第58話 クリスマス1・クソトナカイ
十二月二十五日。風華達のクリスマスパーティー特番が始まった。
スタジオはツリーやリースなどクリスマスの飾りで彩られている。左端の司会席には人妻ビッキーが居て、右側は雛壇に女性お天気キャスターが十人並んでいる。
みんなサンタ風の衣装を着ていた。ナイトキャップのような赤い帽子、上衣は可愛らしいポンチョみたいで、下は膝上キュロットパンツで綺麗な脚が丸見え。
ビッキーも素足が丸出しである。うっひょー、やっぱり人妻の御御足は最高だぜ!
一方、風華だけトナカイの格好をしていた。ご丁寧に赤鼻まで付けている。哀れなヤツめ。まぁ自分で志願したんだろうけどな。
「本日はお天気キャスター達の女子会クリスマスパーティーを始めたいと思いますわー!」
「イェーイ!」
「楽しみー!」
「プレゼント寄越せー!」
一人だけ野球場でヤジを飛ばすおじさんみたいなヤツいるな。もちろん風華である。
「今日のスタジオセット、素敵だと思いませんか? クリスマスツリーとか」
「素敵ー!」
「うわー綺麗です!」
「槍武器っぽいですねぇ。ま、ネタ武器でしょうからすぐ倉庫行きでしょうね」
一人だけ中二病フィルター付いてるぞ。
「飾り付けも豪華で、リースなんかも素敵ですわね」
「かわいいー!」
「家に持って帰りたい!」
「円月輪いいですねぇ。即死属性が付いてるといいですけど」
一人だけ舞台設定違うヤツ追い出せよ。
「個人的にはプレゼントの山がワクワクして好きですー」
一人のネコ顔のお天気お姉さんが言った。
「分かるー!」
「クリスマスって感じしますよね!」
「空箱ですけどね」
早くこのクソトナカイをソリで轢き殺した方がいいぞ。
「辛辣なトナカイさんが居ますけど、概ね好評でよかったですわ。さてさて、風華ちゃん、クリスマスといえば何を思い浮かべますか?」
「サンタにこき使われる日ですね」
トナカイ側の意見やめろ。
「それはトナカイさん限定の意見ですわね。それよりも、クリスマスといえば豪勢な料理ですわよね」
それもなんかズレてる気もするが、まぁいいか。美味いメシ食いたいんだろうな。
黒子に扮したスタッフが料理を運んできた。
ローストチキンを手に取る風華。
「素敵なチキン野郎ですねぇ」
野郎を付けるな。意味が変わってくるだろ。
「欧米では主に七面鳥を食べるそうですが、今日は諸事情により鶏さんですわ。日本ではお馴染みなのでいいですわよね」
「サンタレビューサイトに星1付けましょう」
サンタさん、このトナカイ解雇した方がいいですよ。
とにかく賑やかな食事が始まった。各々、感想を言いながら食べている。
みんな手を口元に当てて上品に食べている中、風華は山賊みたいに食いちぎっている。コイツだけギャグ漫画時空で生きてるよな。
「食べながら次のコーナーに移りましょうか。続いては禁断の女子トークですわー!」
パチパチパチ、と拍手が起こる。
禁断の女子トークねぇ。どうせしょーもないんだろうな。ま、好きなんだけどさ。
「さてさて、それではクリスマスに因んだトークをして行きたいと思いますわー」
ビッキーの隣にあるモニターに文字が表示される。
「まずはこちら、サンタは何歳まで信じていましたか?」
その質問にみんな順番に答えていく。大体、幼稚園や小学校低学年の頃と答えていた。
そしてクソトナカイの番がやってきた。
「風華ちゃんはどうですの?」
「信じるもなにもサンタはいますよ。トナカイが言うのですから間違いありません」
説得力ありそうでないやつやめろ。
みんな苦笑いを浮かべている。大していじられることもなく次の質問へ。
「続いて、初めて貰ったクリスマスプレゼントは何でしたか?」
大体、お菓子やゲームなどを親から貰ったと答えていく。弱男配慮の回答助かるぜ。
そして風華の番。
「鉛玉ですね」
怖ぇよ! 今までの流れからサンタに撃ち込まれたとしか思えねぇよ!
バカは放っておいて次の質問へ。
「クリスマスの思い出はありますの?」
順番に楽しかった思い出や逆に悲しかった思い出を語っていく。
そして風華はというと。
「それは皆さんと過ごす“今日という日”ですね」
なにエモい空気出そうとしてんだよ。
「風華ちゃんが言うと嘘臭いですわね」
その通り! いいぞビッキー。視聴者の代弁ありがとう。
「ちょっとちょっとぉ! 酷いですよぉ!」
爆笑に包まれるスタジオ。
その後も大体風華がオチでトークが進んだ。
コイツ本当便利屋だな。まぁ番組的には助かるよな。




