


『ヨワオ:目が泳いでたし緊張していたのでしょう。新人さんのようですし大目に見てあげましょうよ』


 俺って優しー。


『緊張だよな』

『しゃーない切り替えていけ』

『俺は好き』


 よしよし、擁護の流れになってきたな。もう一押ししとくか。


『ヨワオ:むしろここまで面白いって凄い。ファンになりました! 一生ついて行きます!』


 思ってもないこと書くってサブイボ立つな。なにもしてないのに反省文書かされている気分。


『頑張れ』

『次に期待』

『運営さん、もっかいチャンスあげてー』


 ふう、これで少しは緩和できただろう。……って、これじゃあ俺が“サクラ”みてぇじゃねぇか!

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