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【完結】弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第2章 無限イチャイチャ計画

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第50話 花火2・手と手

 風華とビッキーの花火中継が終わって数日後。


 俺は別の花火大会の会場に来ていた。風華と約束していたから来たわけだが、アイツはまだ到着していない。


 一緒に俺の家から行けばいいのに、デートらしく現地集合がいいらしい。よく分かんない感覚だな。


 とにかく、ソワソワしながら風華を待つ。女と花火大会なんて一度たりともないので内心は不安でしょうがない。


 そもそも本当に来るのか? 来てもテッテレーとか言いながらドッキリプラカード抱えて出てくるんじゃないか? もしくは遠くからモニタリングされていて、待ち合わせに人はどれくらいの時間待てるか、という実験の被験体にされているんじゃないか? あわわ、その場合、どうしたらいいんだ。


 なんて悲しいことを考えていると背後から声が掛かった。


「お待たせしました」


 恐る恐る振り返るとヒマワリ柄の浴衣を着た風華がいた。いつもと違い、暗がりで見ると大人びていて色っぽく見える。


「この浴衣、どうですか?」


 浴衣の(そで)を持ってクルクルと回る。


「い、い、い、いいんじゃないか? ま、前のとは違うんだな」


「あれは会社から借りた衣装ですからねぇ。同じの着てたらバレちゃいますよ」


「確かにそうか」


「今日のために新調しました。嬉しいですか?」


「な、なんで嬉しいか聞くんだよ」


「そりゃあ彼氏ですからね」


 何の躊躇(ためら)いもなく言いやがる。


「そ、そうか。その、嬉しい、かな」


「微妙な反応ですねぇ。ま、ギリギリ許してあげますか。顔が真っ赤なのに(めん)じて」


 ななな、顔、真っ赤なのか!?


 慌てて顔を(おお)う俺。指の隙間から風華を覗くと、クスクスと笑っていた。それがまたカワイイと思ってしまった。


 それから何とか誤魔化して、屋台の立ち並ぶ広場へ向かった。


「あ、お面欲しいです!」


 風華が浴衣が乱れない程度の小走りで露店へと向かう。すぐに巾着袋からサイフを出して狐のお面を買っていた。それを付けたまま戻ってくる。


「どうですか? 巨乳仮面です。興奮しますか?」


 変な二つ名やめろ。リアクション取りづらいわ。


「あ、今、胸みてましたね?」


 そりゃあ巨乳仮面とか言われたら見ちゃうだろ。誘導尋問かよ。


「別に見てもいいんですよ? 付き合ってるんですから」


 そう言われて凝視できるなら今頃俺は遊び人だっただろうな。


「見ねぇよ。警察に職質されたくないからな」


 そっぽを向いて喧騒(けんそう)を眺める。


 人混みうぜぇなぁ。ゲームだったら剣の一振りで()ぎ払っていくのによぉ。


 残念ながら小心者の俺は『すみませんすみません』と言いながら手刀で人混みを縫うしか出来ない。


「手、繋ぎますか」


 え? 突然の風華の提案にフリーズしてしまう。


「空雄さんはすぐ(はぐ)れちゃいそうですからね」


「い、いや、誰かに見られたらマズイだろ」


「狐のお面してるから大丈夫ですよ。さ、早く」


 風華が繊細そうな手を俺に向けて差し出す。


 こ、こんな急に言われても覚悟決めれねぇよ……!


「予行演習したでしょう?」


 あの謎の手のひら同士を合わせたやつか。あれ予行演習だったのかよ。変なヤツ。俺もだけど。


 覚悟を決めて手を繋ぐ。


「ふふ、温かいです」


「へ、変なこと言うなよ」


 意識するだろ。


 なんてことを考えていたら手を引かれて、どんどん人混みを縫うように進んでいく。


 離さないように強く握ってくる。俺も痛くないように握り返す。


 時折、振り返ってお面をズラして笑顔を向けてくる。それが純粋に可愛くて、俺は照れてしまう。


 恋をしたことがない無邪気な俺と、大人になれよとプライドだけは高い俺の感情がせめぎ合う。


 ……バカみたいだな。何も考えなくていい。ただ風華の手を握ってついて行こう。


 祭りなんだからさ。

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