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【完結】弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第2章 無限イチャイチャ計画

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第48話 弱男の手

 風華のクソゲーム実況が終わって数日後。俺は自宅であるボロアパートでミイラのように干からびていた。


 というのも時は七月後半。暑さのピークである。


 俺はなんと扇風機で(しの)いでいた。


 体が溶けかけていると、何者かが盗掘屋のように不躾(ぶしつけ)に家へ上がってきた。まぁいつものガサツ女だよな。


「こんにちは! って暑い! なんですかこの部屋は! 亜熱帯地域ですか!?」


 素直に否定できないのが辛いところである。


「エアコンつけましょうよ!」


「ダメだ。我が家では幻覚が見えるまで稼働してはならないという鉄の(おきて)がある」


「バカですか! 死んじゃいますよ!」


「まだだ、まだいける……!」


「……もぅ、仕方ありませんね。これどうぞ」


 手渡されたのは一万円札だった。


「こ、これは?」


「エアコン稼働代です。お釣りは入りませんよ?」


「よし! 今日は大盤振る舞いで二十五度にしよう!」


 俺は砂漠でオアシスを見つけたかのように信じられないスピードでエアコンをつけた。エアコンの風を直に浴びる。ああ、これが生きるってことなんだ。俺が生の喜びを感じていると、風華が白けた視線を向けてきた。


「なんだよ?」


「別にぃ」


 ふん、俺がこういう奴だと分かっているだろう。金持ちが札束をばら撒けば喜んで地面を()い回って集める。それがエリート弱男の俺だ。


「それよりまたフォロワー増えたんですよ。えへへ」


「よかったな」


 この前のゲーム実況がバズったお陰でまたSNSのフォロワーが伸びていた。どうなってんだ世の中。こんなポンコツに騙されるなよ。


「そうだ、ちょっと手を見せてください」


「なんでだよ」


「ええ、実は殺人事件の調査をしていまして」


「ミステリードラマの見過ぎだろ」


 そう言いつつ、手を見せる。一万円を没収されたら嫌だからな。


「空雄さんの手って綺麗ですねぇ。苦労してない人の手です」


「嫌味かよ」


「やだなぁ、三分の一は冗談ですよ」


「せめて過半数を占めろ!」


「手を広げてください」


 嫌々ながらも手を開くと、風華がその手に重ねてきた。


 ドキリとした。


 手のひらと手のひらを合わせた状態。風華からわずかに伝わる熱と、手のひらの柔らかさに俺自身の体温が上がるのを感じた。


「さすがに大きいですねぇ。肝っ玉は小さいのに」


「ひとこと多いぞ。で、これ何の意味があるんだ」


「企業秘密です」


 なんの企業だ。


「それより今度花火大会があるんです」


「あー、知ってる。会社でも中継するんだろ? 予告動画見たぞ」


「それもあるんですけど……」


「どうした?」


「それとは別に二人で花火大会見に行きませんか?」


 またまたドキリとした。ま、まぁ一応付き合ってるし、デートするのは普通だよな。


「……いいけど。どうせ暇だしな」


「やったぁ!」


 無垢(むく)な笑顔。目を逸らす俺。


 花火か……女どころか男とすらまともに花火大会なんて見たことない。どうしたらいいんだ? 服装は? 所持金はどれくらいだ?


 脳みその(しわ)がハテナの形に変わってきたぐらいに風華が助け舟を出してきた。


「当日どうしたらいいんだろう? って顔してますね」


 心を読むな。


「空雄さんはただ居てくれたらいいんですよ。私がリードしてあげます」


 てめぇ、それじゃあ俺が異性に対して何もできない情けない男みたいじゃねぇか。


 はい、その通りです!

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